ヤンデレ設定がどっかいった
「本当の本当の本当に主様なのじゃな?」
「本当の本当の本当に…ダーリン…」
「本当の本当の本当の本当なんじゃなな?」
「この…やりとり…何回すれば…いいの…?」
フィヨルドは森から外れた町はずれの丘で自身の主であるケイトがあのオツベルという少年だということを説明していた。
だが、キュウは何故か信じようとしない…。
「昔…ダーリンに…何か…言われた…?」
「……昔のう、『魔物に姿を変えられてしまって、私が主だよキュウ』というニンゲンに思いっきり騙されたのじゃ」
「それ以来、名前を呼んでくる知らん奴は敵じゃと言われたのじゃ…」
「…バカの…極み…」
「うっさいのじゃ!匂いも違う、容姿も違う、魔力も違う。あれでは騙そうとする奴だと思うのじゃ!」
「……でも…アナタは探して…いた…」
「今日ほどお主を羨ましいと思ったのは初めてなのじゃ…ワシには何も繋がりが無いのじゃ…」
精霊であるフィヨルドは魂の契約をしている。変な話、呼ばれれば傍に来れるし、送られれば幽世に戻る。
魔王との戦いのあと呼ばれなくなった。だが魂が現世にある事はわかっていたので大人しく呼ばれるまで眠っていたのだ。
だが、キュウは。
昔、無敵のナインテイルとして暴れていたキュウはケイトに負け、ケイトを主と慕っていた。
だが、ケイトにはテイムのスキルは無く、自我があったキュウはケイトに懐いてただけだった。
ちなみに名前は付いてくるときにつけてもらったものだ。
そして、魔王との戦いで主が死んでしまったが、一緒にいたエルフに少し待てば現世に現れるという話を聞いたので分身を増やして探していたのだ。
まぁ今回はおいしそうな匂いに負けて人に見られてしまったのだが。
「私が…ダーリンと呼ぶ…魂は…1人だけ…」
フィヨルドには慰め方はわからない。わからないのだが、ケイトが何をしたいのかはわかった。
拘束した氷を解き、フィヨルドはキュウを抱きしめた。
まあ、狐にとっては自分はズルなのだろう。なんだかんだでこの狐は自分の主が大好きなのだ。
「お主…熱に弱いハズでは…!?」
「熱い…けど…」
キュウは本気で炎を纏ってはいないが、それでも50度近くはある。
そして氷の精霊であるフィヨルドは人肌ぐらいの熱までしか耐えられない(というよりここまではがんばって耐性をつけた)
「アナタを…抱きしめて…あげたかった…」
「!?」
「私は…呼ばれた…だけ…でも…アナタは…ちゃんと…みつけた…」
「なっ!」
抱きしめた腕に力が入る
「50年…探してたのは…同じ…アナタは…走り回れた…ただ…待ってた…自分とは…違う…」
「……」
「今日…呼んでもらえたのは…アナタのおかげ…ありがとう…」
「うっさいわ!」
キュウは抱きしめた腕を外した。照れ隠しなのかフィヨルドを慮ったのかはわからないが。
「とーにーかーくーあの子供が主様なのじゃろう!さっそく会いに・・・」
瞬時にキュウが氷に包まれた。
「ダメ…転生したて…のダーリンは…色々…ある…ちょっと…待ってあげる…」
キュウは何かを叫んでいるのだが、分厚い氷は声を通さなかった。
「どうせ…ちょっと…のびた…だけ…」
フィヨルドは待つ。愛しい主に口づけをもらえる事を想像しながら…。
フィヨルドちゃんはあはあ…