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day1

これは作者がある日見た夢を元に要素を付け足し書き下ろした創作になります。

作者が見た夢の舞台を皆さんもお楽しみください。

日常というものは、ある日突然音もなく崩れ去るのだとその時初めて知った。


私が通う学舎に囚われてどれくらい経っただろうか。

窓の外は灰色の空が覆い、無機質な床や壁には赤黒い染みが幾重にも重なってこびりつき私が歩く度に足音が廊下に反響して五月蝿い。


『くぅーん』

私の横にぴったりとついて歩く黒いラブラドールレトリバーの

リアが不安そうに鳴きながら見上げてくる。

私はそんなリアの頭を優しく撫でながら、自分の墓場──

屋上へと向かっていた。


この学校にはもう私とリアと、1人しか残っていない。

他の生徒や先生はここに来るまでに皆死んでしまった。



屋上へ出るドアノブにゆっくりと手を掛ける。

私がこの戦いに生きて帰ってこれるとは思っていない。

残念だけどリアとはここでお別れだ。

「リア、ここまでありがとう。私がいなくなっても元気でね」


リアにドアの前で待てをさせ、ドアを開ける。

ドアを開ければ、私と同じ生き残りである男子生徒が

手すりに体を持たれ掛けて空を見上げていた。


灰色のパーカーを着込み、その上から冬服のブレザーを羽織った男子生徒──ガナドールは私を見るやニヒルに笑う。


「やっと来たか。待ちくたびれたぜ“ペルデンテ”さんよォ」

彼と目が合っただけで自分の体が凍りつくような感覚に陥る。

辺り一帯の空気が氷点下にまで下がったかのようだ。


「俺がお前をぶち殺がせば晴れてこの腐りきった学校から脱出だァ。せいぜい最期のその時まで楽しませてくれよナァ?」

ガナドールはそう言いながら右手を銃の形にし、軽く指先を

上に持ち上げた。その指先からは実弾が現れ綺麗な弾道を描き

私の左頬を擦った。


こいつの能力は嫌という程見てきたが、改めて自分自身で体感すると戦意喪失しそうだ。

だがここで退くわけにはいかない。今までこいつに殺されてきた仲間の分まで私が戦わなければ、親友との約束を果たさなければ…


「いくぞガナドール。ここをお前の墓場にしてやるッッ」

全身に力を入れ、能力を身に纏う。

ここまでこれたこの能力――『透明人間』でガナドールを討つ!




2018年12月下旬。平成最後の冬休みを迎えようとしていた矢先にそれは起こった。

全校生徒が集まり終業式をしていた時、突如大地が大きく揺れ体育館がみしみしと音をたてながら崩れかけたのだ。

今年で創立50年を迎えたおんぼろ学校なだけあって全校生徒は瞬く間にパニックに陥った。

私─須藤明莉もその内の一人で、我先にと外に向かって走り出す。

周りにいた先生が止まれとか落ち着けとか言っていた気がするが耳には入ってこなかった。


上履きのまま校庭に出るとそこには見慣れた街並みは無く、

空は灰色で校舎の至る部分がポリゴンのようなものを発しながら

消失している。そして学校の敷地以外の空間がぽっかりと無くなっていたのだ。

つまり今私たちがいるのは謎の空間にぽつりと孤島のように浮かぶ学校の中…


こんな状況でも頭は冷静でよかった。体育館から次々と生徒が出て来て、辺りを見回すや否やパニックに陥る者、叫ぶ者、膝から崩れ落ちる者もいれば呆然と立ち尽くす者など様々だった。



『…るか、聞こえるか、人の仔よ。私はこの空間の主である。

今お前たちの脳内に直接話しかけている…』

突然男性とも女性とも言えないような不気味な《声》が

脳内に流れ込んできた。


『お前たちにはこれから私の実験に付き合ってもらう!

いわば被験体というものだな。

お前たちには少し細工をさせてもらった。ここにいる全員には

それぞれ違った異能力を授けたから、その能力を駆使してこの学校のトップに成り上がれ。最後の一人のみを現実世界に帰そう!

最後の一人になるまでお前たちには殺し合いをしてもらう。

あと、拒否権はないからそこのところは弁えてくれ。

それと、全員の本名は私が預かった。これからは己のコマンドに刻まれた偽名(ネーム)で呼びあうようにな。本名を指摘された者はもれなく死亡(脱落)だ。キャハハハハハハ!!!』


長ったらしい説明を残し《声》は消えた。


異能力?殺し合い?偽名?一度にたくさん説明されたものだから

混乱しているけれど、とにかく現実世界に戻れるのは一人だけで、帰るためには全校生徒と教員を含めた580人と殺し合いをしろと?


とにかく周りの生徒から離れた方がいい。

そう判断した私は体育館を離れて校舎の中へと逃げ込む。


音楽室までノンストップで走り、部屋に入るや鍵を締めその場に座り込んでしまった。


さっきの《声》は確かコマンドがどうのこうの言っていた。

一体どうやったら表示されるんだろう。


『コマンドはどちらかの手を広げれば自動で出てくるぞ』

先程まで脳内に流れていた《声》がまた聞こえてくる。


言われた通り、利き手とは逆─左手を広げると光輪が下から上へと広がり小さなウィンドウが表れた。そこには

【本名:???】

【ネーム:ペルデンテ】

【レベル:1】

【年齢:17】

【クラス:2-B】

【状態:生存】

と表記されていた。

あれ、自分の名前が思い出せない。

あの《声》の主に奪われたのか…

本名が相手にバレたら死ぬとか言ってたから、自分のことを言うときにはこの“ペルデンテ”で名乗らなきゃいけないのか。

にしてもペルデンテって何て意味だろう…


あ、あと異能力が使えるって言ってた。これから戦う上で能力は把握しとかなきゃいけないし、早速試してみよう。


すると身体が勝手に動き出す。両手を硬く握り全身に力を入れる──すると足元から自分の色味が消え、透明人間になっていた。


…え?これだけ?戦闘能力じゃないの?これで一体どう戦えっていうの?これはもう負けたも同然なのでは…私は落胆した。


『ニヒャヒャ、まさに“ペルデンテ(敗者)”に相応しい能力だな』

《声》が面白そうに話しかける。成程私のネームの意味がよくわかったよ。

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