時間を考える男
ウィスキーを飲みながら男は、昼前の事を思い出していた。
その時間帯が、人によっては遅い朝であったり
或いは早目の昼時であったり、まあそれぞれなのかも知れない。
丁度そんな時間帯に
男は、自宅を出てマンションの階段を降りて
一階に向かった。
エレベーターを使う程でも無いので、
何時も階段を利用して登り降りしていた。
階段の踊り場で
男は、住人らしき女性とすれ違った。
挨拶を交わすため
男は、声をかけようとした。
「 こんにち、、、」
女性は素早く笑顔で返事を返してきたが、
お互いの時間に対する捉え方が違ったのか
言葉が違い、しかも少し早口で言った。
「 おはようございまぁーっす 」
男は、ついつられ相手に合わそうとした。
しかし、昼と朝が混り合う挨拶にならない言葉が出
しかも、早足で駈け去った女性には
それは結局届かなかった。
行き場を失った、「 こんにち、、まぁーっす 」という言葉は
階段の踊り場でフェイドアウトするように
宙に消えた。