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神聖払魔師 聖ミカエルの戦士達  作者: ウィンフリート
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第1節 ベルンハルトの名推理

いや~2年も放置してしまいました。

このお話は、本編と対をなす、重要な話なのですが、なかなか進みませんでした。

勢いで書くとそうなりますね。反省しています。実は構想だけは、かなり先までできていますので、

あとは、自分に鞭を打って、書くだけなのです・・・応援お願いします

「こちらです。今開けますので、しばしお待ちください」


マンフレッドは燭台をドアの横にあるテーブルに置き、慣れた手つきでカギを開けていく。

しかし、厳重なカギだった。普通のカギだけでなく、外から閂がかかっており、それにもカギが掛けられている。2重3重のカギで守られているのだ。


「あの、これって、牢獄用の部屋ですか?」

マンフレッドは、苦笑しながら、否定しなかった。ちょっと困った表情をしながら答えた。

「お恥ずかしいのですが、これだけ厳重にお守りしても、姫様は、脱出してしまわれるのです。まるで蒸発するかのように・・・男爵様は、病気とおっしゃっていますが、そうなのでしょうか?無論、悪魔憑きとかという風には、これっぽっちも考えておりません」

「そうですか・・・悪魔には、物理的なカギなど意味がないですからね。

 いくら厳重に、何重にもカギをかけても、無駄なんですよ」


 マンフレッドは、困惑した表情のまま、押し黙ってしまった。そして、振り絞るように言った。

「あの・・・悪魔が関与していないということを、証明していただくわけにはいかないでしょうか。ベルンハルト殿、ドミニク神父様、お願いです。城下の街でも、噂が立ち始めております。使用人には緘口令をひいておりますが、街の殆どの者が、姫様の病気を知っているのです。異端の説教師にでも知られたら大変なことになります。

 なんとか、できないでしょうか」


 私は、ベルンハルト殿と顔を見合わせた。ベルンハルト殿は、私にウインクをした。


(あれ、どういう意味なのだろう。任せたのか、任せろなのか。すこし黙ってみるか)


 ベルンハルトは、私の目を意味ありげに見ながら、執事に回答した。


「ドミニク神父様?ドア1枚あっても、悪魔がいるのなら・・・」

(あ、そういうことね。了解しましたよ。私は、そのあとをつづけた)


「・・・その通りですね。ベルンハルト殿なら、ドア1枚隔てても、悪魔がいることに気づくでしょう。私も然り。悪魔は、聖職者が近づくのを極端に嫌がりますからね。

 まず、特徴的な異臭もしないですし、まぁ、姫様にお会いしましょう?」


 執事さんは、安心したように、重そうなドアをすこし開け、中を覗き込んで確認してから、いっぱいに開いた。そして、中に燭台を持ち込み、中にもある、豪華な燭台に火を灯した。


 地下室ではあるが、牢獄とは思えないような部屋だった。廊下からの察していたが、ここの地下室は、すべてが地中にあるのではなく、半地下なのだ。だから、鉄格子が嵌ってはいるものの、部屋の上部に窓があり、明かりは十分に差し込んでくるような構造だ。

 今は夜なので、日は差さないが、外に篝火が焚かれており、どうやら男爵の配下の従者たちが、巡回しているようだった。


「さて、どうですか?マンフレッド殿。悪魔が嫌がる私たちエクソシストや司祭が入室しても、なにも反応がないですよね。試しに十字架出しますよ」

 そういうと、ベルンハルト殿は、上着の隠しから、大きな十字架を取り出した。悪魔祓い用の十字架だ。ベネディクト様のメダイが十字架の中央についたものだ。もちろん、イエスさまの磔刑像もついている。ベルンハルト殿は、それから、紫色のストールをだし、首にかけた。なんの変化もなく、姫様はすやすやと眠ったままだった。


「では、ドミニク神父様?聖水と、聖香油をお願いします」


「了解しました」


私は、まず、携帯用の聖水入れを取り出し、聖水を入れる器に注ぎ、聖水撒きを取り出し、神に祈りを捧げ、聖水を姫様にお掛けした。

 マンフレッドが頭を垂れ、手を合わせて祈っているので、彼にも聖水を掛けた。


 それから、ベッドのそばのテーブルに聖水セットを置き、服の隠しから、聖香油を取り出し、蓋を開け、親指で油をとり、姫様の額に十字架の形に塗った。

「父と、子と、聖霊の皆によって、このものに豊かな祝福がありますように」と私は言った。


「アーメン」ベルンハルト殿だ。そのまま、彼は、穏やかな声で話した。

「どうですか?執事殿。ご覧になられたでしょう?

 もし、姫様が悪魔の支配下にあるのだったら、今ので、額は焼け焦げ、火傷のような傷ができたことでしょう」

 

 静寂に包まれたように、音もなく、安堵がその狭い部屋を満たしていくようだった。


 深いため息をつきながら、マンフレッドは十字架の印をしてつぶやいた。

「主よ、あなたを賛美します」

 執事殿は泣いていた。ベルンハルト殿と私は、すこし気を働かせて、姫様を看ているふりをして、執事殿を見ないようにした。暫くして、彼は気を取り直し、顔を袖で拭き、言った。

「私は、急いで男爵様に報告してまいります」

 彼は、部屋を飛び出していった。


 すぐに、男爵と奥様が部屋に入ってきた。男爵は嬉しくて仕方がないようだ。奥様に至っては、涙と鼻水でデロデロ状態だった。


「ドミニク神父様、ベルンハルト殿。マンフレッドより聴きましたが、娘は、悪魔憑きではないのですね?」

「はい。それは確かです」ベルンハルトが即答した。


「しかし、病気ですが、原因が一体何なのか、掴めておりません。今日はもう遅いので、姫様が目覚めたら、明日にでも、ゆっくりと姫様と、お話しをしたいと思いますが・・・よろしいですか?」


 男爵夫妻は、顔を見合わせた。奥様が頷いたので、男爵は正面を見て、私たちにそれでよいと答えた。


「では、お部屋を用意しましたので、そちらでお休みください」ドアの外から、執事殿が声をかけた。私たちは言われる通りにした。



 客用の寝室では、贅を尽くした豪華な寝具に驚きながら、ベルンハルト殿と少し話した。


「ベルンハルト殿は、病の原因は、なんだとお考えなのですか?」

 ベルンハルト殿は、すこし考えを巡らしてから答えた。


「神父様こそ、なんだと思いましたか?」

「いや、病気ではないのではないかと思いました。姫様は、血行もよさそうですしね・・・まぁ、起きていることは、奇跡のような現象ですね。実に不思議です。同様な現象のご経験はございますか?」

「いくつか聴いたことがあります。2か所同時存在とか、居ないはずの場所に・・・何キロも離れているのに、そこに現れたなど・・・不思議な話がありますよ」

「それは凄い話ですね・・・」

「でも、それに遭遇した周囲の者は、驚き、困惑し、悪魔や魔女の仕業ではないのかということになり、エクソシストのところに相談に来ることになるのですな」

「なるほど・・・今回とほぼ同じような事例はありましたか?」

「おそらくですが、2か所同時存在や、遠距離への瞬時の移動も、根本は同じ原理なのではないかと思っております」

 私は、すぐには理解できず、困惑した表情になってしまった。私の顔を見たベルンハルト殿は、すこし、私に同情するかのような表情を浮かべ、話だした。

「神父様、これらの現象を通底する、共通点は、恐らくですが、瞬間移動なのですよ」

「え?今なんとおっしゃいました?」

「瞬間移動・・・瞬間転移でも同じ意味です。大天使聖ミカエル様の青い転移門をご覧になられたことがありますよね。あれは、エーデルスブルート、高貴なる血を介在した、一種の魔術のようなものですから、意思によって発動させているようですよね?」

 なんだか、ますますわからなくなってきたような気がするが、ちょっと先祖由来の負けず嫌いが働いて、さも、わかったように頷いてしまった。


「ところが、これらの事象では、意思による発動ではなく、意識していないが、止むに止められぬ衝動が引き金となって、転移してしまうようなのですよ」

「ということは、姫様にも、そういう理由というか、なんらかの事情があるというわけですね?」

「そうです。明日にでも、ゆっくりと話を聴いてみる必要があるでしょうね」


「・・・そういうことですか・・・ベルンハルト殿が、今の推論に至った、いくつかの理由というか、前提を教えてください」

 ベルンハルト殿は、にやっと笑った。私は、なんだか、探偵の助手になったような気がした。


「まず、男爵夫妻の話から、あの、厳重な部屋から消えてしまうことがわかりましたよね。それに、二人で確かめて、確信した通り、悪魔憑きではなかった。

 あと、いくつかの経験から推察される、起きている現象・・・転移ではないか。転移というのは、神からの賜物であるといわれていますからね。

 あ、そうそう、幻視能力で有名な、ビンゲンのヒルデガルト修道院長様と会って、修道女になりたがった話。

 親が決めた婚約者がいて、タイムリミットが迫っていた」


(すごいな・・・ベルンハルト殿は、まるで探偵のようだ。どこかの修道院で起きた殺人事件を解決したという、アングロ・サクソン人の修道士のようじゃないか・・・えっとウィリアムだっけ、ジェームズだったかな。どっちでもいいか)


「これらを総合すると、姫様は、どうやら、聖職者になりたかったのでしょう。しかも、強烈にです。女性が天国にいくのには、やはり、修道女になるのが一番ですからね。

 明日、訊いてみますが、恐らく、相当祈ったのではないでしょうか。主は、祈りに応えて力を与えた可能性が高いですな。悪魔憑きどころか、有力な聖女候補だと思いますよ」


「・・・なるほど。やっと理解できました。明日は、よろしくお願いします」

「はい、喜んで~。尋問ではないので、楽しいですね」

 私たちは、そこで話を止め、そのまま眠りにつくことにした。


 私は、どうも寝付けずに、色々と考えてしまった。


 おそらく、今回の出来事は、ベルンハルト殿の推察通りだろう。ご令嬢は、誓願を立て、修道女になりたかったのだろう。


 ベネディクト会の修道院長・・・ヒルデガルト・フォン・ビンゲン様に出会ったことで、彼女の人生は大きく回心(神に向き合うこと)したのだろうな。私もベネディクト会の所属だが、うちの修道院長とは、聖性という意味では、ヒルデガルト様には、到底及ばない。

 もう、うちの修道院長も、私も超俗物だ。ヒルデガルト様は、もうご高齢だが、精力的に動いておられて、あちこちに説教に出ておられるらしいし・・・うちの修道院長は、説教といっても、違う説教だからな・・・


 そんなこと思っていたら、うちの修道院長の顔が浮かんできたので、ろうそくを吹き消すように、頭から吹き飛ばした。


 こういう夜は、読書が一番なのだが・・・本はこの旅には持ってこれなかったし・・・本か・・・男爵は、自分のスペシャル時祷書とか作らせておられるのだろうか。まぁ、ここの男爵領は、儲かっているようだから、いい祈りの本を作らせていることだろうな。


 私たち修道士は、時間ごとに祈りや作業が定められている。もちろん、信徒である男爵夫妻も、修道士にならって、季節ごと、時間ごとに、祈りをささげるために、祈りの本である、時祷書を使っていることだろう。


 私は寝返りを打った。おや、これの布団の上掛けは、絹じゃないか?まるで皇帝の寝室のようじゃないか?絹は、なかなか手に入らないからな・・・なんでもずっと東の国で作られているそうだ。ビザンチンどころじゃない、もっと東の国だそうだ。


 だめだ・・・瞑想ではなくて、迷走だな。気が散りすぎているぞ。寝ないとな。ベルンハルト殿は、もう寝息を立てておられるじゃないか。あ、また、うちの修道院長の顔が浮かんできた。ふっ! 吹き消したぞ。


 私も聖職者の端くれだが、正直なところ、天国にいけるかどうかわからない。

前に、母が言っていたが、女性は天国にいくのはもっと大変だと。確かに、男なら、聖職者や修道士という道がある。でも女性には聖職は開かれていない。修道女ぐらいだ。


 修道女なんて、そう簡単になれるものではない。大抵、貴族の娘か、大店の娘ぐらいだ。お金かかるし・・・全く大変だよな。一般の生活では、純潔を守るなぞ、至難の業だろう。悪い奴が多いからな。修道女になって、完全なる徳の道を極めるか、殉教するぐらいしかないよな。どっちも大変だ。ビンゲンのヒルデガルト様は、もう、その頂点のような方だものな・・・薬草にも詳しいし、幻視もできるし・・・完全なる徳の生活ができているわけだ。


 いや、まずいぞ。ちゃんと寝れないなんて、俺って駄目じゃん!大天使に会いに行くのに、全然心の準備できてね~


 よし、明日こそ、魂の究明をする。俺も天国にいきて~

いかがでしたか? ブックマークお願いします。


すこし、キャラが崩れてきていますが、この小説の世界観を、説明したく、独白というか、

モノローグさせてしまいました。


いくつか、説明がないと、理解しにくい西洋中世社会です


あと、探偵というのは、名著「薔薇の名前」に出てくる パスカヴィルのウィリアム修道士です

ウンベルト・エーコーという学者が書いた探偵小説ですが、膨大な中世の事実をもとに、ち密に組みあげられた話なんですよ。


私の目標とする小説世界です・・・まぁ、ほかの影響もかなりあるのですが、おいおい話してまいります。

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