二つの世界のエクソシストのスピンオフ(ドミニク神父の活躍)
なかなか現実世界のドミニク神父様が活躍できないので、スピンオフで別に書くことにしました。
本編ともども、ご愛顧のほどお願いいたします。
プロローグ
西暦1172年夏、城塞都市に突如現れた少年は、大天使聖ミカエルの恩寵を深く受けた、聖戦士であった。
聖戦士とは、天の万軍の一兵士として、神の栄光のために、悪魔の軍勢とこの世で戦う者である。
少年は、時が永遠にループする地獄で170年以上に渡り、不死の悪魔達と戦い続けた聖戦士であった。地獄は、神を拒否した者達が、永遠の劫火に焼かれ続ける忌むべき空間である。全てを焼き尽くす炎で焼かれる人間たちの阿鼻叫喚が、悪魔の力となり、より純粋な悪の力に収束していく。
一度この地獄に捉えられた魂は逃れることもできず、焼き尽くされては復活し、また焼かれる休息のない永遠の苦しみの中で悶え苦しむ。この地獄を支配するのは、堕天使ある悪魔達である。彼らの悲願は、自分たちを地獄に落とした神や天使、そして人間に復讐し、神に比肩する力を得、人間の世界を支配し、やがては天をも支配することであった。
西暦千年、千年王国伝説をあざ笑うかのように、突如、悪魔に率いられた大軍勢が、人間世界を席巻した。
悪魔軍は、イタリアを落とし、バチカンを落とした。辛うじて逃げのびた教皇と教皇庁は北へ逃げたが、悪魔軍の勢いはとどまることなく、北上した。このままでは、人間世界が全て飲み込まれてしまうと案じた教皇が、神に祈り、神は愛すべき人間のために、そして教皇のために、世界を二つの世界に分けることとした。
真実の世界は、悪魔軍が占拠し支配した。いわば平行世界を神は創造し、二つにわけだのだ。
教皇は、悪魔軍に対抗すべく、特に聖性が高い戦士を募り、特別な武具を与え、地獄へと送り込んだ。
時のローマ帝国の次期皇帝候補だった一人の王族は、この戦いに志願し、妻と、長男を連れて地獄へと旅立った。彼らは神聖騎士団と呼ばれた。
そして、地獄の深層に砦を築き、果てることのない戦いを繰り広げていくことになった。
彼らは時間がループしていることに気づくことなく、およそ170年間の間、戦い続けた。
そして、西暦1172年の6月、少年だけが、記憶が全くない状態で、二つに分けられた現代の世界の一つに現れたのだった。
プロローグだけですみません。
次回は、城塞都市から巡礼の旅にでるところから始まります。
本編をお読みでないかたは、可能でしたら、本編も併せてお読みください。
以上宜しくお願いします。