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休憩小話ー衣装替えにてー

王座の間に侵入する前日、メイド服に着替える際のお話です。

おまけ的な話になります。

「こちらになります」



 ルピナスが用意した、ずらりと並んだ箱。中には大小様々なメイド服が入っていた。流石というべきが、多種多様の種族がいる世界ゆえに様々なサイズのメイド服が用意されているようだ。



「え、ちょっとまって。根本的なデザインから違うものもある気がするんだけど?」



 クレハがそのうちの一着を広げながら怪訝な顔をしている。なるほど確かに、それは背中の部分が異様にセクシーに開いているメイド服だった。他にも、やたらミニスカートなものもあるし、おしりの部分に穴が開いていたり、ノースリーブだったり。



「そちらは有翼人用ですね。稀にいらっしゃいますのでご用意させていただいております。ダックス・フント型の獣人さま用にスカード部位を短くしたり、しっぽがある方のために臀部に穴を開けてあるものもございます」


「……このノースリーブのやつは?」


「それは夏用です。近日は我が城もクールビズを取り入れておりますから」



 何でこれだけ種族にあわせたやつじゃないんだよ。私は腑に落ちないながらも、ノースリーブ式のメイド服をポイと箱に戻した。ともかく、これらのどれかを来て変装しなければならないわけだから皆が真剣に選んでいる様子だ。



 女子がこれだけ集まって来たり脱いだりを繰り返しているものだから、どうしてもある場所に目がいってしまう。



「……あのさぁ、マリン」


「ん? どうしたのコユキちゃん」


「前々から思っていたんだけど、マリンってさぁ……胸のサイズいくつなの」



 堂々と質問をした私に、アンズとクレハが吹き出している。マリンはきょとんとした後に、自らの胸をチラリと見てまた視線を私に戻した。



「え、え。なぁに、コユキちゃん。そんなに私のバストサイズが気になるの?」



 少しだけ頬を赤らめてマリンが近寄ってくる。いや何で嬉しそうなんだよ。……違うなこれは。胸のサイズを聞かれたとか、それはどうでも良くて。マリンは単純に自分に関して興味を持ってくれたことが嬉しいんだ。



「あー……まぁ。そりゃあね? それだけ大きければ嫌でも目につくと言うか。ねぇクレハ?」


「なっ、何でワタシに振るのよ!!」



 一方で、メイド服の胸囲周辺のスカスカ具合を気にしていたクレハ。急に話題を振られて、顔を真赤にして怒っている。べ、別に他意はないのに。



「ま、まぁまぁ。そんなに怒らなくても……」


「アンズ、アンタは黙ってなさい! ちょっとスタイルが良くて何でも似合うからって調子に乗らないことね!!」


「そんなぁ……で、でもクレハさん。胸が小さくても似合う服は沢山ありますから」



 あぁ、アンズ。それは地雷だよ。わざわざ見えている地雷を踏むあたりがアンズらしいけど。私とマリンは、密かにクレハから距離をとった。



「言ってくれたわね、この乳デカウサギ!!!」



 クレハは大声でアンズを怒鳴りつけたのちに彼女の胸ぐらをつかんだ。アンズはわけが分かっていない様子で、涙目でがくんがくんと揺らされている。やめてやめてクレハ、アンズの首がもげる。



「クレハちゃん、まぁそのくらいで……」


「マリン! そもそもはアンタの乳が無駄にでかいのがいけないのよ!!」



 うわ、飛び火した。クレハはおもむろに立ち上がり、何を思ったかマリンの胸を鷲掴みにした。え、ええー!



「やんっ!」


「やん、じゃないわよ! 何やらしい声出してるのよ爆乳モンスターが!! こうなったら全員のバストサイズを白状してもらうからね!!」



 いかん、ついにクレハが暴走しだした。完全に切れ散らかしている。……ん? 全員?



「え、キキョウとアリッサムとルピナスも?」


「当たり前でしょ! ほら全員並ぶ!!」


「え、ええ……」



 なんだかんだ、ちょっとした好奇心が全員を巻き込むことになってしまった。アリッサム達には申し訳ないと思いつつも、しっかり付き合ってくれるあたりノリが良い。ルピナスなんかは「無礼な!」とか言い出すと思ったんだけどな。







「……うん。まぁ分かっていたわよ。私が一番小さいことくらい。ほら、笑いなさいよ! Aカップよ!」


「く、クレハ、落ち着いて」



 一番隅に並んだクレハがブチ切れている。まぁ、幼児体型な彼女がここに来るのは分かっていた結果だ。……クレハ、そんな恨めしげな目で見ないで。



「次は私ですね。お掃除に大きなバストは必要ございませんゆえ……。Bカップです」



 次はルピナスだった。控えめなバストだが、全体的に線が細い彼女はあまり気にならない。ルピナスは身長も高いからね。……だから、クレハ、そんな目でみないで。



「ま、まだまだ発展途上だから。限りなくDに近いCだから」



 次は私かぁ。おかしいな、大きい方だと思っていた私が下から数えたほうが早いなんて。違うんだよ、私が小さいんじゃなくてココにいるみんなが大きいの!



「私はD。ちょうどいいサイズでしょう?」



 キキョウが勝ち誇ったように私に微笑んだ。……比べてみても確かに彼女のほうが大きい気がする。



「私はEカップです。まぁ、こんなものですかね」



 アリッサムは堂々とした立ち振舞いをして言った。流石、王族と言うべきか……出るとこは出ているといったところなんだろうなあ。



「Fカップ……です。あの、恥ずかしいのでもう服を着ていいですかね」


「むかつくからまだ駄目」



 アンズがもじもじしながらそう言うが、すかさずクレハに釘を刺されてしまった。涙目になっているが、そもそもはアンズが地雷を踏んだのがいけないしな。……さて、残るは一人。



「Gカップよ。最近肩が凝っちゃって……何だか、まだ大きくなってるみたいなのよね」



 マリンが自分の胸をゆさゆさと持ち上げながら言う。しかし、まぁよくここまで育ったものだ。一体何を食べたらそんなふうになるというんだろう。ごくり、とクレハが生唾を飲み込んだ音が聞こえた気がした。



「え、あの。みんな、どうかしたの?」


「もう良いわよそれ以上大きくならなくて!!」



 クレハの絶叫がこだまする。この後クレハのご機嫌をとるのに大変苦労したわけだが……それは、また別のお話だ。

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