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vol.67 王城へ

 それから、アジトの入り口に立っていた見張りをボコボコにして私達は捕らえられていた人たちを逃がすことに成功していた。それぞれの人が私達に笑ったり泣いたりしながらお礼を言ってアジトを去っていく。



「本当にありがとうね、みんな」



 そんな中キキョウも、アジトを出ながら私達に頭を下げた。



「いいよ、水臭いな。あの時、キキョウが私を助けてくれなかったら私もジャギに殺されてた可能性だってあったんだし。お互い様ってことで」



 そう言ってへらりと笑ってやる。彼女は一瞬困ったような顔をしたが、「それもそうね」とすぐに笑顔を浮かべてくれた。本当なら今すぐにでも<転移>でダークエルフの集落に戻ってもらいたいところだが。



「それじゃアンズ、<転移>を」


「いや、それがですね……困ったことが一つありまして」



 もじもじと、自分の長い耳をいじったりしながらアンズが言った。



「<転移>は、一度使うとしばらく使用できないみたいですね。多分、一日に一回なのかと……」


「ははぁ、クールタイムってやつね。まぁ便利過ぎるもんねぇ」



 そうなると、流石にホイホイとスキルを使用するわけにもいかないか。ここぞというタイミングを見ないといけないし、そもそも今は前に使ってから24時間経っていない。



「そしたら、一旦キキョウはアリッサムの家にでも戻ってもらう?」


「何言ってるの。こうなったら私もとことんまで付き合うわよ」



 意外な回答に私達は目を丸くしてしまった。キキョウは今回あくまで被害者だから、私達にそこまで付き合ってもらう理由もないんだけど。



「良いの?」


「さっき水臭いって言ったばかりでしょ。それに、私を攫ったエスタロッテとジャギって奴に痛い目みさせてやらないとね」



 キキョウは両のこぶしをぐっと握って言った。そんな様子ぼキキョウを見てクレハがニヤニヤしている。



「とか言って、本当は一人でいるのが不安だったりするんでしょ」


「ばっ! クレハ、そ、そんなわけないでしょう! やめてよね、もう……」



 顔を赤くして怒るキキョウとケラケラ笑うクレハに少し和んでしまうな。アンズやアリッサムも少し緊張がほぐれたようすだし、かえって良かったかもしれない。しかし、忘れかけていたけど先程の探索ではジャギが見当たらなかった。今どこにいるんだろうなぁ。



「それじゃ、改めて地下に突入しよう。エスタロッテが怪我をして逃げていったけど、今ならそう遠くには行っていないはずだよ」



 全員が頷いたのを確認し、私達は再び地下への階段を降りていった。







 エスタロッテはあの赤い部屋から逃げていったわけだが。入口側の方には、彼女が逃げていった痕跡がなかった。すなわち、奥側に逃げていったということになる。



「見て、これ。血の跡かしら?」



 点々と、地下施設の奥へ奥へと続くように赤い斑点が床に模様付けられている。ディーちゃんの一撃で、エスタロッテは深手を負ったはずである。即ち、この血液の跡はほぼ間違いなく彼女のものだ。



「これを追っていけば、まず間違いなく……」


「そうね。ただ、エスタロッテのことだから何の対策もなく逃げ出すことは考えにくいわ」



 マリンが指摘する通り、あいつがこんな分かりやすい痕跡を残したままにするだろうか。罠の一つ二つは覚悟しておいたほうが良い。未だ姿を見せないジャギのこともあるし、私達は慎重に痕跡をたどっていくことにした。



「しっかし、本当に無駄に広いわねぇ。どこまで続いているのかしら」



 長い廊下を歩きながらクレハが愚痴をこぼす。もう何回曲がったか分からないが、無駄に廊下がクネクネとしているせいで今どのあたりにいるのか全く想像がつかないせいだろう。



「歩きながら治療してたのかな。このあたりから血痕が無くなってるね」



 そして点々と地面に付着していた血痕も見えなくなってしまった。血痕が最後に見えたあたりから、片っ端からドアを開けていってみるが倉庫みたいな部屋ばかりで一切ヒトがいた痕跡がない。



「……いや、待ってください。あの奥の扉……」



 これまで黙ってついてきていたアリッサムが、不意に指さした先。目で追うと、そこにはこれまでとは異なったやたらと大きな扉が構えられていた。豪華な装飾が促され、扉の中央にはいつか見たよく分からない紋章。



「ねぇ、マリン。これって、発行キノコの洞窟の奥にあった……」


「そうね。どうやら、この先は」



 まず間違いなく王城に続いているだろう。まず変なことをされる前に、手負いのエスタロッテをなんとかしようと思って地下に潜ってきたのだけれど。意図せずして王城にやってきてしまったらしい。



「しかし、誘拐犯のアジトと王城が地下でつながっているとは思わなかったね」


「だけどこれでヘリアン王が黒薔薇とつながっていることが証明できるんじゃないですか?」



 アンズが自信なさげにおずおずと発言したが、実際そのとおりだ。この扉が王城とつながっていればもはや言い逃れできまい。だって、この地下には大量の奴隷の首輪があって、奴隷を閉じ込めておき売りさばくための道具やら何やらがこれでもかと保管されているんだから。



「とにかく、そうとなればこの扉の先を確認して……んっ!?」



 ガチャガチャと何かがひっかかる手応え。開かない。



「アンズお願い」


「で、では。……うーん?」



 やっぱり開かなかった。例の紋章に手をかざして見ても開くことができない。鍵穴みたいなものは見つからないし、どうしたもんだろうか。……いいんだよ、アンズしょんぼりしなくて。鍵があかあくてもアンズのせいじゃないってば。



「そんな加護を与えることのできるアリッサム本人ならどうなの?」


「あっ、そうですね。……いや、だめみたいです。この扉、紋章の加護が書き換えられていますね」



 アリッサムが紋章を指でなぞりながら言った。どうやら万が一を考えて、元々の王族では鍵が開かないように細工されているようだ。ここまで来て立ち往生かよ。



「……あっ、ねぇ。さっき首輪の呪いを解除した“審判の書”はどうなの?」


「あっ、<解呪>?」



 全員で頭を悩ましている中、キキョウがポンと手を叩いて提案した。なんて単純なことに気が付かなかったのだろうか。エスタロッテはよく分からないが、審判者ジャッジであるモンタナが地下をウロウロしているということはここを通っている可能性が高い。何故なら、スラム街で審判者ジャッジは目立ちすぎるのだ。治安を放棄した街に彼らは必要ない。



「王城から行き来していたってことか。そう考えれば審判者ジャッジが地下にいたのも自然だね、っと」



 <解呪>を念じると、本が光りだしあっさりとその扉は私達に道を譲った。扉の先は、予想通り上り階段。ここを上がった先はいよいよ王城が待ち構えているはずだ。



「皆さん、少しだけお時間よろしいでしょうか」



 さぁいざ階段を登ろうとした寸前、アリッサムが私達に向き直って発言をする。元王女というだけあって、ここぞという時の惹きつける力は凄いものがあるな。思わず足を止めて聞き入ってしまう。



「王城には、唯一信頼できる方が一人だけいらっしゃいます。私の元側近だった方で、ハーフエルフのルピナスというヒトです。……今は大事な役職を外されて、清掃員なんかをしているかもしれませんが。もし見かけたら、きっと力になってくれるはずです」



 おお、王城にもまだアリッサムの味方だったヒトが残っていたのか。ヘリアン王は元王女の関係者は軒並み排除していそうだったが、それでも王城に残しておくということは。ルピナスさんってヒトは相当優秀だったんだろうな。



「どんなヒトなの? 例えば……年齢とか見た目とか」


「ええと、確か齢200は超えていたはずですが。綺麗な長い金髪をしているので……そう見間違えないと思いますよ」


「に、にひゃく」



 予想外の年齢に私達は間抜け面を晒すことになってしまった。なんとなく心情を察したアリッサムが苦笑している。エルフは長命というけど、年齢から見た目は想像つかないな。おとなしくアリッサムに判別してもらったほうが良さそうだ。



 さて、予想通りならエスタロッテとジャギも王城にいると考えてまず間違いない。なんとか彼らをとっちめてやろう。戦うためのカードは揃っている。あとは、これらをどう使うかということのみだ。私達は覚悟を決めて階段を登っていった。

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