vol.12 分裂?
【コユキちゃん、今よ!】
【任せといて! <酸攻撃>、アシッドショット!】
それからというもの、私はマリンと上手く息を合わせて洞窟内のモンスターを次々と狩っていった。<ST閲覧>の効果はここでも絶大で、スキルレベルを2にしたことで残りHP・MP表示も見られるようになっていた。
スキルを見破り、残り体力なども分かってしまえば後は煮るなり焼くなり。敵の攻撃はマリンの<幻惑魔法>で難なく躱すことができる。殆ど被弾することもなく、案外楽勝かも、と慢心してしまいそうになる。イカンイカンと自らを一括し、取得したばかりの<酸攻撃>でまた一匹、獲物を始末した。
『経験値を獲得しました。レベルが9→10になりました。スキル<分裂>、<融合>が使用可能になりました。』
おっ? なんか初めてスキル関係のアナウンスが流れたな。実は、<分裂>と<融合>はハイスライムになった時点で取得はしたものの、これまで使おうとしても使うことができなかった。使うためにレベル制限があるスキルもあるってことなんだね。
【よし、レベル12……ってコユキちゃんまたレベル上がったの? 相変わらず早いわね】
マリンがレベル12で、私がレベル10。最初の猪の時のような上がり方はしていないけれど、順調に狩りを続けられてこの上がり幅ならば十分過ぎるといえる。良い狩場を教えてくれたマリンに感謝だね。
【うん、レベル10。伴って、なんか使えるスキルがあるみたい。ちょっと試していい?】
【え? ええ、良いわよ】
ともあれ、ずっと気になっていたこのスキルを早く試してみたい。スライムであることの特典みたいなスキルだからね。<捕食>みたいに敵が瀕死でないと使えないような駄目スキルじゃなきゃ良いんだけど。……<分裂>!
どろり。一瞬、自分の身体が溶けたと思うと、若干視界がゆがむ。次の瞬間、ポンッ、と弾かれるように真横に少し飛ばされた。弾かれたほうを見ると……
【え?】
【わぁ! コユキちゃん、凄い! コユキちゃんが二人になってるわ!】
興奮して話すマリンの言葉で、現状を把握する。<分裂>はもうひとり自分を生み出すスキル。なんか複雑な気分だな。もうひとりの私は、“ご命令を”とばかりにその場に佇んで私のことを見てくる。なんか怖いからそんなに見つめないで。
【あら? 大変、コユキちゃんのレベルが下がってるわ】
【えっ、嘘!?】
マリンに言われて確認すると、私のレベルはなんと半分の5に下がっていた。もうひとりの私の方も、レベル5。うーん、アカンなこれ。ハズレスキルかも……。あっ、でも<融合>したらどうなるんだろ。えいっ。
軽く念じると、もうひとりの私がくっついてくる。そして、私に吸収された。レベルは……元通り、10。なるほど。でも、待てよ? これってもしかして……。
【マリン、試したいことがあるの。ちょっと足を引っ張っちゃうけど、良い?】
【ん? コユキちゃんのことだから考えがあるんでしょう。もちろん良いわよ。何でも言って!】
うーん、マリンには頭が上がらないなぁ。ありがとうと感謝の気持ちを述べ、私は<分裂>を使い2人になる。そしてもう一人の私をパーティ申請。3人パーティの出来上がりだ。
【私の予想通りなら、これ、凄いスキルかもしれない】
※
【<变化>!!】
2人の私がマリンをアシストする形でモンスターを狩る。レベルが下がっても麻痺魔法の威力はあまり変わらないため、アシストする程度なら然程問題にならず動くことができた。そして、都合よく現れたあの猪のモンスターを、私達はまた狩ることに成功していた。
『経験値を獲得しました。レベルが5→7になりました。』
疑似3人パーティになって、私と、私の分身はレベルが2つずつ上がった。で、本題はここからだ。マリンに時間をもらい、例のスキルを試す。
【<融合>!】
分身の私と一つになる。首を傾げるマリンをよそに、私は自分のステータスを確認した。
【うわ、やっぱりだ。レベル14……】
【えっ、嘘!? あら、本当ね……こんなにあっさり抜かされちゃうなんて】
7+7は14。小学生でも出来る計算。総取得経験値量でレベルが決まるならこうは行かないだろうが、どうやらこのスキルは単純なレベルの足し算・引き算らしい。<早熟>と<融合>と<分裂>。成長速度に全振りしたようなスキル構成だ。
あいにく、まだ2人以上には分裂できないみたいだけど。これ、実質の経験値約2倍ってことだもんな。スキルレベルが上がったら、3人、4人と分裂できるんだろうか? 完全にぶっ壊れてるな。
【あー、良いかもと思ったけど。ごめんマリン、これ私が経験値多くとっちゃう計算になるね】
【そうねぇ……でも構わないわよ。むしろ大歓迎ね!】
【えっ、どうして?】
【だって、コユキちゃんが早く強くなるほど、パーティメンバーの私としては心強いもの。差はつけられちゃうかもしれないけど、そうなったら守ってもらえば良いわけだし。ね?】
そう言い、マリンはお茶目にウインクをしてくる。うう、悪気はないんだろうけど、その優しさで胸が苦しいよマリン。でも今はその優しさに甘えておこう……。照れくさい気持ちを、私はウインクをやり返してごまかすことにした。
しかし、一気にレベルが上がると気分が良いものだ。ぐんと伸びたステータスに思わずほくそ笑んでしまう。この調子で行けば、2度めの進化もそう遠くないかもしれないな。さすがに、1回めみたいにレベル上限が15ってことはないだろうけど。30くらいだったら嬉しい。
【コユキちゃん、前方2時の方向。また猪のモンスターがいたわ】
ストーンブル Lv.14。同レベルになって、ようやく経験値の大変美味しい猪の名前が発覚する。レベル14もあったのか。そりゃ美味いはずだよ。最初なんてレベル4で倒したもんね。私は、いそいそと分裂すると、また狩り作業に没頭した。
※
敵を見つけては倒し、見つけては倒し。どれくらい経っただろう。いい加減何匹倒したか数え飽きた頃、ついに私はレベル15に到達した。勿論、分裂した状態で。この洞窟のモンスターたちは現状、例の猪、ストーンブルがレベル14~15であるのを筆頭に、大体10~13レベルが平均らしい。
自分たちより高いレベルのモンスターを見なくなったので、そろそろ潮時といえる。マリンもマリンでレベル15になり、手応えを感じているようだ。彼女のレベル上昇に応じて、使い込んだこともあり<变化>のレベルも一つ上がっていた。
【ふう、だいぶ頑張ったわね。そろそろ拠点に戻りましょうか】
【そうだね。それじゃ、満を持して……<融合>!】
圧巻! それは、レベル30! やー、こんなにあっさりレベル30を達成できるとは。しかもバッチリ(Max)表示あるよ。やったね!
『個体ハイスライムの進化が可能です。』
予想通り脳内に響くアナウンス。拠点に戻ったら実行するとしよう。順調すぎて怖いくらいだけど、この世界で最強を目指すなら足りないくらいかもしれない。なにせ私はスタート地点が誰よりも後ろなのだから、仕方ない。
【コユキちゃん、嬉しそうね?】
【あ、バレちゃった? いや、予想以上に成長できたのが嬉しくってつい】
帰りの坂道を登りながら、自分のステータスを眺めてニヤニヤしているところを見つかってしまった。マリンが「なんだか子供みたいね?」と言って優しく笑い、頭を撫でてくる。しょうがないじゃん嬉しかったんだから。
【っ、ホラ行こうマリン! おいてくよ!】
【あっ、ちょっと待ってよコユキちゃん、もう!】
照れ隠しに、拠点を目指して走り出す。次の進化でどんな姿になれるのだろうか。私は期待に胸を踊らせていた。
『種族名:ハイスライム Lv.30 固有名:コユキ 性別:女 状態:正常
HP 243/243
MP 134/134
筋力 144(158)
敏捷 185
器用 130(156)
知性 104
精神 108(118)
SP 112
LB 66
魔法 <麻痺魔法>Lv.1
スキル <捕食>Lv.2 <早熟>Lv.1 <回転移動>Lv.4 <酔耐性>Lv.1 <HP自動回復>Lv.2 <危機感知>Lv.1 <道具入れ>Lv.1 <忍び足>Lv.2 <跳躍>Lv.1 <策略家>Lv.1 <無謀な挑戦者>Lv.1 <水泳>Lv.1 <ST閲覧>Lv.2 <ST閲覧防御>Lv.1 <分裂>Lv.1 <融合>Lv.1 <念話>Lv.1 <ネスト言語>Lv.1 <酸攻撃>Lv.3 <酸耐性>Lv.3』
『種族名:猫又 Lv.15 固有名:マリン 性別:女 状態:正常
HP 119/119
MP 154/154
筋力 55
敏捷 68
器用 50
知性 92
精神 91
SP 25
LB 12
魔法 <幻惑魔法>Lv.2 <炎魔法>Lv.2 <聖魔法>Lv.2
スキル <变化>Lv.2 <爪強化>Lv.1 <忍び足>Lv.2 <料理>Lv.2 <HP自動回復>Lv.1 <MP自動回復>Lv.1 <念話>Lv.1 <道具入れ>Lv.1 <ネスト言語>Lv.1 <跳躍>Lv.1 <ステルス>Lv.2 <落下ダメージ軽減>Lv.1 <ST閲覧>Lv.1 <ST閲覧防御>Lv.1 <夜目>Lv.2』




