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国産弓製造計画「サクランボ作戦」始動

作者: いまっく

突っ込み禁止でお願いいたします。

   国産弓製造計画「サクランボ作戦」始動


 2020年の東京オリンピック以降10年もの歳月が経過し、巨大な波が引いたかの如く、日本のスポーツ界は一気に熱が冷め、日本人のオリンピックでの活躍に暗雲が立ち込めていた。

体格に勝る外国勢に押され、各種スポーツの殆は金メダルが皆無となる散々な状況に見舞われていたのである。

海外マスメディアからは「元気を失ってしまった日本」と揶揄され、それに伴い、国内景気への影響も懸念された。

それを受け、オリンピックで金メダルを取ることが急務となる機運が高まっていた。

そこで国家が目を着けたのが、体力・体格による劣勢の影響が少ないアーチェリーであった。

各メディアの後押しもあり、

「狙いを定めて一攫千金メダル」

「光陰矢のごとし、失われた10年は一瞬の光の矢」

「欲しがりません中るまでは」

などのスローガンが叫ばれた。

更に、アーチェリーを題材とした、甘く切ないドタバタラブコメディードラマ「弓子と矢太郎、恋のシュートオフ」の記録的大ヒットを受け、国民のアーチェリー熱が急激に加速し、金メダルへの夢が一気に膨らんでいった。

しかし、道具の性能がそのまま結果へと結びつくアーチェリーにおいて、選手だけの実力ではいかんともしがたい状況であった。

国産弓を製造していたYAMAHAがアーチェリー部門から撤退して四半世紀がとうに過ぎ去っていた。

YAMAHA撤退後、国内アーチェリー弓具メーカーは一部備品のみの製作にとどまり、弓本体を作ることのできる国は、K国、A国、ヨーロッパの一部の国のみとなっていたのである。

当然、国内アーチャーは、自身の努力の甲斐無く、弓具を国外メーカーのそれに依存せざるを得ない状況であった。

そういった現状を打破せんとし、国家プロジェクトとして国産弓製造計画「サクランボ作戦」が打ち立てられたのである。

しかし、国産弓製造にあたり当時問題視されていたのは、カーボン繊維と木材との接着技術であった。

各メディアを通じて国家プロジェク「サクランボ作戦」への参加企業募集が発表された。

そこで手を挙げたのが某食品メーカーであった。

実は当の食品メーカーでは、前々から新しい接着技術についての研究がなされていたのである。

「食品」と「接着技術の研究」とは畑違いに思われるが、当食品メーカーでの接着技術研究のきっかけは、偶然発見されたある物質であった。

当食品メーカー本社の前身であった千葉の工場で、それは発見された。

今は使われていない木造建築の古い工場の片隅にあった大型の樽から、硬質化した謎の酵母菌が発見されたのである。

それは樽の木材部分と金属部分の接合部にこびりついた黒い樹脂状の物質で、木と金属がほとんど一体化するような強力な接着力を有していた。

場所・状況からして、それは古くからその工場で使用されていた酵母菌の一種であることは間違いなかった。

当食品メーカーは、この謎の酵母菌を自社研究所に持ち運び、徹底的に解析することとなった。

そして、発見された酵母からRNAを抽出し、それを原料としたリボ核酸分解法により、炭素繊維と木材とを強力に接着する物質の開発に成功したのである

その接着物質は、異種素材接着を容易とするだけではなく、素材の原型となる形状を、自らの増殖にて維持する性質を持っていた。

つまり、接着後も増殖を行う"生きた接着物質"なのである。

国産弓製造の国家プロジェクト「サクランボ作戦」発動と時を同じくして、その接着物質が完成したのであった。

当食品メーカーは国の支援を得、早速この接着物質を使用して新しいリムの開発に着手した。

そして、謎の酵母から生成された生きた接着物質により、カーボン繊維と木材とを完璧に接合することに成功した。

完成したリムについて、すぐさま国内トップクラスのアーチャーによりテストが開始された。

そして、テスト結果が発表された。

本リムは、超軽量・超硬質さらには、リム返り時の振動を瞬時に吸収する"粘り"を兼ねそろえおり、リリース後におけるリム溝へのストリングの収まりは1mm幅の隙もなく、その後のリムのばたつきは皆無と言っていいほどであった。

また、それ伴い、ハンドルその他スタビライザー部分への伝達振動が、今までのリムの1/10という驚異的な安定性を誇った。

ここに、未だかつてない悪魔的性能を誇る新リムが完成したのである。

そしてその弓は、当食品メーカーの社名を擁して命名された。

「YAMASA-EX」誕生の瞬間である。


      おわり

「それが言いたかっただけと、ちゃうんか?」

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