悪役令嬢の転移2
悪役令嬢が転移!!
俺は画面越しの愛しいメルシアちゃんの幸せの為に、こいつを帰さん!!
俺のメルシアちゃんを花に例えるなら、淡い桜が相応しいだろうなぁ
あんなに感情が豊かで、コロコロと笑う様は(恐らく)天使の様に可愛くて。乙女ゲームヒロインの宿命、顔出しNGだから想像だけど。そんな慎ましい生き様が性癖な訳だけれど。
目の前で腕を組み、立ち往生するキツイ顔した女とは大違いだ。いや、一応整ってる顔はしてるけど・・なんていうかリアル女を思い出させる冷酷な絶対零度な感じが全て台無しにしているというか。まぁ・・乙女ゲームのライバル悪役令嬢だからしかたないのか・・なーんて、夢に決まってるだろう。画面越しのメルシアちゃん好きすぎてついにVR装着してる幻覚まで見るようになっちまったのか・・いよいよ両親に殺されるかもしれないな、よし今度の帰省はバックレよう。お見合い写真と格闘したくないし。とりあえずメルシアちゃん補給せねば・・・
「ここは、どこですの?」
・・・あ、ヲワタ、必死で現実逃避してたのに・・・・
「あなた、聞いておりますの?」
さて、どう説明したものかと考えあぐねていると
自分勝手なお嬢様はいきなり強烈な平手打ちをスパーンと当て「触れることはできますのね」などと言い放ちおった。
「い、いきなりっ・にゃ、なにするんでしゅ・・ですかっ」
・・言い忘れていたが、俺はいわゆる陰キャラというやつでリアルはめっぽう弱者である。メルシアちゃんを養ってる尊い仕事をしているといいきかせながら終業時に、隠れて会社の個室トイレで泣いてる俺は、辛くなんかない、絶対に辛くなんかないんだからな!!!・・よし自己暗示は問題なく作動。頑張れ、俺。
だから、緊張と恐怖で噛んでしまっても仕方ないレベルのコミュ障だ。仕方ない仕方ない。
「あら、言葉、通じますのね。いささか謎めいた使い方をなさるようですが」
腹立つほど整った二次元悪役令嬢のシャーリィ生き写しの女は王様の様に主導権を握り、やんわりと皮肉までいう始末。クッソ、職場のお局と同じじゃないか、これだからきつい女は嫌いなんだよ。ゲームヒロインの我らがメルシアちゃんの慎ましさをちったぁ見習えっ!!・・と説教できたらどんなにスカッとするんだろうなぁ・・。考えてて、もたもたしていたらまた、平手打ちを食らう可能性があったので慌てて説明することにした。
「・・ここは、俺の住んでいる部屋です」
「部屋・・?・・っ!!!」
キョトンと意表を突かれた彼女は、意味を理解したらしくサーっと美貌を青ざめさせ、逃げようとした。乙女ゲーム知識で悪役令嬢が何を考えているのか手に取るように分かってしまったので、不本意ながらも、逃げ出す前にあわてて抱き着いて押し倒し妨害し、口を塞いだ
「っんんーーーーーっ!!」
「暴れられてもっ、悲鳴をあげられてもっ、逃げられてもっ・・困るんでっ!!・・現在進行形で狼藉みたいなことしているけど、俺の話、聞いて理解してもらいたいだけだからっ・・第一っ、俺には心に決めた人がいるから、あんたに何の魅力も感じてないから安心して、話を聞いてっ」
悪役令嬢の返事は、肘鉄やら、全力の抵抗だった。
因みになぜこの女が逃げようとしたのかは、自分が犯されるかもしれないと勘違いして逃げようとしたからだ。俺には最高のメルシアちゃんがいるというのに、失礼な話だ。
むすうたの世界は、清く正しく美しい世界だ。基本的に中世ヨーロッパ風に、魔法に、学園モノを混ぜた世界観。つまり、むすうた的に考えると・・男性の部屋に連れ込まれるのは・・非常に危ない。夫婦くらいじゃないと許されない、そういう考えの淑女しかいない世界だったりする。
仕方ない、ほんとは愛しいメルシアちゃんへの裏切り行為にしかならないが、ほかに方法が見つからない。俺は悪役令嬢の顔目掛けて両手で床へ挟み込み・・いわゆる床ドンをしかけてしまった。
「落ち着けっ、シャーリィ・ラヴァナ・ルナルティス!!!」
コミュ障がありったけの声量で怒鳴ると、悪役令嬢はびくりと動きを止めた。
そりゃビビるわな。初対面の相手にいきなり名前、しかもフルネームで呼ばれてるから。
「・・や、やはり・・あなた、わたくしの名前を調べ上げt・・」
「誤解しか与えられてないが、俺は、オリバー・リカルド・セインツローゼを知っているから、お前を知っているだけで、何であんたがここにいるのかも知らない!!
だから、状況整理をしよう!!俺は知っているものを、あんたに教える!!だから、あんたも知っている情報を渡す!!交換をしよう!!」
こちらは奪う気なんざ全くないのに、わが身の貞操を必死に守ろうとしていた悪役令嬢は、その言葉を聞いてやっと大人しくなった。ちくしょう、なんだか腑に落ちない。けど二次元のような美女だから警戒は大事かもな。あり得ない話だが、師匠が見つけたら、かっさらってコスプレ祭りしそうだし。
ちなみにオリバーなんちゃらさんはこいつの婚約者。我らがヒロインメルシアちゃんの攻略ルート上にいる王子様キャラ。嘘はついていないぞ。なんだったら予定から攻略法まで暗記しているからな。王子ルートはこの女以外も絡んだりして最高にだるかったからな、可愛いメルシアちゃんの幸せの為なら何度だってリプレイしているさ!!!
むすうた、をうたむすにしていたので修正しました