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NO.5 情報収集




 あれから大変でした。

 スクルドの退出が余りにも遅いから、エリナさんが様子を見に来てくれたらしいんだけど、ベッドに雪崩れ混む様に寝ていたスクルドと押し潰されながら寝ている私に、思わず絶叫。


 私とスクルドはその声で目が覚めたのだが、半ばパニック状態のエリナさんは、スクルドに向かって氷魔法を発動。突然の出来事にも関わらず全て避けるスクルドに、私は思わず拍手。エリナさんのパニックが収まるまで氷魔法の乱撃は止まらず、部屋の中は水浸しになるし、壁には穴が空くし、ベッドの天蓋は崩れそうになって座っていた私に襲い掛かってくるし、部屋は暫く使い物にならなくなってしまった。


 本当、魔法の力って凄いんだね。

 使い方はしっかり考えてやらないと、大事になそうだ。


 改めて違う客間に移動し、落ち着いた所でエリナさんの方に向き直る。

 


「サラ様?」

「あ、ごめんんさい。ちょっと、色々話を整理したいから

一度外して貰ってもいいですか?」

「かしこまりました。」



 スクルドは、あまりの疲れで寝てしまったという事にして何とか無理くり誤魔化した為罰とかはなかったけど、今日の騎士団のお仕事には大遅刻になってしまったらしい。本当に申し訳ない限りだ。

 それから、とりあえずこれからの身の振り方や立ち位置を整理する為に、まずは分かっていることなどを纏めたいと思う。エリナさんには悪いが、少し部屋を出てもらって私は机に向かい、備え付けの羽ペンと羊皮紙にサラサラと日本語で書き始める。



 まずは私の存在についてから。



1、私の大好きな本に登場してくる敵役悪女、ノーフォード公爵の娘に転生?した


2、固有能力で魅了体質という無条件で異性を虜にする能力を持っている。

(発動条件は未定の為、使い方やいつ相手を虜にしているのか知る必要がある)


3、ノーフォード家の血を引いている証、桜型の痣が右肩にある為、血筋で間違いはない

(二ヶ月前にはなく、一ヶ月前間者が風呂を覗いた際には存在していた)


4、魔力があり、実は魔法が使えた


5、失踪事件から8年経っており、記憶を無くしている事になっている



 こんなものだろうか?

 なかなか説明しがたい事が起きているから謎は残っているけど、それはゆっくり解決していくとして。これから本当にどうしていこうか…

 ノーフォーク公爵の娘になったって事はやっぱりこのお屋敷に住まなくちゃいけないんだろうけど、正直ここに住んで娘になるって事は作法とか色々覚えなくちゃいけないだろうし、情勢にも詳しくならなくちゃいけないだろうし、令嬢としての基礎を身に着けなくちゃいけなくなる筈。出来れば、スクルドの家でのんびり過ごしていきたいと思っちゃうけど、王家に通じる名家。絶対にそうはいかないだろうし、本の時間軸も気になる所。


 今、もしも原作が始まっていないなら、その原作が始まるまでの時間も計算して動かなくちゃいけない。


 ん~…覚えてるだけでも、書き出してみるかぁ…


 私の大好きな本のタイトルは思い出せないので、仮として分かりやすく「彩星(イース)」って事にしとこう。


 この本は、よくあるファンタジーの冒険物語で主人公が世界を蝕む闇から世界を救う物語だった気がする。…確か、主人公の他に虹の巫女っていうどっかの国の姫が私と似たような特異体質を持っていて、そのヒロインの力によって闇を世界から取り除き、そこから世界は末永く安泰を取り戻して主人公とヒロインは結婚するっていうお話だった気がする。あぁ、駄目だ。こんな大まかにしか覚えてない。

 原作の始まりは、世界の至る所で起こる異常気象と毒を含んだ瘴気による環境汚染。でも、それがどこの国で起こるのかは思い出せない。さっきから、大事なところだけ抜け落ちていて軽い苛立ちと歯がゆさを覚える。

 

 そして、一番の問題は、ノーフォーク令嬢が闇落ちして殺されるのはいつだったのかって事だ。思い出せる限りでは、ラスボスの右腕みたいな存在?だったから死んじゃうのは凄く終盤の方だった気がするから、とにかく今は、原作が始まってるのかそうじゃないのかを確認しなければならない。


 と、言うことはこれからの身の振り方は決まった。



「まずは、原作が始まるのに向けて準備をしなくちゃ…」



 公爵令嬢という立ち位置は、それには持って来いだ。

 環境調査や、外交調査の名目で他の国々に足を運ぶことも出来るし、これから令嬢としての作法を覚えていくっていう特権もあるから、そういう名目で行くのもアリだろう。でも、私の年齢は23歳。大丈夫なんだろうか…?地球のこういう貴族の世界って結婚とか社交界デビューの年齢は15歳からとかだった気がするから、今のまま参加すると…


 え、怖い。なにそれ、やだ。


 ちょっとエリナさんに詳しい話聞いてみよう、怖い。




+++




「あぁ~…本当によかった!」

「確かに、年齢によって出られるパーティーは決められて居ますが

基本的に社交界デビューは18歳からと決められておりますし、

婚期自体遅まっておりますから大体25歳前後でされれば適齢期でございましょう。

今は、どこの国でも貴族、平民までは学生制度という物がありますので、

それを終えてから王政に加わったりされてます。」



 なるほど、本で読んだ時にはそんな制度があるなんて知らなかったけど、この世界は科学が無いだけでかなり進んでいる世界のようだ。

 エリナさんの話だと国民たちは12歳までは屋敷や自分の家で普通に過ごし、13歳から国民証を持ってる人達は将来を見据えた学校に通う事が出来るんだとか。魔法を得意としている者は、魔法学校。加工を得意としている者は技術学校。医学、法、研究などを得意としている者は、法学学校。それぞれの得意分野を伸ばし、卒業した暁にはそのまま国の管理する部隊や組織に所属させたりと優秀な者程優遇されるらしく、平民と貴族どちらも平等に扱われているらしい。まあ、貴族と平民の角質はまだある国もあるみたいだが。優秀な者がどんどん出世出来る制度は、今の神王(アルテナ)達が200年前に世界会議で決め、そこからは高度経済水準へ向かって急上昇中なのだという。

 

 出来た王達が居るものだ。


 神王(アルテナ)とは、各都市を纏める王の事で世襲制で王は決まる。世襲制っていうのは、日本のように天皇は代々血筋で受け継がれていく制度のこと。どうやら、爵位を持つ名家と王家の血筋だけは特別扱いになるらしく、その血筋でなければ受け継がれない固有能力や力があるのだそうだ。その為、危険人物にもなりうる可能性がある。その者達を管理する意味でも爵位を持たせていたり、王家のような神聖な存在として民達から扱われ、その力を民達に使う事を契約させられているらしい。


 まあ、ここまで国民を平等に扱える制度を作っている絶対君主制は地球でもなかなか無いから国民から慕われるのも頷ける。因みに、日本は立憲君主制という政治に天皇は関われないと決められている国だから、王が絶対的に決められる国で民を平等に扱うということは本当に珍しいと思う。

 一体どれだけの犠牲と歴史の上になりたった国なのか本当に気になる所だ。


 今度、歴史書でも読んでみようかな?



「エリナさん、この国の詳しい身分制度をお聞きしたいんですが

お願いしてもいいですか?」

「えぇ、勿論いいですよ。」



 そういうと、エリナさんは分かりやすい図式で教えてくれた。

 やはり一番上は、神王(アルテナ)。その下に爵位を持つ貴族。その下に平民。そして、最後に罪人というピラミッドになっていた。どうやら平民までは人として当たり前に扱われるが、罪人は人権以外守られなくなるらしい。無差別な殺人を行った者、盗難、非人道的な事をした者を対象に騎士団がそれを捕らえ、司法士がそれを裁き、その者が本当に更生するまでその身分から抜ける事は出来ず、一生そのままで終わる者も居るんだとか。


 そこは、日本と違うんだなぁ…

 罪人の詳しい条件なども知りたいし、そこも今度本で調べよう。


 かなり、この世界の情勢も分かったので、後は国を動かしている経済の動きを知っていくだけだ。

 それについては、なかなか深いところまで知らなくちゃいけないから一旦置いておいておこう。



「サラ様は、本当に話の飲み込みがお早いですね?

これからの将来が楽しみですわ。」

「…そうですか?エリナさんのお話が分かりやすいだけですよ。」



 エリナさんはそういって優しそうに微笑むので、少し気恥ずかしくなってはにかめば次にやる事の為に椅子から立ち上がる。エリナさんに動きやすい服を頼む。これからやる事は、社交界デビューの為の作法を学ぶ事と自分自身の身を守る為の護身術の稽古、それからノーフォーク公爵に話を通して外交視察の準備だ。


 さて、これから忙しくなるぞ…








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