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きみと出会わぬ異世界  作者: めあり
第一章 伝わるはずないこの恋を
8/45

声がイケメンなら、顔もイケメンというただの妄想。

11/20 修正しました。

「大丈夫か!?」


 そんな声がした。完全にイケボだ。なんだイケメンか。イケメンは死ねばいいのに。


 …………いやいや、こいつが魔法陣かなんかで俺を助けてくれたのだから、死ねはダメか。じゃあ、イケメンはタンスの角に足の小指をぶつければいいのに。


 声のしたほうを見やれば、変な奴がこちらに走ってきている。マジで変なやつ。不審者かよ、なんて思っちゃうほどに、変な奴であった。黒のスーツを着ていて、頭にはバイクに乗る時とかのヘルメットをかぶっている。体格はスーツの上からわかるほどガッチリしていた。




銀狼弾丸シルバー・ストライク!!」




 イケメン不審者は、持っていたふたつの銃をエルフに向け、叫んだ──刹那、銃声が辺りに鳴り響き、巨人エルフは光を出して消える。その光はまるで花火のように美しく、しかし儚く。梅雨のどんよりとした空へと消えていった。



 …………は?



 何が起こった? 何だったんだ、今の?

 一発で、あいつを仕留めたって言うのかよ……。

 ふざけてる。ふざけてるよこんなの!


「君、怪我はないかい……?」


 イケメンは俺のもとに駆け寄ると、そうやって俺を心配した。俺を、だ。あ〜、こいつイケメンなんだなぁ、と、改めて実感する。俺を心配してくれるやつはだいたいいい人。それが例え偽善だとしても……。


 というか、さっきからこいつ、俺をじろじろとまじまじと見てくるんだが。何? こいつ俺に気があんの? それとも俺の顔になんかついてるのか?


「ん、あぁ。大丈夫だ」


 俺のことをじろじろと見てくるのが気になるが、とりあえず訊かれたので、答えておく。どもったらどうしようかと思ったけど、すんなりと言葉が出た。


「それで──お前、誰?」


 果たして、このヘルメットを被った、今の時期には暑そうな服装のイケメン野郎に、俺は訊いた。

 本当は今すぐここから逃げ出したい気持ちでいっぱいだが、しかし、命の恩人と言っても過言ではない彼を、置いて逃げるわけにもいかない。そんなわけで、とりあえず訊いてみた。誰? 直球すぎる質問である。


「ん、俺? 俺は──シルバーマン!!」


 いやいや、名前だけ言われても分かんねぇし。

 ちゅうか、何? シルバーマン? この人、この街のヒーローとかやってんの? ご当地ヒーロー? 酷い! ネーミングセンスが酷い! 何でもかんでも『マン』をつければいいってもんじゃねぇぞ!


「ちなみに、漢字にすると、『銀色男』になる。銀色男シルバーマンだぞ! かっこいいだろ!」


 そのまま! ダサい! 超ダサい! 全然かっこよくない!

 そして、何故漢字にしたんだよ!


 俺がこいつのネーミングセンスに呆れていると、相手も何か呆れたように、溜息を吐く。

 どうした? と訊けば、またわざとらしい溜息を吐き、答えた。


「人に名前を訊いといて、自分は名乗らないのかよ?」

「あ、あぁ。それもそうだな。俺の名前は千鶴火憐ちづる かれん。よろしくな」

「ちなみに、695代目の聖剣の勇者だよ」


 いつの間にか人間の姿に戻っていた聖剣が、俺の自己紹介に補足をした。


 ちょっと待てそれ、俺初耳なんだけど……。


 ◇◆◇


 次々と明かされていく情報は、あまりにも衝撃的すぎるもので、本当に何故、こいつは最初に会ったときに伝えないのか……なんて思ってしまうが、まあ、そんなことを今更嘆いても仕方ないので、それこそ仕方なく、銀色男シルバーマンとの会話を楽しむことにした。


「なるほど……」


 自己紹介も終わり、お互いなぜここに来たのか話す。


 この目の前にいる、ヘルメットを被った変態イケメン野郎は、俺と同じように、「選ばれた」らしい。詳しくは教えてくれなかったし、訊く気もないけれど、でも、武器に選ばれると言うことは、選ばれた者は、それ相応の能力を持っていることになる。もっとも、俺は寿命が長いから選ばれたんだけどな。


 しかしまあ、普通はそうじゃないらしい。寿命が長いからだとか、女だからとか、そんな理由で選んでは、本当はダメらしい。でも、聖剣は特別なのか(どうかは知らないけれど)、寿命だけで選んでも、誰にも文句を言われないとか……。


 選ばれた者は能力を持っていると言うことで、必然的に、こいつも持っていると言うことになる。果たして、こいつはどんな能力を持っているのか……。


 そして次に、こいつが持っていて、さらにさっき使っていたのは、こいつを選んだ張本人である『シルバーブレット』。ブレットとは銃弾と言う意味だが、拳銃(しかも二丁)というよく意味のわかんないやつである。あ、銃弾はちゃんと銀色らしい。





「で──どうしようか?」


 あらかた自分たちの話も終えたところで、変態イケメン野郎は、急にそんなことを言い出した。


「何が?」


 質問の意図が掴めなかったので、訊いてみたものの、なんだか言い方が冷たくなってしまった。普段悠莉と話すような口調だったので、訂正しようかとも思ったが、変態イケメンはどこ吹く風か。全然気にしていない様子で、話を続けた。


「これも何かの縁だし、付き合ってやるよ」


 …………は?


「ホモなの?」


 意味が分からない。

 いや、分かるよ、分かるけどさ。

 分かるけど……分かりたくない。

 くそ、ホモだったのかこいつ……! 掘られる前に逃げなければ!


「そっちの付き合うじゃねぇ!! その、トレーニングとならに付き合ってやるって言ってんだよ!!」

「遠慮する」


 折角逃げようと準備をしていたら、変態イケメンが訂正をした。叫ぶ声はうるさく、耳にキーン、とはならないものの、頭の中にはへばりつくように残って、中々出て行ってくれない。

 と、言うか、トレーニングなんて聖剣とふたりで出来るし、こんな暑苦しいやつとトレーニングなんてしたら、俺の体が持つわけがない。つーわけで、返すまでに三秒とかからなかった、即答である。


「即答!? ねぇ、なんで即答しちゃうの? そんなに俺嫌なの!?」


 ねぇ、ねぇ、とうるさいが、やっぱりどう考えてもトレーニングなんかしたくない。掘られたらどうすんだ。


「嫌に決まってんだろが! 誰がイケメン変態ホモ野郎と一緒にトレーニングするかよ!」


 掘られたくないので、負けじと俺も大声で言い返した。あぁ、声枯れそう……。


「俺は変態でもないしホモでもな────い!!!」


 そう言うと、膝に手をやり下を向き、はぁはぁと息を切らしていた。どんだけ叫んでんだよ……。


 はぁ……、ま、いいか。めんどくせぇし。


「じゃあ、頼むわ」


 言うと、顔をあげ、キョトンとしながら首を傾げる。


「は? 何を?」


 俺の言葉がよくわからなかったのか、尚も首を傾げながら、俺に問う。


「いやいやだから、トレーニングをだよ!」


 そう言った瞬間、シルバーマンはヘルメットの上からでも分かるほど、笑顔になった。

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