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きみと出会わぬ異世界  作者: めあり
第三章 巡り廻る景色の中で
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正直言って魔剣も聖剣も、たいして変わんないんだよね。

「んで、生まれたのはエクス・カリバーとたいして変わんないんだよねぇ……。あ、魔剣のほうね」


 その発言は、意味がわからなかった。

 至極当然のように言った青髪グングニルではあるが、しかし、俺は、『魔剣のほうの』エクス・カリバーを知らない。


 ──そういえば。



『私の名前は──聖剣エクス・カリバー。もちろん、あなたが使っていた聖剣ではありません。【本物の】聖剣エクス・カリバーです!』



 俺がこの異世界で出会った聖剣エクス・カリバーを本物とするのならば。


 必然的に、俺が現実世界で共に戦っていた、あの使う度に寿命を消費する聖剣エクス・カリバーは、偽物ということになる。


 偽物。


 イコール。


 魔剣。



 がちゃり。


 合点がいった。

 心の中の歯車のようなものが、合わさったような音がした。


 つまり、魔剣だから寿命を消費する。

 逆に言えば、聖剣だから寿命を消費しない。


 そういうことだったのだ、全部。


「ははっ…………」


 自嘲混じった、乾いた笑いが出る。


 全てを知った勇者千鶴火憐は。


 ただ、笑うことしか、出来なかった。


「そんな浮かない顔して、一体全体、どうしたんだい?」


 グングニルが、訊いてきた。

 その、頭上に広がる青空より真っ青な、髪を揺らして。

 俺の顔を、顔色を、窺うように。

 わりかし心配そうな顔をして。


 ああ、そうか。


 こいつは、聖剣と魔剣のエクス・カリバーがあるのが当然と思っているのだから、そんな、気楽な顔が出来るのだ。

 そして、俺がこんなにも顔面蒼白している理由も、わからないのだ。


 それが当たり前だから。

 それが当然だから。


 でもその当たり前は、その当然は、当人以外、少なくとも俺には、千鶴火憐には、通用しないのだ。


 魔剣エクス・カリバー。


 ずっと俺を、騙してきたんだな。


 聖剣エクス・カリバーとして、俺を、騙してきたのだ。


 ああ。


 もう。


 疲れた。



 そう思っていたら。


「あれ、悠莉ちゃんじゃないですか……?」


 三十メートル程先には、影も形もない、面影さえもない悠莉が、立っていたのだった──

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