正直言って魔剣も聖剣も、たいして変わんないんだよね。
「んで、生まれたのはエクス・カリバーとたいして変わんないんだよねぇ……。あ、魔剣のほうね」
その発言は、意味がわからなかった。
至極当然のように言った青髪グングニルではあるが、しかし、俺は、『魔剣のほうの』エクス・カリバーを知らない。
──そういえば。
『私の名前は──聖剣エクス・カリバー。もちろん、あなたが使っていた聖剣ではありません。【本物の】聖剣エクス・カリバーです!』
俺がこの異世界で出会った聖剣エクス・カリバーを本物とするのならば。
必然的に、俺が現実世界で共に戦っていた、あの使う度に寿命を消費する聖剣エクス・カリバーは、偽物ということになる。
偽物。
イコール。
魔剣。
がちゃり。
合点がいった。
心の中の歯車のようなものが、合わさったような音がした。
つまり、魔剣だから寿命を消費する。
逆に言えば、聖剣だから寿命を消費しない。
そういうことだったのだ、全部。
「ははっ…………」
自嘲混じった、乾いた笑いが出る。
全てを知った勇者千鶴火憐は。
ただ、笑うことしか、出来なかった。
「そんな浮かない顔して、一体全体、どうしたんだい?」
グングニルが、訊いてきた。
その、頭上に広がる青空より真っ青な、髪を揺らして。
俺の顔を、顔色を、窺うように。
わりかし心配そうな顔をして。
ああ、そうか。
こいつは、聖剣と魔剣のエクス・カリバーがあるのが当然と思っているのだから、そんな、気楽な顔が出来るのだ。
そして、俺がこんなにも顔面蒼白している理由も、わからないのだ。
それが当たり前だから。
それが当然だから。
でもその当たり前は、その当然は、当人以外、少なくとも俺には、千鶴火憐には、通用しないのだ。
魔剣エクス・カリバー。
ずっと俺を、騙してきたんだな。
聖剣エクス・カリバーとして、俺を、騙してきたのだ。
ああ。
もう。
疲れた。
そう思っていたら。
「あれ、悠莉ちゃんじゃないですか……?」
三十メートル程先には、影も形もない、面影さえもない悠莉が、立っていたのだった──




