表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
きみと出会わぬ異世界  作者: めあり
第三章 巡り廻る景色の中で
39/45

願えば叶う、と言う世界でもないわけで。

第38話

「どうするか……」


 悠莉を意図的に、故意に置いていった俺たち幼女ふたりとロリコンひとりであるが、これから、いったいどうしたものか、なんて、結構深刻なことを考えていたりする。

 悠莉は聖剣の言うことを信じて待つとして、しかしじゃあ、エルフの件はどうするというのか。こればっかりはどうしようもない、なんて思っちゃうわけだが、どうしようもない、では済まされない問題であるのも確かなのだ。


『エルフを全滅させてこい』


 今の俺に、そんなことが果たして、出来るのだろうか。この聖剣の力がどれくらいのものなのか、そして、代償とかあったりしちゃうのだろうか、なんて思っているが、可能性としては、高かったりする、要するに、可能なのだ。可能性的には、可能なのだ。


 可能なのだが、しかし、そんな人権(エルフだからエルフ権?)を無視するようなことが、あっていいのだろうか。もしそれを女神アルザナティが許したとしても、俺は許さないだろう。いくら南乃花ともう一度会いたいからと言って、そんな、これだけのエルフを殺してしまう、ということはしない。するわけがない。するはずがない。


「そもそも」


 今まで、すっかり黙り込んで、何か考え事をしていたような様子の聖剣エクス・カリバーちゃんだったが、何か思い出したのか思いついたのか、声を放った。


エルフを殺す(・・・・・・)ってゆうのが、間違えてるんじゃないんですか?」


 殺す、と言うのが、間違えている?


「どういうことだ?」


 訊けば、うーむと渋い顔をして、やっぱり考え込んでいた聖剣であったが、意を決したのか、決意が固まったのか、口を開いた。


「エルフを全滅・・させればいいだけの話で、誰も、エルフを殺す(・・)なんて言ってないんですよ。要するに、エルフを無くせばいい、かなり無理やりな考え方ですけど、なかなか、悪くはないでしょう? それが通じるかは、聖剣である私にも、わかったことではありませんが」


 エルフを殺さずに、エルフをなくす?

 それは、存在をなくすという意味なんだろうが、果たして、それこそ、そんなことが可能なのだろうか。

 殺すと言うのが、精神的な問題だとしたら、こちらは、エルフをなくすというのは、そもそも、物理的に考えて、生物の法則的に考えて、この世の理を考えてみて、まず無理なのではないかと思う。そもそも、なくすと言うのは、結局殺すと言うのとたいして意味合いは変わらない。どころか、殺すと言うのも、結果論から言えば、エルフ自体をなくしているのだから、たいしてどころか、まったくと言っていいほど、変わりはない。


 その概ねを、旨を、聖剣にわかりやすく、なおかつ優しく伝えると、やはり渋る。うーむうーむうーむと三十回くらい唸ると、泣きそうになっていた。いやいやおい、何でだよ。


「その……、何というか、やはり……、殺すしか方法はないのでしょうか……?」


 俺がエルフを殺したくないのと同様、彼女だって、聖剣だって、そりゃあエルフを殺したくないだろう。何よりも、彼女自身が嫌であるから、そんなことを考えていたのだろう。そんな、頭の悪いことを、考えていたのだろう。


「いや、なくす……。その方法、ありなのかもしれない」


 話の内容がわからなかったのか、そもそもそんなキャラだからなのか、まったく話に入ってこなかったアヴァロンだったが、急に口を開いたかと思うと、今俺が否定したことを、肯定でもするかのような言葉を、放った。


「ありかもしれない、って、どういうことだ?」

「なくす、というのは、日本語的にはおかしいのかもしれないけれど、そうなんだよ、根絶やしにするんだよ。エルフと言う概念を、根本的になくす。殺すではなく、なくす」


 だから、殺すとなくす、いったい、何処がどう違うのか。そもそもそんなところが、俺はわからなかった。


「つまり、あれだよ」


 人差し指をピンと立て、俺のほうを向きニヤリと不敵な笑みを浮かべると。






「エルフをみな、人間にするのさ──」






 なんて、突拍子もない、意味のわからないことを、呟いたのであった……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ