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きみと出会わぬ異世界  作者: めあり
第三章 巡り廻る景色の中で
36/45

やがて全てを知る勇者は、雑談をしている場合ではない。

35話。

 前回のあらすじ。


 幼女が仲間になった!


 ◇◆◇


 さて。

 幼女ふたりを仲間にした俺は何を思ったか。


 …………。


 簡単な話だ。


「名前──どうしようか……」


 この目の前の銀髪美幼女。こいつの名前を考えないといけない。なんせ、名前も、住所も、何故ここにいるのかさえ、わからないのだから。


 いつまでも、「おい」とか、「お前」とか、熟年夫婦のような呼びかただと嫌だしな。


 しかしまあ、正直言うと、俺のネーミングセンスは皆無なので(どれくらいかと言うと、猫の名前をタマとか食べ物の名前にしちゃうレベル)あとは──


「聖剣、全部任せた」


 ポンッ、と。金髪幼女の肩に手を乗せ、最高の笑顔で言う。


「えぇ、私ですかっ!?」


 なんて言って。

 ムムムと唸って。





「──ポチ……とか…………?」





 いやいや、ペットかよ。


 …………たしかに、幼女がペットとか最っ高に燃えて萌えるシチュエーションかもしれないけれど、しかしまあ、それはアウトだな。

 ちゅうか、こいつのネーミングセンスって、俺以下じゃねぇのか?


「銀髪でポチはないね。せめてタマにして」


 みたいな。

 銀髪美幼女は言った。


 いやいや、タマでいいのかよ。


「なんつーか、もうちょっとマシで、なおかつ呼びやすくて、おまけに可愛い名前はないのだろうか」


 まあ、最後のはなくてもいいとして。


 さすがに異世界だからと言って、『ポチ』や『タマ』なんていう名前では呼びたくないし、だからと言って、呼びにくいのは嫌だしな。



「かかっ、よく言うわい、お前様。自分は考えずに、人に任せる気なのかのぉ」



 まるで、どこかの金髪吸血鬼奴隷幼女の如く、そんな口調で、聖剣は言った。


「ど、どした? 聖剣」


 急に口調が変わった聖剣に、俺は尋ねる。


 そういえば、すごく関係ないことなんだけれど、『尋』ってエロいよね。どこがって、そりゃあ字的に。真ん中がエロだから。


「いやいや、大したことじゃあないんですけれど、なんというか、似てません、あいつと私」


 おい、あいつ呼ばわりなのかよ。


「似てるって、どこが?」


「ほら、幼女のところとか、金髪のところとか」


「それ見た目の話じゃねぇか。中身は正反対だろ、お前とあの娘は。ちゅうか、似てるところそれだけかよ」


 いやいやいや!!


 なんて、幼女は全力で、手をブンブンさせながら、否定する。


「見た目超重要ですよ!! だって、金髪の幼女なんて、私の唯一の個性なんですよ!! それをにっくきハートアンダーブレードだとかなんだかに取られてしまって。これはもう警察に訴えてもいいレベル!!」


 いやいやいや!!


 今度は俺が全力で否定する番である。


「見た目云々より、お前には敬語とかいういい個性が残ってんじゃねぇか。つか、超人気小説の登場人物の名前をそのまま持ってくんな! 挙句の果てに、にっくきとか言うな! どっちかと言うと、いやいや、どっちかと言わないでも、悪いのはお前だ!」


 お前と言うか、作者だ!


「むむむ、そうは言いますけれど、敬語キャラってもういるじゃないですか、赤城南乃花とか」


 金髪美幼女は、俺の彼女の名前を出した。


「あれ、俺、南乃花の名前お前に言ってたっけ?」


「あ」


 しまった、とでも言いたげな顔で、手で口を塞ぐ。


「ああ、いやごめんなさい。今のはなんというか──そう、言葉の綾です! いやぁ、おにぃちゃんの彼女さんは、南乃花さんて言うんですかぁ……知らなかったなぁ、初耳だなぁ……あはは」


 ──苦笑。

 無理がある。


「しかしまあ、南乃花の名前を何処で知ったにせよ、俺には関係ないし、別にお前が知ってても何の問題もないんだがな」


 むしろ、知っていた方が良いのかもしれない。

 言う手間も省けたし。


「ところで──おにぃちゃん」


 コホン、と可愛く咳払いをし、幼女は呼ぶ。


「ん?」


 俺はそれになんとなく反応する。


「結局、一話丸々使って、銀髪美幼女の名前、決まってませんよ?」


「あ」


 忘れてたぁぁぁ!!


「ちゅうかそれ、どれもこれもそれも、お前の所為じゃねぇか!!」


 お前と言うか、作者の所為。


「いやいやそれは、不意に、唐突に、ふとした瞬間に、思いついたことなんです!! 不可抗力だ!!」


 言ってる意味がいまいちよくわからないけれど、そういうことなんだろう(どういうこと)。


「あ、それはもう心配いらないよ、キスショットと変態勇者」


 それこそ、不意に、唐突に、銀髪美幼女は言う。


 さっきまで空気同然だったけれど、それは気にしてはいないのか、いつものジト目で、すまし顔で、俺たちを見る。


 ちゅうか酷くね、俺。なんで変態勇者なんだよ、否定はしないけどさ。あと、超人気小説の名前は出すなと言っただろ!


「もう──名前、思い出しちゃったから」


 それでもやはりすまし顔。


 いつ思い出したのかは知らないけれど、俺と聖剣との雑談してるときにでも思い出したのだろう。


 まあしかし、ここで名前を思い出せたのは良かったなとは思うけれど──



「私の名前は──『アヴァロン』……だ」



 すっげぇ言いにくそうな名前だな……。

次回は超本気出すから

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