子連れ勇者、異世界(のような星)にて。
33話!
幼女パンツ!
「私の名前は──聖剣エクス・カリバー。もちろん、あなたが使っていた聖剣ではありません。『本物の』聖剣エクス・カリバーです!」
無い胸を張って、声高らかに、そう言った。
「…………」
まあ、別に。
驚かなかったと言えば嘘になるのだけれど。
──しかし。
「どういうこと……?」
と。
そう言うことしかできなかった。
頭が追いつかなくて、目の前の幼女はいったい何を言っているのか、ということがわからなかった。
わからなくて、困惑していた。
だから、驚かなかったというわけではないのだが、しかし、驚いたというわけでもない。
微妙、である。
まあ。
「お前の名前は聖剣エクス・カリバーということに関しては、なんとかわかった」
その辺もよくわからないのだけれど。
あの彼女の発言の中で、なんとかわかったのはこれだけだから、とりあえずわかったことにしておくというだけだ。
つまり、本質的にはなんにもわかっちゃあいない。
「えっと……じゃあ、どこがわからなかったんですか?」
顎に手を当て、考える素振りをして、聖剣は問う。
「いやいや」
むしろ、今の言葉を完全に理解した人がいるのなら、出てきてほしい。
出てきてもらって、尊敬して、崇めて、サイン貰っちゃうレベル。
「お前、『本物の』聖剣って言っただろう? それの意味がまったくもって、どう考えてもわからないんだ」
もし、こいつが本物だとしたのならば。
俺が今まで使ってきた、一緒に戦ってきたのは、『偽物の』聖剣エクス・カリバーとでも言いたいのか?
それは、たいへんふざけた話だ。ふざけすぎて、鼻血が出そう。
「あの、その前にいいですか……?」
言って、小さく手をあげる。
「ん、どした?」
このまま喋り続けるのもいいんですけれど、と。前置きを入れて。
「座っていいですか?」
「俺に訊くなっ!」
なんかすげぇ深刻な顔だなって思ったら、そんなことかよ! 座れよ! 誰も止めねぇよ!
「ほら、私。立ってたら変かなって思いまして」
だって、考えてみてください?
なんて言って、幼女は話を続ける。
「路地裏に、立ったまま話をする幼女と、座ってそれを聞く男っ! どう考えてもおかしい!」
どう考えてもおかしいわけではないのだけれど、彼女は彼女なりにプライドというか、意地があるのだろう。と、勝手に理解した俺であった。
ていうかここ、路地裏だったんだな。まったく描写されてなかったから気づかなかったぜっ!
「まあ、座りますね」
言って、その場に座る。体育座りだ。
「おいちょっと待て」
「…………ほにょ?」
いや、なにそのかわいい声。これが幼女特有のかわいさっ! あぁ、だめだ。鼻血出そう。
「いやいや」
そんな話じゃなかったな。
一々仕草がかわいすぎて、忘れちゃうところだったぜ!
「パンツ見せんなや」
聖剣でもパンツ履いてるんだなー、なんて、ちょっと関心してしまったじゃねぇか。どうしてくれよう、鼻血出ちまったよ。
「つか、なんだよそのしましまパンツ」
まるで見せびらかしているように、パンツが見える。もう本物とか偽物とか、そんなもの吹っ飛んでしまいそうな、破壊力であった。
なぜ、しましまチョイスなのか。是非選んだ人と握手したい。『いい趣味してますね〜』って。
「あぁ、見せてるんですよ」
なんて、はにかみながら。
その最高の笑顔は最強なんだけれど……
「ビッチかよ」
素直に出た感想が、それだった。
◇◆◇
「で、なんの話だっけ?」
「しましまパンツはどこで手に入れたのかって話ですよ、忘れたんですか?」
「あぁ、そうかそうか。忘れてたよ……ってちっがうから!」
なんでそうさらっと嘘ついちゃうかなぁ。妖怪の仕業かな? 古いか、古いな。
「まあ」
しましまパンツ、どこで手に入れたのか、というのは気になるな。今度赤城さんに……………
「…………」
忘れてた、と言えば嘘になるが、完全に頭からなかった。除外されていて、まるで無かったことにされていた。いや、それは忘れていたと言うのか。
ここに来た理由で、忘れちゃいけないことなのに。忘れていた。
「はあ……」
幼女は、ため息をつくと。
「なんてアホみたいな顔してるんですか。馬鹿なんですか? 死んじゃうんですか? なんのために私がいると思ってるのですか」
言って、笑いながら。
「殺りましょう、エルフを」
忘れちゃいけない記憶だから。彼女と共に過ごした時間、それは、なくしちゃいけないものだから。
だから、俺は、俺たちは戦うのだ。いくら無理な試練でも、なんとかなる。俺とこいつなら、世界だって変えられる。
柄にもなく、そんなことを思ってしまった。
本心で、まだ会って一日も経ってないというのに。
「まあ、本物とか偽物とかの話はまた今度ですね」
お話は飽きましたし、と付け足す。
「飽きたって、早すぎだろ……」
本当はもっと知りたいのだけれど、今日はしましまパンツが見れたしもう満足だ。これ以上話はしなくていいかな。
「じゃあ、行きましょうか」
幼女は言い、立ち上がる。
そうだな、と、俺も立ち上がり、歩こうとしたときだ。
ツンツン。
なにかが、俺の袖を引っ張った。
「ん?」
向くと、そこには銀髪美幼女が!
身長は聖剣より小さく、顔は幼いのだが、その特徴的なジト目によって、ちょっと大人びて見えた。
まあ、あくまでもそう感じただけだから。別に、本当に大人びて見えるというわけでもない。
「どうしたの?」
問うと、そのジト目を俺に向け、答えた。
「──私も連れてって」
これから週一投稿で、毎週水曜日、22時すぎごろ投稿いたします!
鼻血が出そうだったのは、これを書いていたときの私ですw




