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きみと出会わぬ異世界  作者: めあり
第二章 番外編
31/45

あまり捻らない、無難な初めて。

番外編!

ということで、赤城さんとの初デートです。

久しぶりに赤城さん書いた!

これは、まだ悠莉がデレる前のお話です。

「うぅ……」


 目が覚める。

 時計を見ると、すでに10時を回っていた。

 約束の時間は11時。


「やべ……」


 まだ完全に起きていない脳を働かせ、今からのタイムスケジュールを組む。


「間に合うかな……」


 なんとか、間に合いそうなんだけど──


「急げ俺!」


 ドタドタと、騒がしく階段を降りてゆく。


「おはよ、悠莉」


 朝の挨拶を適当に済ませ、顔を洗う。そうすることによって、潰れそうだった俺の目は完全に開き、そして、覚醒する。


「今日も一日頑張るぞい!」


 どこかで聞いたことのあるセリフを言い、気合を入れる。


「朝ごはんは──」


 ブレックファーストを食べてる時間はないな。


「よし!」


 歯ブラシを取り、歯を磨く。と同時に、寝癖を直していく。俺の寝癖はひどいもので、直すのに手間と時間がかかるから、急いでいるときには面倒だ。


 あらかた寝癖を直したら、自室に戻り、服を着る。服はあらかじめ決めていたので、すぐに着ることができた。


「じゃ、行ってくる!」

「ん、どこにいくの?」


 むしゃむしゃと、のんびりとブレックファーストを食べていた悠莉が訊いてくる。

 珍しいな。いつもなら「ん、いってら」と、冷たい反応で終わるはずなんだが。


「ちょっと出掛けるだけだ。夕方には帰ってくる!」


 俺はそう言って、家を出る。

 現在時刻は10時45分。待ち合わせ場所は最寄りの駅。


「ギリだな……」


 なんとか間に合いそうなので、一旦走るのをやめた。疲れた。たった十秒しか走ってないが、かなり疲れた。聖剣との修行なんてまだ始まったばっかりだし、そんなすぐに体力なんてつかないか。


「あ、やっぱりこれ間に合わねぇ……」


 そう思った瞬間、俺の足はもう、とっくに、動いていた。

 これが、火事場の馬鹿力というものなのだろうか。駅に着くまで、疲れなど感じなかった。疲れなど感じず、ただ、「遅れたら、彼女を待てせてしまう」ということだけを考えて。

 気づいたら、駅にいた。無我夢中で走っていたら、いつの間にか着いていた。

 時計に目をやる。10時58分。


「ギ、ギリセーフ……」


 今にも倒れそうだったが、歩いた。


「あ、いた」


 そこには、できたばかりの彼女がいた。


 赤城南乃花。

 告白されるまでは眼中にない相手だったが、こう改めて見ると、可愛い。いや、改めて見なくても可愛い。

 どこか儚げな雰囲気を残しながら、彼女は立っていた。さっきからずっと、時間を気にしているようだが──


「あ──」


 俺を待っていたのか。やべぇ、忘れるとこだった。あまりにも可愛くて、忘れるところだった。


「ごめん、お待たせ」


 まるで今、急いで来たようなふりをして、息を切らして、俺は彼女に言う。


「あ、いえ、別にいいですよ……私も今来たばかりですし」


 嘘、と分かっているのだが、それを言うのもアレだろう。


「じゃ、じゃあ──どこに行こうか?」


 もちろん、俺はどこに行こうか、というのは考えている。とっくの昔に。あれは、中二のころだっただろうか──

『彼女ができたらしたいことノート』の一番はじめのページ。『初デートで行きたいところベストテン』に載っていた部分を、無難にチョイスしてきた。あくまでも無難に、なので、彼女が行きたいところがあればそちらにする、という感じだ。


「う〜ん……」


 と、顎に手をやりうんうん唸っていたが、数秒後。


「任せます!」


 そう、満面な笑みで言われる。可愛いなおい。


「えっと……じゃあ、無難なところでいいのなら、任されます!」


 二人揃って、敬礼をする。

 あぁ、これがカップルなのかと。相手がこの人で良かったと。幸せを噛み締めて、そして、彼女の手を引いた。


「行こうか」


 俺はそう言う。彼女は少し戸惑った様子だったが、すぐに、


「はい!」


 と。またもや満面の笑みで、そう返事をした。


 ◇◆◇


 結局、来たのは大きなショッピングモールだった。「うっわ、普通!」とか言われそうだが、これでも『初デートで行きたいところベストテン』の第三位に入っているのだから。そう、だからこれはしょうがないのだ。昔の俺は、それを望んでいたのだから。


 さて、ここで何をするのか──いやまあ、そりゃショッピングモールなのだから、ショッピングをするわけだが。何をショッピングするのかというのが大事なことである。

 もちろん、俺もショッピングをしたい。滅多に来ることないしな、こんなところ。それでも、彼女の行きたいところを優先して、タイミングを見計らい、「ちょっと俺、あそこ行きたいな〜」と言うのがグッド……らしい。たぶん。『彼女ができたらしたいことノート』に書いてあったのだから間違いない。まあ、それ書いたの俺なんですけどねぇ……ハッハッハ!


 そういえば、このノートの最後にはこう書いてあった。


 『まあこんなこと書いても、俺には彼女なんてできるわけないけどな! 一生独身でいいわい!』


 と。


 中二のころからこんなことを思っていたなんて、俺ってば、現実見すぎ!


 と。


 思わず、涙を流しそうになる。

 しかし、それをこらえて、隣を見る。

 隣にはなんと美少女が!


 ハハッ! これ俺の彼女なんだぜ、笑っちゃうだろ!


 そう思うと、嬉しすぎて本当に笑ってしまいそうだったので、すぐさま前を向く。


「ん? どうしたのですか?」

「あ、いや、なんでもない」


 なんでもないわけではないのだが、ここで言うことでもないだろう。


「ね、ねぇ……赤城さんは何色が好きなの?」


 自分で言って、気づく。俺は小学生なのか、と。

いやだって、会話が途切れるのも嫌だし、でも、話題が思いつかなかったからしょうがないだろ!


 と、見えない誰かに言い訳をする如く、俺は慌てる。


「えっと……私は赤が好きですかねぇ」


 なんと。名前とピッタリではないか。

 赤城さんは赤が好きって、これはもう運命だろ。

 と、勝手に一人で感激していると、彼女もまた、俺と同じような質問をしてきた。


「じゃあ、千鶴くんは四季でどれが好きですか?」


 まるで、私も緊張してますと言いたげな態度で。モジモジと、顔を真っ赤にして、訊いてきた。


「えっと……」


 正直、そんなことは考えたことがなかった。

 まあ、敢えて言うのなら──


「春……かな……」

「へぇ──なんでです?」


 なんで……か。

 ここで「なんとなく」と答えると殴られそうなので、


「まあ……ぼ〜とできるから……」


 と、なんともどうでもいい理由だが。


「へぇ〜」


 彼女は、目を輝かせながら俺を見ていた。これでよかったのな。


 ◇◆◇


「重い……」


 いやまあ、たしかに。荷物は俺が全部持つよ! と言ったのだが、ここまで買うとは思わなかった。


「ちょっと使いすぎちゃったかな〜」


 まるで、「テヘペロッ!」とでも言いたげな顔で、こちらを見る。


「はあ………」


 思わず、ため息が出てしまう。デート中にため息が出るのは行けない気がするが、これはしょうがないのではないかと思う。


「何個か持ちますよ」


 と言われるが、男に二言はない。俺が全部持つと言ったのだから、重くても彼女には持たせない。意地でも持たせないぜ!


 だがしかし──


「もう! 貸してください!」


 そう言いながら、彼女は俺が持っていた荷物を、半分ほど取る。


「こうしないと、手が繋げないじゃないですか……」


 顔を赤く染め、彼女は言う。


 ──あぁ、可愛いな。


 本心からそう思った。


 そんなときだった。


「あれ、あの子。迷子じゃないですかね?」


 彼女の指さすほうを見ると、小さな男の子が、キョロキョロしながらうろうろしていた。


「僕、どうしたの? お父さんやお母さんは?」


 気づいた時にはもう、赤城さんは子供のところへ言っていた。凄まじい行動力。

 笑顔で話しかける赤城さんに安心したのか、子供は泣き出してしまった。


「ママぁがぁぁいなくなったぁぁぁ」


 そして、僕と彼女は、この子は迷子なのだと確信する。


「どうします? 千鶴くん」

「とりあえず、迷子センターに連れていこう。お母さん、いるかもだし」

「だね」


 そう決まったら、すぐに俺達は歩き出す。


「待っててね〜もうちょっとしたら、ママに会えるから」


 行く途中、赤城さんは何度も何度も子供に話しかけていた。

 さすが女子、なのか。さすが赤城さん、なのかわからないが、女子ってすごいって思いました(小並感)


「あの、迷子みたいなんですけど……」


 迷子センターに着き、お姉さんに俺は言う。

 するとどこからか、この子の名前を呼ぶ声が聞こえた。


「たけしぃぃ! あんたどこ行ってたのよ!」


 母親も半分泣きながら、子供に抱きつく。

 よかった、と。素直に喜ぶことができた。こんなのを見ていると、俺まで泣きそうになってくる。


「ほんっとうに! ありがとうございました!」


 母親に深々と頭を下げられる。


「い、いえ……私たちは、この子をここまで連れてきただけですから……」


 彼女はそう言うが、もうちょっと誇ってもいいだろう。この人は、それ相応のことをしたのだから。


「ありがとうございました〜」


 帰り、お礼ということで、アイスを奢ってもらった。それも、かなり高級のを。


「おいしいね〜」

「ほんとにおいしいですね〜」


 ニコニコと、笑いながら言う。


「私たちも、子供ほしいですね〜」

「…………ブホッ!」


 あまりに衝撃過ぎた発言に、俺はむせてしまう。何言っとんだ、こら。


「フフフ、冗談ですよ〜」


 これまたニコニコと、笑いながら、俺を見る彼女であった。

 まあ、可愛いからいいか。

やっぱり、こっちのほうが書いてて楽しいw

そんなわけで、次回から第三章です。

果たして、火憐はどうなるのか!?

お楽しみに! というと、プレッシャーがすごいので、あまり期待をせず、待っていただけたらなと思います。

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