最後の宴は、華やかに。
短いです。
私たちはもう友達だ──と、彼女は言った。
大切な友達。
親友。
そんなものが、この世に存在するのかと。
そんなものは、ただの幻想ではないかと。
昔の俺は、そう思っていた。
しかし、彼女はきっぱりと言う。
私たちは親友、と。
だから俺は、少し頼ってみたくなってしまった。
大切な友達を──親友を。
◇◆◇
「聖剣」
言うと、日和桜のほうに向けていた視線を首ごと巡らせて、俺の次の言葉を目線だけで促した。
「何年で、フルパワーだ?」
「へぇ──」
正直、聖剣のフルパワーでないと、青薔薇に勝てないと言うことは明確である。もしかしたら、聖剣が本気を出しても勝てない相手かもしれないけれど、しかし、このままいつも通り寿命を二年だけ、なんて言う選択肢は既にない。
「まあ……、ざっと百三十年と言ったところか……」
正確な数字は分からないけどね、と続けた。
「ひゃ、百三十年!?」
驚き。
いや、絶望なのだろうか。
「じゃ、じゃあ訊くが、まだ俺に寿命が百三十年残っているのか……?」
「あぁ、それは問題ない。余裕だ、余裕すぎる」
今まで使ってきた寿命なんて数えたこともないので、分からない。
残り、あとどれだけ俺が生きていられるのか、分からない。
でも、青薔薇を倒す程度には大丈夫。
寿命が尽きなければ、死ぬこともない。
問題なのは……。
「日和さん、大丈夫なのか?」
何まで言わなかったが、流石日和桜と言ったところなのだろうか。
「大丈夫。何にも問題はいらないし、心配だってしなくていい」
と、すまし顔で応えた。
「じゃあ、聖剣」
呼ぶと、聖剣はひとつ息を吐き、椅子から立ち上がる。
「行くぞ──青薔薇のもとに」
◇◆◇
青薔薇は、いた。
「やぁ〜……待っていたよ。チヅルくん」
不気味な笑顔を浮かべて。
仁王立ちで──そこに立っていた。
どこにも行かずに。
俺の家で、俺の帰りを待っていたのだ。
「青薔薇……」
殺意なんてものは、もう湧いているどころか、むしろ、こいつには殺意しかない。こいつに、それ以上もそれ以下も、思うところなんてない。
しかし、殺意があるからと言って、勝てるかどうか、と言うのは別問題。
それでも、やらなきゃいけないのは確か。
俺は決めたんだ。絶対にこいつを殺すと。
俺のことを親友と言ってくれた──日和桜のためにも。
「あれ……?」
しかしその、肝心の日和桜の姿は、何処にも見えなかった。さっきまで俺の隣にいたはずなのに、いつの間にか、姿を晦ましていた。
「な、なぁ……、日和さんは?」
『心配するな』とは言われたが、この場合、どうやっても心配しないわけにもいかないので、まるで代わりとして隣にいますよと言わんばかりにいる聖剣に、訊いた。
「ま、そのうち来るよ」
そう、含み入りの笑いを俺に向け答える。
「大丈夫なのか……?」
正直、不安しかない。いや、殺意はあるけれど。
でも──やるしかないのだ。
俺はこいつを、倒す。殺す。
絶対に死なない。死んでたまるか。
だから、俺は叫んだ。
「聖剣! 百三十年だ!」




