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きみと出会わぬ異世界  作者: めあり
第二章 いつかあなたと見た世界
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最後の宴は、華やかに。

短いです。

 私たちはもう友達だ──と、彼女は言った。

 大切な友達。


 親友。


 そんなものが、この世に存在するのかと。

 そんなものは、ただの幻想ではないかと。

 昔の俺は、そう思っていた。

 しかし、彼女はきっぱりと言う。

 私たちは親友、と。


 だから俺は、少し頼ってみたくなってしまった。

 大切な友達を──親友・・を。


 ◇◆◇


「聖剣」


 言うと、日和桜のほうに向けていた視線を首ごと巡らせて、俺の次の言葉を目線だけで促した。


「何年で、フルパワーだ?」


「へぇ──」


 正直、聖剣のフルパワーでないと、青薔薇に勝てないと言うことは明確である。もしかしたら、聖剣が本気を出しても勝てない相手かもしれないけれど、しかし、このままいつも通り寿命を二年だけ、なんて言う選択肢は既にない。


「まあ……、ざっと百三十年・・・・と言ったところか……」


 正確な数字は分からないけどね、と続けた。


「ひゃ、百三十年!?」


 驚き。

 いや、絶望なのだろうか。


「じゃ、じゃあ訊くが、まだ俺に寿命が百三十年残っているのか……?」

「あぁ、それは問題ない。余裕だ、余裕すぎる」


 今まで使ってきた寿命なんて数えたこともないので、分からない。

 残り、あとどれだけ俺が生きていられるのか、分からない。


 でも、青薔薇を倒す程度には大丈夫。

 寿命が尽きなければ、死ぬこともない。


 問題なのは……。


「日和さん、大丈夫なのか?」


 何まで言わなかったが、流石日和桜と言ったところなのだろうか。


「大丈夫。何にも問題はいらないし、心配だってしなくていい」


 と、すまし顔で応えた。


「じゃあ、聖剣」


 呼ぶと、聖剣はひとつ息を吐き、椅子から立ち上がる。


「行くぞ──青薔薇のもとに」


 ◇◆◇


 青薔薇は、いた。


「やぁ〜……待っていたよ。チヅルくん」


 不気味な笑顔を浮かべて。

 仁王立ちで──そこに立っていた。

 どこにも行かずに。

 俺の家で、俺の帰りを待っていたのだ。


「青薔薇……」


 殺意なんてものは、もう湧いているどころか、むしろ、こいつには殺意しかない。こいつに、それ以上もそれ以下も、思うところなんてない。

 しかし、殺意があるからと言って、勝てるかどうか、と言うのは別問題。

 それでも、やらなきゃいけないのは確か。


 俺は決めたんだ。絶対にこいつを殺すと。

 俺のことを親友と言ってくれた──日和桜のためにも。


「あれ……?」


 しかしその、肝心の日和桜の姿は、何処にも見えなかった。さっきまで俺の隣にいたはずなのに、いつの間にか、姿を晦ましていた。


「な、なぁ……、日和さんは?」


『心配するな』とは言われたが、この場合、どうやっても心配しないわけにもいかないので、まるで代わりとして隣にいますよと言わんばかりにいる聖剣に、訊いた。


「ま、そのうち来るよ」


 そう、含み入りの笑いを俺に向け答える。


「大丈夫なのか……?」


 正直、不安しかない。いや、殺意はあるけれど。

 でも──やるしかないのだ。

 俺はこいつを、倒す。殺す。

 絶対に死なない。死んでたまるか。


 だから、俺は叫んだ。






「聖剣! 百三十年だ!」






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