そして彼らは、一歩を踏み出そうとする。
はいはーい、こんばんは。天りあです。
ついに、イチャイチャ終了です!
「うぅ…吐きそう…」
と、左手で口を抑える。
「どんだけ人ごみが嫌いなんですか…大丈夫です?」
「わりと大丈夫じゃない」
「なら……帰ります?」
──いや、
「それはない」
まだ──まだ彼女の、心からの笑顔を見ていない。
「まだなにも食べてないしな」
「あなた食いしん坊キャラじゃないでしょうに…」
◆◇◆
「あ」
「どうしました?」
「りんご飴」
「はぁ…食べるんです?」
「だから言ったろ。まだなにも食べてないって」
「本当に食べるんですね…」
「当たり前だ。俺は嘘はつかないからな」
「いや、ついこの前だって嘘つきましたよね?」
「え」
「ミスドのフレンチクルーラー」
「いや、あれはただ単に間違えただけだ」
「だからと言って、なんでポンデリングなんですか?普通間違えます?」
「あぁ、もう、わかった!りんご飴奢ってやるから!」
「え、うそ?やった!」
赤城さんチョロすぎ。チョロインかよ。
「あざーしたー」
「おいしいですねりんご飴」
「う、うん」
りんご飴、はじめて食べたが、なんか思ってたのと違う。たしかに、おいしいのはおいしいが…まぁ、いいか。
「あ、射的やってますよ」
「お、ほんとだ」
「あ、このクマさんかわいい〜」
もしかして、これって…
「千鶴くん」
「え、あ、はい」
「取って?」
と、上目遣いで言う。くっ!かわいい!天使だ!いや、女神だ!いや、赤城さんだ!
「任せておけ」
だから、そんな赤城さんの頼みだから。こんなに自信満々に言う。だがしかし、射的は未経験である。
「よっしゃ!」
結局、当たったのは15回目。下手すぎだろ。
「わ〜い、やった〜!」
と、くまのぬいぐるみを抱く赤城さん。まぁ、かわいいしいいか。
結論。かわいいは正義。
◆◇◆
「あぁ〜もう、お腹いっぱいですぅ」
「そりゃあれだけ食べればな」
俺より食ってるからな。
「そういえば千鶴くん」
「ん?」
「あと30分で花火が上がるんですよ」
「ん、あ、まぁ、そうか。こんな大きな祭りだったら花火も上がるか」
「だから、見やすいところに移動したいんですけど」
「あぁ、別に構わないぞ」
「じゃあっ!行きましょうっ!」
と、無邪気に笑う彼女。やっぱり、かわいい。
「へぇ〜よくこんなところ見つけたな」
まったく人がいないところに来た。もし、これで花火がよく見れたら最高だ。
「まぁ、下見しましたから」
「なにもそこまで…」
「いえ、しなくちゃいけないんです」
「え?なんで?」
「それは……………」
───ヒュ〜〜……ドォンッ
「え?なんて?」
彼女はなにか言った。しかし、ちょうど上がった花火の音で聞こえなかった。
「あぁ!もう!」
と、彼女は言うと、
「え」
胸ぐらを掴まれた。そのまま引っ張られる。え?なに?カツアゲ?
そして彼女は、俺に顔を近づけた。
「なにしてっ…ん!」
驚くほど柔らかな感触が伝わってくる。キスをされた。ファーストキスである。いままで誰も俺にしてくれなかったキスを、赤城さんはしてくれた。そんなことを思うと、自然と涙が出てくる。
「んっ!えっ!どうしたんですかっ!?」
驚いたのか、唇を離し、心配そうに聞いてくる。
「いや、ごめん。なんでもないんだ。でも、」
───この人は、こんな俺のことを特別だと思ってくれた。だから、
「ありがとう」
俺は笑顔でそう言った。
「ほんとになんで急に泣くんですか〜」
花火もすべて終わり、近くにあったベンチに座る。
「いや、まぁ、嬉しくて…」
「本当に涙もろいですね、火憐くんって」
え?
「火憐?」
「あ、いえ…キスしたし、もういいかなって」
「まぁ、そうだな。南乃花…さん?ちゃん?」
「普通に南乃花でいいんじゃないですか?」
「そうだな、南乃花」
「ふふ、なんだか照れますね」
「キスもしたし、その先もヤっちゃう?」
「私としてはウェルカムなんですが」
「あ、いや、ごめん。またの機会に」
「はぁ、まったく…相変わらずヘタレですね」
「人間、そう簡単には変わらないだろ」
「まぁ、それもそうですね」
こうして、俺と彼女の最高の夏休みは終わった。いや、リア充すぎだろ、俺。
いや、だから、こんな彼女欲しい。
次回、このシリーズで1番書きたかったところです。乞うご期待!あ、やっぱ、そんな期待しないでください!




