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時祷書Ⅰ/ハインネミア歴927年秋の第2月
ハインネミア暦927年秋の第2月。
私は人生の中で、この年月を忘れることはないだろう。
人生の醍醐味は出会いに尽きる、というのが私の一家言だが、この時の出会いはまさに私の人生に大いなる変革をもたらし、豊かにした。
この世界を豊かにする…そう漠然と願っていた私にとって、この出会いは突然すぎて、鮮烈すぎて。
今思い出しても笑みがこぼれてしまう。ああ、この世界は神に愛されているのだと。
よって、後世に生きるわが子孫に向けて、この書を残す。
おそらくは敬虔なるネミア信徒である我が子孫。
お前たちが生きるこの世界は、夢と希望と驚きに満ちている。
私がこの年に出会ったのは。
この世界で、最後の魔法使いだった。