1/21
序.はじまりはじまり
昔々あるところに、始末屋と呼ばれる者たちがいた。
いわゆる、乱波とか透波とか、忍とか呼ばれていた者たちのことである。
彼らは瑞穂の闇に生き、闇に消え、諜報、暗殺、偸盗、誘拐と、とかく人の生き血を啜るような所業を繰り返していた。
さて、ところでこれは、そんな始末屋を中途で挫折した男の噺である。
男の名は吉村七兵衛。かつて始末屋の世にその悪名を轟かせた男であったが、今は瑞穂国の諸国を旅し、自由気ままなよろず屋業を営んでいた。
その売り文句はただ一つ。
「あなたの不幸、引き取ります」