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第十波「人魔激突の聖域破壊」

 その日の空は青かった。

 浜と、陽の白さが、目には痛かったが、気分そのものはすこぶる爽快ではあった。


 ラジオでは午後から雪が降るということだったが、それが信じられない程度には快晴だった。


「こんなクソ寒い年の瀬によく外にいられるわね、あんた」


 学生寮の屋上に立つ切絵が振り向くと、いつものように仏頂面でふてぶてしい美少女が立っていた。


 片手にはクリームたっぷり載せたコーヒーを手にしている。腰に巻くようにさせた手で、ふくらみを支えるようにしていて、今日も無意味に偉そうだった。


「よー、元気してたか?」

 崩れた相好を振り向けた切絵を半目で見つめ、突き刺したストローをくわえている。


「どうだ? センセのギャラリー。居心地良いか?」

「お互い不干渉を貫いてるウチはね。つか、あいつ最近家にいないわよ」

「あー、そーいや『昔の先輩と打ち合わせするっつってたな」


 それでもほぼ見ず知らずの、しかもそれとなく険悪な関係の相手に一軒丸々預ける辺り、剛毅と言うか、自分に無関心と言うか。


「しっかし今日もきれいな空と海だなー」

 上半身を反らして伸びながら言う切絵に、

 堂々と、臆面なく、揺らぐことなく、

 確信を込めた、普段どおりの調子で、


「? 私の方がきれいよ」


 息を吸うように言った。

「…………真顔で母なる大自然と張り合うお前に、時々狂気を感じるよ」


 そう言って閉口する切絵に向けて「そういうあんたこそ」と天佳は返す。


「来る日も来る日も、『晴れだから今日は良くなりそう』って、正直おかしいよ」

「仕方ないだろ。実際晴れが続いてんだから」

「それにしたって、もう少し別のこと思うことはないわけ?」

「だってできるなら良いふうに思いたいでねーの」

 少なくとも、なんの感動を覚えないよりは。

 微苦笑する切絵に、天佳はじっと視線を送る。慌てて切絵は、表情を繕った。

 どうにも先日の『ベリアル』の一件以来、天佳の切絵に向ける目つきは鋭い。と言うより注意深く観察している。

 正体が完全に発覚した、ということではないだろうが、少なくとも、疑われている。

聞かれたら素直に答えるつもりだった。

 それでも、その素直になれるだけの心の準備は、必要だった。


 ――いけね。

 と。

 つい下がり気味になりつつある気分を持ち直し、


「いやそれにしてもいい天気だ!」


 と、ごまかすように言った瞬間、


 豪


 と、

 高温の熱源が、高速で二人の間を過ぎて行った。


 球形の火炎の弾だった。

 異色、という言葉どおり。

 顔の前を通り過ぎたそれは、くすんで黒みがかった青色をしていた。

 睦み合う二匹の毒蛇のように、あるいは幽界の灯火のように、陰影が美しく入り混じった色だった。


 鉄柵を抵抗なく突き抜ける。

 抜けた痕にはドロドロに融解したスチールの残骸。

 頭痛と吐き気を催す悪臭が、清浄な冬の空気を汚していく。


 二人が振り返る。

 屋上の扉は閉じている。隠れるスペースもない。


 黒焦げた地面の痕は一本、この攻撃の道のりを示すように引かれているが、それも半ばで、プッツリ途絶えている。


 驚き半分、怒り半分。

 そんな感じの天佳が、膝を折らずに紙コップを地面へと置きながら「ねぇ」と呼びかける。


「あんたの『いい天気』って、厄介ごとを召喚する呪文なの?」

「言いたいことは分かるけどその厄介ごと第一号のお前が言うな!」


 二人の足元に、独特の曲線が描かれる、刻印が浮かび上がる。

 

 馬と、人間。

 互いの横顔が一対になって、円形となったような『トライバル』。


「『セエレ』……ッ! ってことは、まさか!?」

「え? また『キャラバン』か?」


 切絵が問い終えるよりも素早く、天佳は切絵の肩を突き飛ばしていた。


 その刻印から、青色火炎球が再び吐き出される。


「火、火を使う力か!?」

「違う! 『セエレ』は空間移動! この刻印を介して物体や生物をジャンプさせることができるの!」

「じゃあこの火ナニ!?」

「その青くて暗いのは、『マルコキアス』! 組織のナンバー2よ!」

「そいつらの顔は!?」

「顔どころか名前すら知らないわよ! こちとら末端の美女なんだから」

「今その美女っての必要か!?」


 二発目を警戒する天佳たちの頭上で、一度打ち上がった炎が爆ぜる。

 榴弾の如く、小さく分離して散る火の玉が降り注ぎ、屋上を埋め尽くした。


「うああああっ!」


 爆風に揉まれて、切絵の身体は柵の外へと放り出された。


 ホテルを改装した五階立ての学生寮からまっすぐ転落する切絵は、ぐっと顔をしかめた。


「Mixong No.1×No.9……!」


 虚空、異形となって落ちて行く切絵は、そのまま空中で自身を制御すると、コンクリートの地面に手足をつけた。


「っ!」

 深い青みを帯びた煙を立ち上らせる屋上を見上げ、彼女の安否を探ろうとする。

そこに、


「あの娘は無事だ」


 男の声が、横合いから聞こえた。

 二十代半ばか三十代手前。ハンチング帽とロングコート。そして色の薄いサングラスで顔を覆っている。


 その両手には古めかしい、小さめの小手がはめられている。

 ぼんやりと、その上から浮かび上がる刻印。だがその色は、北国の湖のような、冷え冷えとして澄んだアイスブルーで、それが尋常な『トライバル』ではないことを示していた。

 狼の、横顔の『トライバル』。


「既に『セエレ』の空間に閉じ込めさせた」

「……誰だ、お前」

「こうして会うのは初めてか。私は新野。『キャラバン』副団長、あるいは……『マルコキアス』と言えば聞こえは良いか?」

 そう、つまらなさそうに男は名乗った。

 まるで、そんな自分が気に食わないという感じで、目をそらしたまま、苦虫を噛み潰すような表情だった。


 ――この男が?


 どことなく、投げやりで、物事のすべてにうんざりしているような、ふと目を離した隙に自殺していそうな、そんな雰囲気に抱かれている。

 先ほど披露された能力の激しさとはどことなく見合わない。

 だがその手に宿る輝きは、紛れもなく『トライバル』のものだった。


 ――だったら『セエレ』は……?


 切絵は彼を正視したまま、視覚以外の知覚を使って周囲を探る。

 だが人間の気配は目の前のそれだけだ。


「あとは『アヴァロン』船内に移動させるだけだ。が、お前がいると海を渡って追ってきそうなんでな。悪いが後顧の憂いを絶たせてもらうぞ、来栖切絵」


 こちらの正体は、この男に露見している。

 だが、問題はない。


 ――余計なことを言われる前に、この場で、この男を、


 ……首を振る。

 何故、閉じ込められた彼女を純粋に慮り、無事を願い、守りたいと思えないのか。

 そんな自分が嫌になる。


 改めて鎚を構える。

 男も、ゆっくりと身構えた。

 武の心得もなさそうな、隙だらけな構え。

 だがその隙を突けば逆襲されそうな、不気味さも秘めていた。

 数々の修羅場を巡ってきたような、鋭くこちらの隙を窺う視線が、印象的だった。


 だが相手も、うかつに飛び込んでいくことはできないのか。

 苛立たしげに眉をひそめながら、爪先で大地を小突いたりしている。


 その右腕が、ツイ、と持ち上がる。

 どこかで、犬の鳴き声がした。

 指を丸め固めて拳を作り、学生寮の白壁に、人馬の刻印が浮かぶその地点に、叩きつけられた。


 瞬間、切絵は己の側頭部に迫る熱を感知し、手にした鎚で薙いだ。

 壁から転移した攻撃は、『ソロモン』の軌道上にあって、叩いて潰される。


 それは、奇襲ではなかった。牽制や、目くらましですらなかった。

 ただ攻撃を仕掛ける。

 お前を殺すという宣言でしかなかった。


 射かけられた矢の如く、互いの距離を一気に詰める。


 横に殴りつけるのは鋼の鎚。

 それを屈んでかわす『マルコキアス』の帽子が、主人の身代わりを務めるように破れ飛んだ。


 懐に潜り込んだ彼は、拳を天に突き上げるように繰り出した。

 野獣の牙を想起させる残像を描く刻印の軌跡を、切絵はのけぞって回避し、次いで襲うストレートを、持ち上げた脚でガッチリと受け止める。


 人外の者となった切絵の、長身からの反撃のキックは、鋭く重いものとなった。

 当たれば首が飛びそうなその回し蹴りを、男は切絵の赤銅の腹を蹴って、後ろに飛んでかわした。


 その息は既に上がっているが、目の戦意は衰えていない。

 今のまま大ぶりな攻撃を仕掛けても、彼は意地でも避け続けるような気がした。


 ――だったら……


 そう断じた切絵は、ためらいもなく手の中の長物を敵へと投げつける。

 裏拳に弾かれ、回りながら宙を舞うそれが、


「Mixing No.9×No.X『ベリアル』……」


 切絵の言霊で、車輪の如く回るそれが、『マルコキアス』に暗示を垂れ流す。


「戦うな」と。


 ふと見上げた男は、それを視界に入れるなり両手をダラリと下げて肩を落とした。

 力なくうなだれる彼に、すかさず切絵は接近した。


 その刻印を肉体もろとも破壊する全力の正拳で、胴を突く。


 が、

 がしり

 と。


 狼の手甲が、それを掴んだ。

 自分の中に驚くという感情があったことを、切絵は他人事のように感じた。


「悪いが」


 と、男。

 受け止めたのとは逆の右手を、切絵の身の丈に合わせるように大きく振り上げていた。


「私にその類のは、効かん」


 爆撃が、顔面を襲う。

 青く、暗い炎が視界いっぱいを覆いこむ。

 鈍くも、声をあげることさえできない激しい痛み。今まであらゆる異能を修めた誰もが、彼に与えることさえできなかったものを、男はこの数分間の応酬だけでもたらした。


 ――この男に小細工は通用しない。

 あくまで正攻法での力押し。それしかないのだと痛感する。


「Mixing No.2『カイム』×No.3『フラウロス』!」


 再度の詠唱により、宙を回る槌は刻印の集合体に戻って二つに分離し、一方は縮小、一方は膨張する。一方は曲刀に、一方は槍に。


 切絵は、二メートルほどの高さを飛んだ。右手に槍を、左手に刀を捕まえ構える。


 そこからは、怒濤だった。

 右の槍が突き出て踊る。

 刃が縦横矛盾に暴れ狂う。


 最初は汗を滲ませながらも、苛烈な連撃を、二本の腕をフルに使って防御していた『マルコキアス』だったが、その手数の多さと速さに、対応し切れなくなっていった。


 そして伸びた鎖が輪になって男の首を、絡め取る。


「っ!?」


 とっさに彼は自分と鎖の狭間に左手を差し入れて緩衝材としたが、それでも鉄鎖の締め付けは、手首もろとも首の骨を ネジ切るほどの力が込められていた。


「……ッ! ……ッ! ……ッ!」


 それとは逆の手がカタカタと、音を立てて震えながらも拳を握る。

 だが震えは恐怖ではなく、輝きが薄れてゆくその目の中には、何かしらの覚悟を呑んだ色があった。


 そして男は、右の拳を鎖に叩きつけた。


 激しい爆発が起こり、幽玄の色をした火炎が鎖を焼き千切った。

 男は自らの攻撃の余熱と、切絵のところにまで漂ってくる異臭と、今までの圧迫感にむせびながら、体勢を立て直す切絵を睨んでいる。


「……化け物め」


 と、その両目は呪うように切絵を見ていた。


 彼は顔を袖でこするようにして、それから舌打ち一つ残すと、くるんと背を向けた。


 逃がすか、と。

 切絵は曲刀を投げた。


 『マルコキアス』は振り向かない。


 が、彼は鎖の切れ端を腰を低くして拾い上げた。


 彼が振り向いたのは、刃先が背中に突き立つ、その直前のタイミングだった。


 激しく鉄が噛み合う音。

 刃物は鎖の鞭に横合いからはたきおとされ、地面を滑る。


「Mixing No.3×No.X『バアル』!」


 地に溶けるが如く、剣が消える。

 代わり、槍で前方を払うと、不可視の刃が八本、彼を追った。


 鎖を投げ捨てた『マルコキアス』は、両の手の平を地面に叩きつける。

 炎の幕が彼の姿を隠すが、ツバメの如く、滑空する刃はその障壁を切り裂いた。


 ぱたた、と。


 血液が流れる。

 薄らぐ焔の向こう側で、肩口を切り裂かれた男は、浅い呼吸を繰り返した。


 ――いや……


 直撃を狙ったはずなのに、ことごとくかわされている。


 おそらくあの壁は防御や目くらましのために作られたわけじゃない。

 炎の幕にできる裂け目で無色の刃の軌道を見切る、そのためだけに。


 ……なるほど、と切絵は舌を巻く。

 とりわけ優れた体術や、能力を有しているわけではない。その切絵の見立ては、合っていた。


 それでも男は、気構えからして、機転からして、今までの敵とはまるで別格だった。


 ――まさかNo.Xまで読まれるとは……


 男が、肩を抱えるようにして逃げる。

 切絵は槍を担いでそれを追った。


 『マルコキアス』……確か新野と名乗ったか……彼が曲がり角を折れると、そこには土地の海神を祀る神社があり、朱に塗られた、大人一人がくぐれる程度の小さな鳥居があった。


 彼が指を口にくわえて高らかに吹き鳴らすと、魔を打ち払う神域の口には、シャボン幕のように『セエレ』の刻印が大きく広げられた。

 その加護を得るように、男は切絵を睨んだままその鳥居と刻印をくぐり抜けた。

 切絵が彼を追ってその中へと踏み入る寸前、


「無間地獄へようこそ」


 ささやくような男の声は、鳥居の向こう側から聞こえてきた。

 次の瞬間、切絵の意識は白い闇の中へと追いやられた。


~~~


 ……そして私は、辛い勝利をもぎ取った。


「っ、はぁ……はぁっ……はぁ」

 鳥居の中へ、こことは異なる時空へと消えた来栖切絵の姿を確認し、それからヒザをつく。


 『セエレ』の異空間へと逃げるフリして自分はこの場に留まり、逆に『トライバル・X』自身を異空間へと誘い込む。


 『セエレ』の時空移動には中継地点というものがあるらしい。

 切絵の『ハルファス』と同様に、『トライバル』の力によってねじ曲げられ、創世された仮想空間。

 今回ヤツ自身を放り込んだのは、そこだった。

 あとは入り口も、出口も作らなければそれで良い。

 壁も、足場も、ありとあらゆる物質のない、三次元ではない空間。そこでは酸素も極端に少なく、暴れて酸素を消費するほどに抵抗する力を失い、やがて意識を失う。

 その後でこの二つの荷物を『アヴァロン』へと運べば、私の仕事は終わる。


 へたれたままに、肩で息をする。

 傷を揉めば痛みが蘇るが、それでもそのまま意識を手放すよりはマシに思えた。


 なんべんもヤツの資料に目を通し、演習をした甲斐こそあったが、それでも今回は少なからず運の絡んだ、薄氷の勝利だった。

 一手でも読み違えれば死んでいたのは私だ。


 境内への道に沿って植えられたツバキの辺りから、

 ガサリ、

 音を立てて『セエレ』が寄ってきた。


「お前も、よくやるよな」


 と、その頭を撫でる。


 もしヤツが私ではなく『セエレ』を攻撃するためにその人間の気配を探っていたというのなら、それは見当違いも良いところだ。


 何しろ人間じゃ、ないのだから。


 それは、年老いたゴールデンレトリバーだった。

 ややツヤが失われて色あせた毛並は、それでもなお黄金の輝きとふわふわとした感触を残している。

 この人なつこい犬種にしては珍しく、こうして触れられるのが嫌いなのか、私が撫でると小さな黒い鼻をフンと鳴らしてそっぽを向いた。


 ささくれた心には、そういう何気なく仕草ですら癒される部分があった。


 今回の作戦がどこまでこの『セエレ』が意識してやったことかはしらない。

 ただ笛なり目なりで命じれば、する、と依頼主は言った。

 半信半疑だったが、何もない鳥居をくぐった瞬間、独りでに消えた異形の怪物を見れば私の策が当たったことを証明していた。


「じゃ、あいつに報告しに行くか、私じゃ向こうがどうなってるのかも分からないしな」


 ――これでヤツとの『約束』も守れる。


 だが……

「ッ!」

 老犬がおもむろに、うなだれていた顔を上げて反応した。

 私は何も感じない。だがそんな彼の姿を見て、起き上がって周囲に視線を配る。


 波の音。

 草の息吹。

 動物の息づかい。

 撫でる海風。

 薫る磯風。

 ――地響き。


 Mixing No.5『レラジェ』×No.9『ソロモン』


 どこからともなく……いや、異なる世界から、声は、した。


 再び地響き。

 大地が、いや世界そのものが、揺さぶられている。

 何かが来ている。

 戻ってくる。

 この世ではないどこかの果てから、

 この世のものではない、力を使役し、


 時空の壁を毒で溶かし、

 触れられないはずのない存在に触れ、破壊する手段のない概念を破壊し、


 壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊しし壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊し壊して壊して壊し尽くして


 ……ヤツは、戻ってくるだろう。


「Mixing No.1×No.X『セエレ』……」


 そして最後は、『セエレ』自身の力によって、完全なる密閉は破られた。

 非正規な入り口、何もない虚空から、まず左腕が飛び出した。

 時空の障壁相手に、ごく普通のバルコニーのドアのように、赤銅の手腕が押し広げるような動きをした。

 次いで全身が現れる。

 右腕に、コレとは別の中継地点に閉じ込めたはずの少女……『アリアンロッド』鈴目天佳のぐったりとした肢体を抱きかかえている。


 来栖切絵はさしたる苦もなく、時間もかけずに、この世界に帰還したのだった。


「…………化け物め…………ッ!」


 さながら古代の神魔のような立ち姿に、

 私は畏怖と、ある種の嫉妬を込めて吐き捨てた。

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