僕は彼女に何をしてあげられるのか考えようと思う
おはよう。こんにちは。こんばんわ。
今がどんな時間帯かはわからないけど あいさつしておくね。
僕の名前は楠本優。
今日は僕の許嫁を紹介しようと思ってるんだ。
とりあえずまずは彼女との出会いを…。
彼女は僕がまだ5歳のころに出会ったんだ。
彼女のおじいさんと僕のおじいさんは昔からの友達らしく、おじいさんが一緒に釣りに行ったときに約束したらしい。
そのころの彼女はまだ人見知りな性格で、おじいさんのズボンに隠れて顔を少しだけのぞきこんでいたんだ。
それまでの僕は女の子と話したことなどほとんどなかったんだけど、そのときの僕は一目見たこの女の子を僕の一生をかけて守りたいと思ったんだ。
「きみのなまえは?」
「………ゆうひ。わたしのなまえは、あさぎりゆうひ」
綺麗な名前だと思いながら 僕は彼女に手を伸ばして…。
「ぼくといっしょにあそぼうよ!」
「……うん」
彼女が僕の手をつかんでくれたことにはすごく安心してた覚えがある。
この時僕はうかれていたんだ。
初めてこんな可愛い女の子と出会ってたのもそうだし、女の子と初めて手を握ったのもそうだ。
とにかく僕はうかれきっていたんだ。
だからあんなことが起こったのだろう。
なんであのとき僕は川に遊びに行こうと思ったのだろうか……。
彼女はそのころは都会に住んでたから田舎の綺麗な川を見せてあげたかっただろうか…。
それともあそこの川は魚が住んでたから一緒に釣りたいと思ったからだろうか…。
いや、過ぎたことはもう諦めよう。
結果的に僕は彼女を守れたのだが。
彼女はびしょ濡れになり お気に入りのリボンを無くしてしまい。
僕は川でおぼれ、親にはさんざん怒られた。
彼女を守ると決めたそばからこれだった…。
さらに……彼女は悪くはないのに 一緒に怒られてしまった。
でも彼女は笑って、
「いいの。わたしもたのしかったもんっ!」
と言ったんだ。
あぁ、今思えば僕はこのときの笑顔で完全に惚れてしまってたんだろうな。
さて、彼女との出会いはこれくらいにして。
今からは思い出も語っていこうと思う。
小学校入ったころには彼女とは一緒に登校する仲になっていた。
まだそのころ許嫁ということをよく知らなかったが、僕たちは結婚するということは理解してた。
それに僕たちもお互い好きだったから問題はなかった。
「お、ゆうたちだ!またいっしょに学校きてるー」
「今日もいっしょだな!らーぶらぶー!けっこん式はよんでくれよー」
と同級生にからかわれたこともあったけど、彼女は普通に
「うん!けっこん式はみんな来てね!」
などと言ってくれたりもした。
僕はそういう煽られ方は苦手だから彼女にはとても助かったんだ。
彼女はこのころにはもう人見知りしなくなってた。
いや、むしろ人と話すのが楽しいという感じだった。
逆に僕の方が人見知りが激しくなっていたんだけどね……。
そして、後からわかったんだけど……。
この時煽ってた男の子は彼女のことが好きだったみたいだ。
そういやこのころから僕は彼女を守れるように…と体を鍛えはじめたんだ。
僕はいつか彼女があいつらに襲われるんじゃないか…って心配してたんだ。
彼女は当時から凄く可愛かったからね。
あははっ 今じゃ自分でもあのときの僕はマセてたって思うよ。
中学はいると煽る人はいなくなったけど。
変な目で見てくる人が多くなった。
でも、彼女のおかげか少ないけど友達はちゃんとできた…。
ほとんどの人は遠巻きに見てくるだけだったんだから。
彼女のおかげで僕は友達ができたといっても過言じゃないだろう…。
それに彼女が周りから変な目で見られてる時も、
「私たちは別になにも悪いことしてないよ?そういうのは気にしたらダメなんだからね!ブルーになるの禁止っ!えへへ」
なんて言って……。
僕はいつも彼女の笑顔と言葉に救われてたんだ。
高校生になったら。
僕の体も男らしくなり、体を鍛えていたおかげか筋肉もかなりついてきた。
逆に彼女は女の子らしい体つきになり 胸もだいぶ膨らんで ……とても可愛くなったんだ。
この頃から、人見知りする僕にもくだらない事を言い合える友達ができるようになった。
そして彼女は男女共に人気ができていた。
でも、それは良い事ばかりじゃなくて悪いこともあった。
彼女も不良っぽい男の人に絡まれることが多くなったんだ。
僕は体を鍛えてたおかげか その男達から彼女を守ることができた…。
……守るというよりも撃退したのだけれどね。
でも、僕は彼女を守れた実感があってちょっとだけ嬉しくなった。
しかし、彼女は…、
「優くん… 話せばどんな人だってわかってくれるよ…」
どこか悲しそうにそう言ったのだった…。
それから僕は彼女の護りかたについて悩むようになった。
彼女を守るだけならたぶん 誰でもできるだろう。
でも彼女は優しいから…誰よりも優しいから守るだけでは駄目なんだ。
きっとみんなは彼女の言ってることを「子供だ」とバカにするだろう…。
でも僕はそんなヤジからも彼女を守りたい……。
僕は彼女を本当に護れるようになりたいんだ。
僕はそう思った。
思ってたんだよ……!
思ってたのに……。
護るべき彼女はもういない…。
彼女は殺されたのだ…!
僕は今とても憤っている!
殺したいほどあいつを憎んでいる!
だけど!……だけど彼女はきっと僕にまた「話せばわかってくれる」と言うだろう。
たとえ彼女がいなくなっても僕の心には彼女がいるんだ。
僕の心は彼女で埋め尽くされてるんだ…。
だからそんなことしたら僕の中の彼女はまた悲しそうな顔をするだろう……。
でも、彼女が悲しむのはわかっていても……僕の心は醜いから…。
あいつを殺したくて仕方ないんだ!
そして…僕は……アイツを………
殺した
そこからは警察の行動は迅速だった。
彼を殺した僕はすぐに逮捕された。
彼女を殺したアイツは何もなかったのにだ……!
あぁ…この歪んだ世界は何を考えているのだろうか……。
僕はただ彼女にできるかぎりのことをしてあげたかっただけなのに……。
いったい僕は彼女に何をしてあげられたのだろうか……。
いったい彼女は僕に何を求めていたのだろうか……。
この問いはきっと誰にもわからない……。
だけど今はいない彼女の為に……。
日の光も分からない刑務所で……。
僕は彼女に何をしてあげられるのか考えようと思う。
この小説を書いてから、「おはよう」と「おやすみなさい」の小説が思い浮かびました。
といっても、この作品は2年前に書いたんですけどね。