第50話 婚約破棄と、脱出
Side:スパロ
「ふむ、そちがティトマウス卿か。ドラゴンスレイヤーとは思われない優男よな」
ここは王都にある王城の謁見の間。
『あれが王様か。太った普通のおっさんだな。中小企業の社長の方が貫禄がありそうだ』
ナノが失礼な事を言うので笑いそうになった。
「スパロ、ドラゴンスレイヤーです」
頭を下げて跪いた格好から、頭だけを上げる。
「何か褒美が欲しいか」
「王よ。褒美は既にきまっています。第9王女キヌフラガ娶る事になっておりますれば」
「のう大臣。要望ぐらい聞いてやってもよかろう。どうだスパロとやら、何か要望があるか」
「王女様との婚約を破棄してほしいです」
「なぬっ、不敬であるぞ。王女様から言い出すのならともかく、ティトマウス卿から言い出すとは何事だ」
気色ばむ大臣。
「ふむ、それもそうよな」
王様はあごの髭を撫でた。
「責任を取ります」
「どうやってだ。精霊様が住まう土地と爵位を放棄するとでも言うのか」
大臣がこちらを睨んで、唾を吐く勢いで話す。
「いえ、ドラゴンの巣穴の壁はドラゴンメタルになっているので、この採掘権を王女への慰謝料にあてます」
「大臣、許してやってはいかんかな。莫大な富だぞ」
「ですが」
『あれっ、そういう心算じゃなかったのに』
ナノの思惑と違うようだ。
領主としては領地を盛り立てる為に使うのが良いんだろうけど。
ベルベル一人を幸せに出来ないで、何が領主だ。
「あい分かった。ドラゴンメタルの採掘権を持ってして婚約破棄を認めよう。大臣も良いな」
「仰せの通りに」
フィンチィが少し個性的な少女を連れて入って来た。
「僕はキヌフラガ王女に結婚を申し込む」
「王よ。キヌフラガ王女は婚約破棄されて、いわば傷物。嫁ぎ先もままならないでしょう。ドラゴンメタルの利益から、半分ほど持参金として持たせるのが良いと思われます。フィンチィ・アーティクルとの婚約を認めてあげてもよろしいのでは」
「そうよな。良きに計らえ。ただし持参金の利益は2割だ」
「はっ、かしこまりました」
フィンチィが得意げな顔をする。
何となく筋書きに乗せられているような気がする。
だけど、ドラゴンメタルの採掘権なんかどうでも良い。
ベルベルと領に災いが降り掛からなければ、それで良いんだ。
Side:ハイチック8000
スパロの奴、強引に婚約破棄に持っていった。
こんなことしたらベルベルちゃんは確実にスパロに惚れるだろう。
許さんと言いたいが、まだまだ分からんよ。
フィンチィが何を企んでいるかは全て知っている。
最初の計画ではドラゴンメタルの金を王女が横領して、フィンチィに渡す事になっていた。
隣室で婚約破棄されたのを聞いて、計画を切り替えたらしい。
大臣とフィンチィが旧知の仲だという事も知っている。
面白そうなので放っておく。
それにしても王女はブスだな。
これで心が綺麗なら、まあ許せるけど、メイド達を虐めたりしているのを俺は知っている。
特に美人のメイドはしつこく嫌がらせされてた。
【現地の政治に介入するのは不味いよな】
【その通りです】
やっぱ様子見が良いか。
ゴーレムとベルベルちゃんが待つ宿へスパロが帰ってきた。
「王女と婚約破棄できたよ」
「スパロを信じてた」
『こほん。宿を取り囲まれているぞ』
「くそう、フィンチィの野郎だな」
『そうだな。続きは領に戻ってからすると良い』
宿の壁をレーザーで斬って、くり抜いた。
出た後に綺麗に接着して分からないようにする。
ばっちりだ。
「急ごう。門番も買収されているかも」
「ええ」
『王都の城壁に穴を開けたら不味いかな』
「いいんじゃない。元通りに付けておけば」
『じゃあ、城壁まで急ごう』
城壁は分厚かったが所詮石と漆喰。
レーザーの敵ではなかった。
ベルベルちゃんを肩に乗せて、街道をひた走る。
スパロは体内のナノマシンが筋力を強化して、乳酸を排除。
疲れにくくしている。
翌日は確実に筋肉痛になるだろう。
知った事か。
どうせベルベルちゃんに付きっきりで面倒を見てもらうのに違いない。
羨ましい事だ。
でも筋肉痛地獄から助けてやろうという気にはなれない。
近隣の村までなんとか辿り着いた。
村で譲ってもらった荷馬車の荷台にスパロ寝て呻いている。
御者台にはベルベルちゃんが座る。
俺は荷馬車を先導した。
領に着くまで一人で苦しむと良い。
ふはは、爆発してしまえ。




