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異世界転生したのに職業欄が「無職(要相談)」から動かず、最速で追放された結果、生活費のためにゴミ拾いしています  作者: Y.K
第7章

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拾われたもの、拾われなかったもの

 王都の朝は、いつも通りだった。


 パン屋は列を作り、子どもは走り、兵は持ち場に立つ。昨日、空を覆った巨大な影の話をする者もいるが、それはもう噂話の一つに過ぎない。


 ユウキは、城壁の影になる路地を歩いていた。人通りは少ない。だからこそ、よく見える。落ちているもの、置き去りにされたもの、誰も拾わなかった痕跡。


 壊れた箱の留め金。欠けた石畳。誰かが書いて消した跡。


 ユウキは、しゃがんで一つ拾う。


《ゴミじゃない(※当社比)》


 いつもの反応。

 いつもの作業。


「……ここ、きれいになったな」


 後ろから、ブラムの声がした。ドワーフの代表は、もう戦士の顔ではない。ただの、山を知る者の顔だ。


「誓紋は?」

 ユウキが聞く。


「山の境に置いた」

 ブラムは頷く。「誰の物でもない場所に。誰でも見られる場所に」


 少し離れた場所で、シェルザが空を見ていた。

「牙を向ける理由が、一つ減った」


「全部は無理ですけどね」

 ユウキは言う。


「それでいい」

 シェルザは即答した。「全部なくなれば、我らは我らでなくなる」


 短い沈黙。

 その向こうで、ミナが石を拾って並べている。


「……なまえ……」


「ん?」


「……ドラゴンの……なまえ……」


 ユウキは答えなかった。

 正確には、答えられなかった。


 名は、戻った。

 だが、それを呼ぶのは、今ではない。


 その日の記録は、管理局で淡々と処理された。

 功績は整理され、危険要素は削られ、余計な名前は伏せられる。


 ユウキの名は、欄外に小さく残っただけだ。


 それでいい。


 夜、王都の外れで、風が一度だけ強く吹いた。

 誰も気づかない高さで、影がゆっくりと旋回する。


 裁定者でも、神でもない存在が、ただ見ている。


 拾われた約束。

 拾われなかった怒り。

 そして、まだ拾われていない世界の歪み。


 ユウキは歩く。

 名を残さず、英雄にもならず、ただ拾う。


 世界が散らかっている限り、

 拾う者の仕事は、終わらない。


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