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異世界転生したのに職業欄が「無職(要相談)」から動かず、最速で追放された結果、生活費のためにゴミ拾いしています  作者: Y.K
第5章

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途中のまま、生きている

 朝の光は、いつも通りだった。


 特別に眩しいわけでもなく、

 世界が変わった気配もない。


 ユウキは、倉庫の扉を開けた。


 清掃用具。

 白いテープ。

 予備の袋。


 どれも、昨日と同じ場所にある。


「……よし」


 それだけ言って、仕事に出る。


 街角で、ノアを見かけた。


 彼は、立ち止まって掲示板を眺めている。

 以前なら、すぐに視線を逸らしていた場所だ。


「何見てる?」


「あ、ユウキさん」


 ノアは少し驚いてから、笑った。


「仕事の募集です。

 まだ、応募はしませんけど」


「そっか」


 それでいい。


 決めなくていい時間が、今はある。


 ノアは、胸に手を当てた。


「……今日も、ちゃんと重いです」


「それ、褒め言葉か?」


「たぶん」


 二人で、少しだけ笑う。


 別れ際、ノアは言った。


「完成しなくても、いいんですね」


「いい」


 即答だった。


「途中でも、生きてるなら」


 ノアは、深く頷いた。


 ユウキは歩き出す。


 路地裏で、レオルとミーナが作業していた。


「ここ、立ち入りテープで囲います?」


「そうね。

 今は触らない方がいい」


 白い線が引かれる。


 誰も急がない。


 保留という選択が、当たり前の動作になりつつある。


 マルタが、ベンチに座って飴を配っていた。


「はい」


「今日は?」


「ミルク味。

 判断が要らない日用」


「助かる」


 ユウキは、受け取って口に入れる。


 甘い。


 インベントリが、静かに反応する。


 管理中案件:人格保留01

 状態:安定

管理者負荷:中(維持)


 上がってはいない。

 下がってもいない。


 それでいい。


 昼過ぎ、管理局の塔を見上げる。


 今日は、連絡は来ない。


 それもまた、異常だ。


 だが、悪くない。


 世界は、少しだけ

 判断を急がない形を覚え始めている。


 夕方、倉庫に戻る。


 ユウキは、椅子に腰掛けた。


 少し疲れている。

 少し重い。


 それでも、立てる。


「……ゴミ拾いってさ」


 誰もいない倉庫で、独り言を言う。


「終わらせない仕事なんだな」


 拾って、

 捨てなくて、

 完成させない。


 途中のまま、

 今日を終わらせる。


 インベントリを閉じる。


 灯りを消す。


 明日も、

 同じように重くて、

 同じように生きているだろう。


 それでいい。


 それが、

 この世界で拾われた結果だ。

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