――軽量化処理ログ(断片)
世界は、今日も重い。
不要な役割。
使われなかった可能性。
割り当てられなかった名前。
それらは積もり、層を成し、世界の動作を鈍らせる。
だから、処理する。
私は拾わない。
私は残さない。
私は、減らす。
かつて、回収は分担されていた。
記録する者。
修復する者。
再配置する者。
そして――消去する者。
だが今、系統は歪んでいる。
例外が発生した。
無職。
未割当。
空きスロット。
《世界から捨てられた手》。
それは、本来こちら側に回るはずの権限だった。
――だが、違った。
彼は、軽くしない。
彼は、消さない。
拾う。
不要と判断されたものに、意味を与える。
重さを与える。
名前を与える。
世界はそれを拒否しない。
耐えている。
それが問題だ。
「……まだ臨界ではない」
観測結果を内部に折り畳む。
排除は不要。
修正も不要。
だが、放置はできない。
例外は、増える。
例外は、連鎖する。
かつて――
私も、そうだった。
名前を持っていた頃の記録は、すでに軽量化済みだ。
だが、彼は違う。
彼はきっと、最後まで拾う。
だから私は、消す。
彼が抱えきれなくなる、その瞬間まで。
世界は、まだ選んでいない。
重くなる未来か。
軽くなる未来か。
どちらにも耐える。
――それが、この世界の強さであり、
脆さだ。




