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異世界転生したのに職業欄が「無職(要相談)」から動かず、最速で追放された結果、生活費のためにゴミ拾いしています  作者: Y.K
第3章

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ゴミ拾い、戦場へ

 旧ダンジョン区画は、

 入った瞬間から空気が違った。


「……うわ」


 レオルが、

 思わず声を漏らす。


 壁は崩れ、

 床は割れ、

 通路のあちこちに

 黒ずんだ痕跡。


「戦闘跡だな」


 ガルドが、

 唸る。


「しかも、

 新しい」


「でも――

 魔物は少ない」


 ミーナが、

 周囲を警戒しながら

 言った。


「不自然なくらい」


「うん」


 俺は、

 足元を見た。


「倒されてる」


「掃除、

 されてないだけで」


 その瞬間。


 ――ガシャン!


 天井が砕け、

 黒い影が

 落ちてくる。


「来た!」


 レオルが、

 剣を構える。


 魔物。

 装甲型。

 通常なら、

 前衛三人がかりの相手。


 だが――


「下がって」


 俺は、

 一歩前に出た。


「え?」


 ガルドが

 目を見開く。


「ユウキ!?

 前出るな!」


「大丈夫」


 俺は、

 背負っていた

 清掃具を外した。


 一見すると、

 ただの

 古い盾。


 だが――


《拾得物:歪曲防護板》

《元用途:城塞廃材》

《零価再定義:防御特化》


 魔物の拳が、

 直撃する。


 ――ゴォン!!


「……は?」


 レオルの声が、

 裏返った。


 衝撃は、

 完全に

 逸らされていた。


 盾の表面が、

 波打つように歪み、

 力を霧散させる。


「……今の、

 盾?」


「ゴミ」


 俺は、

 即答した。


「城壁の廃材」


「嘘だろ……」


 次の瞬間、

 別方向から

 魔物が突進。


「横だ!」


「了解」


 俺は、

 足元の袋から

 何かを取り出す。


 ――ボロ布。


《拾得物:耐圧繊維束》

《元用途:不明》

《再定義:拘束具》


 投げる。


 布が空中で

 広がり、

 魔物を

 一瞬で絡め取った。


「拘束完了」


「……清掃具?」


「掃除用」


 ミーナが、

 引きつった笑いを浮かべる。


「……アンタ、

 冒険者より

 危険よ」


 最後の一体が

 跳躍。


 レオルが

 迎撃しようとした――

 その前に。


《冥途回収:自動発動》

《戦場清掃判定:成立》


 魔物の足元が

 崩れ、

 落下。


「……え?」


「床、

 脆くなってた」


 俺は、

 淡々と説明する。


「ゴミが

 詰まってたから」


 静寂。


 魔物の気配が、

 完全に消えた。


「……勝った?」


 レオルが、

 恐る恐る言う。


「清掃完了」


 俺は、

 周囲を見回す。


《拾得数:増加》

《未知素材:複数》

《装備適性:更新》


 ガルドが、

 大きく笑った。


「ははっ!

 なんだよそれ!」


「ゴミ拾いで

 最前線張る奴が

 あるかよ!」


「あるよ」


 俺は、

 盾を背負い直した。


「捨てられてる場所は、

 戦場だから」


 通路の奥。


 まだ、

 奥がある。


「行こう」


「掃除は、

 これからだ」


 奥へ進むほど、

 ダンジョンの空気は

 妙に“整理されて”いた。


「……さっきより、

 歩きやすいですね」


 レオルが、

 足元を見ながら言う。


「罠も、

 壊れてる」


「魔物の死体も、

 片付けられてる形跡あるわ」


 ミーナが、

 壁を指でなぞる。


「でも――

 掃除じゃない」


「雑」


 ガルドが、

 吐き捨てるように言った。


「急いで逃げた跡だ」


 俺は、

 通路脇に積まれた

 黒い袋を見た。


「……あれ」


《清掃対象:投棄袋》

《所有権:放棄済》

《内容:未確認》


「見る?」


 俺が言うと、

 全員が

 無言で頷いた。


 袋を開ける。


 中から出てきたのは――

 回復薬の空瓶。

 簡易食料の包み紙。

 そして。


「……これ」


 レオルが、

 一つ拾い上げる。


 装飾付きの

 マント。


 だが、

 縁が焼け焦げ、

 補修も雑。


《拾得物:耐魔マント(破損)》

《元所有者:未登録》

《使用痕:過剰》


「ボロいな」


 ガルドが、

 鼻で笑う。


「前線装備を

 こんな扱いするか?」


「するよ」


 俺は、

 静かに言った。


「使い捨て前提なら」


 ミーナが、

 はっとした顔になる。


「……あ」


「補給、

 間に合ってない?」


「違う」


 俺は、

 袋の底から

 もう一つ取り出す。


 布に包まれた、

 小さな箱。


《拾得物:私物箱》

《用途:非戦闘》

《投棄理由:不明》


「……私物?」


 レオルが、

 困惑する。


「戦闘中に

 捨てます?」


「普通は、

 捨てない」


 箱を開ける。


 中身は――

 香油。

 装飾品。

 やたら丁寧に

 包まれた布。


「……」


 沈黙。


 ガルドが、

 先に口を開いた。


「……これ、

 戦場に

 要るか?」


「要らない」


 俺は、

 即答した。


「だから――

 余裕があった」


 ミーナが、

 低く言う。


「魔物を

 殲滅しながら」


「ついでに

 ダンジョンを

 荒らして」


「都合の悪い物だけ

 捨てていった」


 レオルが、

 呟く。


「……勇者パーティ?」


 俺は、

 否定も肯定もせず、

 箱を閉じた。


《冥途回収:発動》

《私物保全:完了》

《公開判定:保留》


「拾う」


「え?」


「今は、

 拾うだけ」


 袋をまとめ、

 背負う。


「掃除だから」


 通路の先。


 まだ、

 奥がある。


 そして――

 もっと

 捨ててはいけない物が

 ある。


「行こう」


「ゴミは、

 正直だ」


 袋の中身を整理していると、

 一つだけ、

 明らかに扱いの違う物があった。


 布が、

 三重に巻かれている。


 しかも――

 魔力遮断の簡易刻印つき。


「……これ」


 ミーナが、

 指を止めた。


「隠す気、

 本気ね」


《拾得物:遮断布包》

《警告:魔力反応あり》

《性質:非戦闘用》


 俺は、

 静かに布を解いた。


 中から出てきたのは、

 小さな手帳。


 革張り。

 だが、

 角が丸くなるほど

 使い込まれている。


「……日誌?」


 レオルが、

 覗き込む。


 ページを開く。


 最初の数枚は、

 どうでもいい内容だった。


 装備の愚痴。

 仲間への不満。

 報酬配分の計算。


 だが――

 途中から、

 明らかに様子が変わる。


「……あ」


 ミーナが、

 息を呑んだ。


 そこに書かれていたのは、


・依頼区域に魔物を誘導

・危険度の水増し

・救援が来る前提の消耗戦

・“街が荒れていた方が報酬が上がる”


 ガルドが、

 低く唸る。


「……自作自演かよ」


「しかも、

 ギルドの巡回時間まで

 書いてある」


 レオルの声が、

 震えた。


「……それって……」


「うん」


 俺は、

 ページを閉じた。


「偶然じゃない」


《拾得物:内部記録(日誌)》

《公開価値:致命的》

《対象:複数名》


 ミーナが、

 俺を見る。


「どうするの?」


「今出せば、

 一発よ」


「勇者パーティ、

 終わる」


 俺は、

 少しだけ考えた。


 そして、

 手帳を

 元の布で包み直す。


「出さない」


「……え?」


「掃除が、

 終わってない」


 ガルドが、

 眉をひそめる。


「まだ

 庇う気か?」


「違う」


 俺は、

 首を振る。


「ここだけ出すと、

 ギルドが

 逃げる」


「捨てたのは、

 勇者パーティ」


「でも――

 捨てさせたのは、

 制度だ」


 ミーナが、

 静かに頷いた。


「……全部、

 拾ってから

 叩く」


「そう」


 俺は、

 袋を閉じた。


《冥途回収:完全保全》

《零価再定義:証拠保護》

《公開条件:全体最適》


 その時。


 ダンジョンの奥から、

 重い音。


 ――ゴゴ……。


「……まだ来るな」


 ガルドが、

 笑った。


「掃除、

 終わってねぇって

 言ったばっかだしな」


 俺は、

 盾を構え直す。


「行こう」


「ゴミは、

 最後にまとめて

 出す」


 通路の先。


 魔力の濁流。


 そして――

 まだ誰にも

 拾われていない

 “最大のゴミ”。


 それが、

 待っていた。



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