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異世界転生したのに職業欄が「無職(要相談)」から動かず、最速で追放された結果、生活費のためにゴミ拾いしています  作者: Y.K
20章

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減りすぎた

山を下りて半日。


最初に異変に気づいたのは、レオルだった。


「……あれ?」

足を止め、振り返る。

「魔物の気配、少なすぎません?」


「だな」

ガルドも頷く。

「一体もいねぇ」


ミーナは、魔力計を確認する。

「増殖は止まっています」

「ですが……」

一拍置いて、

「想定数より、減りすぎています」


ユウキは、黙って地面を見ていた。


装備袋は、鳴らない。


《即時回収対象:なし》


だが、嫌な沈黙がある。


「……増えなくなった」

ユウキが言う。

「代わりに――」


山肌を見る。


以前は、

魔物が“間引き役”になっていた。


増えすぎた草。

小動物。

地表の魔力。


全部、食われていた。


「……循環が」

ミーナが、静かに言う。

「止まっています」


ガルドが眉をひそめる。

「魔物って、厄介だが」

「仕事はしてた、ってことか」


「そう」

ユウキは頷く。

「分体は、ゴミだった」

「でも――」


一歩進む。


「役目まで一緒に消した」



山の中腹。


獣道が、崩れていた。


草が、異常に伸びている。

小動物の死骸が、放置されている。


「……食うやつがいねぇ」

ガルドが低く言う。


ミーナが、即座に整理する。

「分体の魔王は」

「増殖という形で」

「生態系の“調整役”になっていました」


レオルが、息を呑む。

「じゃあ……」

「止めたの、まずかった?」


「違う」

ユウキは即答した。

「止める必要はあった」


少しだけ、視線を落とす。


「でも」

続ける。

「後始末が残った」


装備袋が、ようやく微かに鳴った。


《二次影響:進行中》

《対象:生態過密》


「……これだ」

ユウキは言った。



開けた斜面。


草が、波打つように生えている。


その中心で――

小型の獣が、異様な数で密集していた。


逃げない。

威嚇もしない。


「……飽和してる」

ミーナが言う。

「生き物が、生きられない状態です」


「魔王がいた時は」

ガルドが言う。

「増えた分、食われてた」


「そう」

ユウキは頷く。

「倒した後は、増えすぎた」


レオルが、困った顔をする。

「……じゃあ、どうするんです?」


ユウキは、少し考えた。


剣は使わない。

回収もしない。


「……拾わない」

そう言った。


三人が、同時に見る。


「代わりに」

ユウキは続ける。

「戻す」


装備袋から、

分体制御核だった“ただの石”を取り出す。


《零価再定義》


対象は、増殖命令ではない。


――間引きという役割。


だが、

魔王の形では戻さない。


「……再定義」

ユウキが、低く言う。


「“魔物”じゃなく」

「自然の仕組みとして」


石が、淡く光る。


風が、流れる。


草が、ゆっくりと倒れる。

獣たちが、散っていく。


捕食者が、戻ってくる。


ミーナが、目を見開く。

「……魔王の役割を」

「世界に、返した……」


「返しただけだ」

ユウキは言った。

「拾いすぎたからな」



夕方。


山は、静かになっていた。


危険でもなく、

過密でもない。


「……討伐数」

レオルが呟く。

「結局、意味なかったですね」


「意味はあった」

ユウキは答える。

「間違いだって、分かった」


ガルドが、苦笑する。

「後処理までやると」

「ほんと、掃除屋だな」


ユウキは、肩をすくめた。


「ゴミは」

そう言った。

「捨てた後が、一番厄介だ」


山を下りる。


分体の魔王は、完全に終わった。


だが――

“魔王を倒した後”は、

やっぱり簡単じゃなかった。


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