紅迅 その後
紅迅が街道から姿を消したあと、
その名はしばらく、記録に残らなかった。
評価表から消えたわけではない。
除外でも、抹消でもない。
ただ――
更新されなくなった。
後処理補助の名簿にも載らない。
街道管理局の再編表にも名前がない。
速さを売りにしていたパーティは、
「急がない仕事」にも、
「急ぐ仕事」にも、呼ばれなくなった。
赤い装備は目立つ。
だからこそ、余計に。
「……俺たち、何やったんだっけな」
ある日、誰かがそう呟いたが、
誰も答えなかった。
間違ったことをした、とは
誰も言えなかった。
正しいと信じていた判断が、
預けるに値しないと判断されただけだ。
それだけの話だった。
やがて、紅迅は分かれる。
責め合いはない。
喧嘩もない。
ただ、
「速さ」を共有できなくなった。
最後に残ったのは、カイル一人だった。
赤い装備を外し、
武器を売り、
名簿の端に名前を書く。
――後処理補助。
その文字を見て、
彼は一瞬だけ手を止めた。
だが、消さなかった。
消せなかった。
それが、
今の自分に残された
唯一の現場だったからだ。
街道は、今日も動いている。
急がない速度で。
止まれる前提で。
紅迅の名は、
もう、どこにも追いついていなかった。




