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今世はのんびり釣りをしたい ~元技術者で今は冒険者の、微妙にままならない日々~  作者: 於田縫紀
第1章 最初の釣りに至るまで

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第7話 初級講習すっ飛ばして

 装置から出る音と振動が止まった。

 クリスタさんは装置から紙を2枚取り出し、うち1枚を俺に渡す。


「こちらが能力判定表示(ステータスシート)です。こちらの1枚はギルド控えになります。内容は同じです」


 どれどれ、早速俺は能力を確認してみる。

 身体能力はそこそこ高い。これは家で農業の手伝いをずっとやっていたからだろう。

 しかし問題は魔法の方だ。使用可能な魔法がやたら多い。そして所々にとんでもない数値がある。


 例えば魔法収納。容量が生物不可能な方で50t、生物可能な方で1t。いずれも時間停止タイプ。

 あとは電撃魔法の最高出力が250kWhとある。自然の雷なら三発分相当。電撃魔法としては破格の出力だ。

 他に透視魔法だの水上歩行魔法だの水中呼吸魔法だの高速移動魔法だの……

 前世で使用出来た魔法だけではない。明らかにこれでもかという位に能力が盛られている。


「想定以上です。魔法使いとしての能力だけならA級でもおかしくないでしょう。ただし実戦経験はあまりない。というかエイダンさん自身も自分の能力を今までご存じでは無かったように感じます。違いますでしょうか」


 何処でそう判断したかもわかっている。戦闘技能がほとんどないからだろう。

 まさにその通りなので、俺は頷くしかない。


「その通りです。使用した事がある魔法もせいぜい透視と転送、収納、疲労回復くらいです」


 少なくともエイダンとしての俺はそうだ。

 クリスタさんは頷いた。


「わかりました。使用した事がない魔法や能力を多数持っているという事例は、時々あります。俗に神の恩寵等と呼んでいますけれど。ですから心配しないで下さい」


 そうなのか。正直俺はほっとした。

 ここで異端者扱いとかされたら洒落にならないからだ。

 この世界に異端者という概念があるかはわからないけれど。


「それでは出来るだけ早く依頼を受けていただきましょう。エイダンさんなら初心者講習で学ぶべき事はほとんど無い筈ですから」


 実はそれでは微妙に困ったりする。


「しかし俺は田舎から出てきたばかりで、本来知るべき常識的な事すら知りません。例えばこの国の地理や歴史、慣習といった事。あとは冒険者として守るべき規約や基本的な戦闘技術等についても。それに装備もほとんど持っていません。田舎から着替えと非常食だけを持って来ましたから」


「戦闘技術はある程度実戦で覚えればいいでしょう。それに今のままでも魔法だけで充分戦闘が可能な筈です。装備は最初はギルドから貸与します。一ヶ月活動すれば最小限の装備を揃えるだけのお金は貯まる筈です。そして現在、ちょうどエイダンさんの魔法を必要としている依頼があります。これです」


 クリスタさんは手元から1枚の紙を取り出した。転送魔法で掲示板から取り寄せたようだ。

 何気なくやっているところを見るに、相当に魔法に熟練しているのが窺える。

 見た目通りの年齢では無い可能性が高い。


「依頼を確認していただけますか」


 どれどれ、読んでみる。


『運送・護衛業務(C級)

 内容:商品搬送、エダグラからドーソンまで。商品内容:金属インゴット各種、合計5t

 報酬:達成時に50万円

 依頼元:ドーソン鍛冶組合

 内容:鍛冶組合員が合同で調達している金属インゴットの在庫が残り少なくなってきた。馬車使用の場合、最低で馬2頭建てで2日間必要。エダグラからドーソンまではミシェルミー街道でおよそ140km。急な坂はない。なお運送方法さえあれば合計10tまでの追加依頼の受領可能』


 なるほど。確かに俺向けの業務だ。魔法収納(アイテムボックス)に荷物をぶち込んで、あとは走ってくるだけだから。

 ただこの金額、正直言って……


「報酬が高いですね、この依頼」


魔法収納(アイテムボックス)を使わない場合の諸経費が加算されていますから。具体的には

 〇 馬2頭立ての荷馬車を1泊2日借りる費用

 〇 2日間の馬の世話にかかる料金

 〇 御者1名と護衛2名の2日分の報酬

 〇 馬車を預けられる宿で1泊する費用

 がかかっています。ですから50万円でもそれほどの儲けは出ません」


 なるほど、魔法収納(アイテムボックス)が使えなければそれでもとんとんなのか。

 あと他にも気になる事がある。


「あとこの依頼、俺が1人で受理しても大丈夫なのでしょうか。確かに俺向きの依頼だとは思います。ですがE級からいきなりC級依頼となると信用という面で問題がある気がします。また俺はこの国の地理をほとんど知りません。ミシェルミー川の上流という事で何となく方向がわかるかな程度です」


「ええ。ですから今回は指導員が同行する形にします。指導員に報酬の1割を払う事になりますが、それでも此処で講習生をやっているよりずっと収入は多い筈です。また基礎知識等については後ほど書籍形式の教材をお渡しします。エイダンさんなら文字を読めますから、それを読んで独習という形で勉強は可能でしょう」


 それなら問題はないかもしれない。その指導員がどんな相手かによるけれど。

 ただ一応は聞いておこう。


「指導員さんの方は1割なんて条件で大丈夫なのでしょうか」


「問題はありません。それ以外に冒険者ギルドから指導員手当が出ますから」


 なるほど、そういうものなのか。


「ただしエイダンさんがこの依頼を受理するには、最低でもD級冒険者の資格が必要となります。能力的には間違いなくB級かそれ以上なのですが、念の為に昇級審査をさせていただきます」


 てっきり先程の能力判定表示(ステータスシート)で終わりだと思っていた。


「審査とは何をするのですか」


「実際に魔物と対峙したという設定で攻撃をして貰います。武器による攻撃でも魔法でも構いません。エイダンさんの場合は魔法になるでしょうけれど」


 確かにその通りだ。俺には前世を含めて剣や槍を使った経験はない。筋力そのものはそれなりにあるようだけれど。


「わかりました」


「それではこちらです」


 クリスタさんは立ち上がって、ギルドの裏口方向へ。こちらには初心者講習で戦技訓練に使った広場がある。

 廊下を抜け裏口を出て広場へ。この時間は誰もいない。

 まあ夕食後だ。皆、部屋に帰って休んでいるのだろう。


 クリスタさんが魔法収納から何かを取り出した。見ると人型ゴーレムだ。

 大きさは子供くらい。頭と手が大きめだからゴブリンを模しているのだろうか。


「これはD級及びC級の実技試験に使用しているゴーレムです。大きさはゴブリンを模しています。操作次第でゴブリン相当、ホブゴブリン相当、アークゴブリン相当に動きの変更が可能です。10mの位置で、このゴーレムが動き始めたら試験開始です。どんな方法でもいいのでこのゴーレムを倒す、もしくは動きを止めて下さい。ゴーレムを壊しても構いません。遠慮せず攻撃して結構です」


「わかりました」


 なかなか実戦的な試験だなと思う。

 この世界ではどうかわからないが、以前の世界ではゴーレムは結構高価だった。それを壊して構わないから遠慮せず攻撃しろ、か。

 いいだろう。やってやろう。


「それでは始めます」


 ゴーレムが動き始めた。それを認識した次の瞬間、俺は魔法を起動する。


『電撃魔法』


 出力は抑えめだ。10発くらいは連続で出せる程度。

 それでも人間なら間違いなく再起不能になる。人間より体組織が弱いゴブリンならひとたまりもない筈だ。

 案の上ゴーレムの動きが止まった。再び動き出す気配は無い。


「終了です。アークゴブリンの動きであろうと、電撃魔法で倒せると認められました。実技はC級相当以上です」


 今のはアークゴブリンの動きを模そうとしていたのか。動き出し直後に魔法を起動したからわからなかったけれど。

 なおクリスタさんの話は続く。


「C級以上の認定試験ではこの後ペーパーテストがあります。この国の歴史をはじめとした基礎知識、最低限の礼法等が問題として出題されます。この辺りについては教本をお渡ししますので、覚えた頃に試験を受ければいいでしょう。それまでは実技のみという事で、D級冒険者として認定させていただきます。それでは事務所に戻りましょう」


 なるほど、なかなかに親切でもある。

 確かに今の俺にはペーパーテストは無理だ。知識が足りなすぎる。

 だから今の扱いはD級冒険者で、ペーパーテスト部分は自習しろと。納得だ。

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