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今世はのんびり釣りをしたい ~元技術者で今は冒険者の、微妙にままならない日々~  作者: 於田縫紀
第4章 廃坑調査

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第65話 そして在庫は減り続ける

「あとクリスタ、冒険者ギルド所定の費用算定書式を出しておいて欲しいニャ。あれに今回の補食分については、市場価格を含めて私が書いておくニャ」


「わかりました。それでは、此処に出しておきます」


 クリスタさんは、部屋の隅にある机の上に紙とペンを出す。

 いいのだろうか、ミーニャさんに査定を任せて。

 そう思うのだけれど、クリスタさんが出したのなら大丈夫なのか、また別の意味があるのだろう。

 だから何も言わないでおく。


「それでは食べながら、情報公開の時間ニャ。まずはアレについて、もう少し詳しく話しておくのニャ。という事で、まずはクリスタが話すのニャ。足りないところは私が適宜補足するニャ」


 キャラクターとしては、ミーニャさんが簡単に話して、足りない部分をクリスタさんが補足する方が正しいと思う。


 それが逆なのは、現状ミーニャさんが食べるのに忙しいからだろうか。

 限りなくそんな気がするのだが、取り敢えずは指摘しないでおく。


「そうですね。モリオンについては、ある程度話しておいた方がいいでしょう。モリオンが直接的に攻撃してくるという事はないでしょうけれど、モリオンが仕掛けたものに出遭う可能性はありますから」


 仕掛けたものか。

 今回のアンデッドに汚染された魔素(マナ)によって魔物を発生させる仕組み。

 カンディルーが大量発生した裏にも、そんな仕組みがあったのだろうか。

 定着した今は消えていると仮定して。


「まず最初に。モリオンは倒せません。一見ダークエルフに見えますが、実際は先祖返りのハイエルフです。精神生命体に近い存在ですから、肉体を完全に抹消させても死にません。数ヶ月か数年くらいで再生します。そして精神を消去する方法はありません」


 ハイエルフか。

 前世でも話こそ聞くが、存在しているかは不明な存在だった。

 まさか現物が出て来て、しかも敵だとは。


 そう思ったところで、煮魚の汁かけおにぎりを食べ終わったミーニャさんが口を開く。


「ただ、向こうも人間と戦おうとすることはない筈ニャ。アレが相手を滅ぼそうとする場合は、対象がよほど悪逆な場合だけなのニャ。それでも普通は魔法で無理矢理改心させるのニャ。むしろクリスタの方が、悪人に容赦しない分危険なのニャ」


 クリスタさんが苦笑する。


「ありましたね。グルド要塞に住み着いていた盗賊団討伐の時に。国も始末に困って、結局は独立した開拓団として辺境に出したのでした」


「あれはクリスタが悪いニャ。広域滅殺魔法なんて出そうとしたから、アレが出てきたのニャ。本来はアレが出てくる要素は、まるで無い依頼だったニャ。あと(さかニャ)と御飯追加なのニャ。御飯はおにぎりでもいいニャ」


「はいはい」


 おにぎりと魚料理各種を追加しつつ思う。

 今の話を聞いていると、クリスタさん、結構危ない人のような。

 むしろミーニャさんやモリオンの方が、まともなように聞こえる。

 まあ事案内容の詳細を聞いたら、また話は変わるのかもしれないけれど。


「ですからモリオンが出ても、恐れることはありません。倒す事は出来ませんが、攻撃される事もありませんから」


 恐れることはないか。

 ただそれは、モリオン個人に対してだろう。

 彼が仕掛けた魔物は、危険なものが多いようだから。


「モリオンは、人類が増え広がること、また知識をつけて魔法や技術を発達させることを否定しています。そして魔法や技術の発達、あるいは人口や居住区域の拡大を妨げる為、様々な妨害を行っています。カサクラ坑道に魔物が出現するようにしたのも、ダグアルに魔魚を繁殖させて河川交通を不可能にしたのも、その一環です」


「此処だけではないニャ。南部砂漠の一定以上南の地域にレッドサンドワームが出るようになったのも、ヴェリイズ遺跡の10階層に倒せない魔物が出て、それ以上先に進めなくなったのも、おそらくアレの仕業ニャ。アレ関係は面倒ニャ依頼が多いので、大体は塩漬けになっているのニャ。それと、もう少し(さかニャ)が欲しいのニャ」


 仕方ないから、更に出す。

 このペースで食べられると、3日分の副食も底を尽きそうだ。

 ついでに、クリスタさんに確認をしておく。


「敵に回しても危険ではないけれど、国や地域が発展するのに邪魔で、かつ修正困難な状況を作っていく上、倒す事が出来ない存在。そう捉えればいいですか」


 クリスタさんは頷いた。


「ええ。それで基本的には正しいです。そしてその邪魔、モリオンが作った仕掛けが面倒なのです。魔物が強過ぎたり多過ぎたりで、普通のB級パーティでは攻略しきれない場合が多いですから」


「だからと言って、放っておくわけにもいかないのニャ。ニャので仕方なく、何とか出来そうな冒険者を捕まえて、こうやって解決する事になるニャ。それでも、ここまで何も壊さずに解決できたのは久しぶりニャ。あと(さかニャ)おかわりなのニャ」


『何も壊さずに解決できたのは久しぶり』か。

 つまり、いつもは破壊的方法で解決してきたという事だろうか。

 非常に気になるが、俺がまず解決するべきなのはこちらだ。


「在庫切れです。それに、そろそろ食べ過ぎじゃないですか?」


 本当はまだもう少し残っているが、それは俺の夕食用だ。

 これ以上在庫を減らすわけにはいかない。

 特にヒラメの刺身、楽しみにしていたのに3割以下まで減ってしまっている。


「そうですね。そろそろやめておかないと、動けなくなりますよ」


 クリスタさんも加勢してくれた。


「依頼は終了したのニャ。だから問題ないのニャ」


「まだ職員として、冒険者ギルドでの後始末が残っています。貸出道具の整備搬送、評価書類の追記等、業務はいくらでもあるはずです。私は私で、報告が多数残っていますので手伝えません。その辺はご存じだと思いますけれど」


「依頼完了は明日予定だったのニャ。ニャら、それまで(ニョ)んびりと……」


「依頼の早期終了も加点ポイントです。忘れましたか」


「……お(ニャ)かいっぱいで、そのままばったり眠りたかったけれど、仕方ないニャ」


 ミーニャさんは取り皿とフォークを置いて、そしてテーブルの方へ。

 先程クリスタさんが出したペンを持ち、猛烈な勢いで書類作成を始めた。


 さて、ミーニャさんの方は解決した。

 次は、先程気になったところの確認だ。

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