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今世はのんびり釣りをしたい ~元技術者で今は冒険者の、微妙にままならない日々~  作者: 於田縫紀
第4章 廃坑調査

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第64話 冒険者ギルドに行く前に

 カサクラからドーソンまでは、お約束の高速移動。

 飛ばしまくった結果、ドーソンの南門前まで40分位で到着。

 ミーニャさんとジョンを魔法収納(アイテムボックス)から出す。


「一瞬で違う場所に出る感覚ってのは、やっぱり慣れないよな」


「でも便利でいいのニャ。あとお腹が空いたのニャ」


 確かにお昼を少し回った時間だ。

 どうやらミーニャさんの腹時計は、時間停止状態の魔法収納(アイテムボックス)に入っていても正確に時を刻むらしい。


「まずは冒険者ギルドに行って、報告手続きをしましょう」


「その前に飯なのニャ。ついでに今回、ギルド持ち出し以外でかかった費用を計算する必要があるのニャ。だから冒険者ギルドの前に、エイダンの家がいいのニャ」


 えっ!?

 まあ別に来られて困るような状態ではないから、大丈夫ではあるけれど。


「クリスタの事だから、冒険者聴取報告様式くらい持ち歩いていると思うニャ。ニャんなら魔法収納(アイテムボックス)内で書いて仕上がっている可能性すら高いニャ。だから書類作成で面倒という事はない筈なのニャ。

 それにエイダンが用意した矢や補食類は、厳密に確認して費用を確定する必要があるニャ。エイダンはなまじ自作で調達できる分、費用の見積もりが甘いニャ。そこはしっかり査定して、費用を請求させる必要があるニャ」


 ミーニャさん、冒険者としては有能だししっかりしている。

 どうしても夕食をたかりに来る駄猫というイメージが強いのだけれど。

 普段が普段だから仕方ない。


「確かにそうですね。費用を確定してから冒険者ギルドに行った方が、無駄な両替の手間も省けますから」


「あとはアレについて、もう少し詳しく話しておいた方がいいのニャ。出会ってしまったからには必要だと思うニャ」


 今回のアレとはクリスタさんではなく、モリオンについてだろう。

 どうやらこの世界、名前を呼んではいけない人が結構いるようだ。


「わかりました。ですがエイダンさん、お邪魔して宜しいでしょうか」


 そうだ。本来はそれをミーニャさん、俺に最初に聞くべきだった気がする。

 依頼が完了して冒険者的緊張感が薄れた上、腹が減って駄猫モードが出かかっているのだろう。多分。


「ええ、大丈夫です」


 最小限の家具以外は全部、魔法収納(アイテムボックス)に入れている。

 家具の一部、例えばテーブルと椅子も魔法収納(アイテムボックス)に入れているけれど。

 だから部屋が散らかることはないし、掃除も簡単。

 困る事はまず無い。


「わかりました。それでは申し訳ありませんが、エイダンさんの家にお邪魔しましょう。それでしたら西門から入った方が20分程節約できます。高速移動を使えば西門まで数十秒ですから」


 こういうところのせっかちさ、いや合理性がクリスタさんだ。


 ◇◇◇


「それじゃまずは昼食、ついでに依頼完遂パーティなのニャ。ギルドの正規の食事とエイダンが持っている補食を、ここで景気よく思い切り出すニャ」


 いや、待てそこの駄猫。


「思い切りよく出したら多過ぎます」


「ええ、それにまだ依頼が終わった訳ではありません。報告が終了してこそ依頼完遂です」


「だから今食べた分は依頼実施中にカウント出来るのニャ。ニャので思い切りよく食べて、これも依頼のうちにしてしまうニャ」


「ギルドから出した食事以外、いわゆる補食の費用については、冒険者側の負担となります。ですからここで出す事はありません」


「冒険者ギルドで一度出した食事は、日数が余っても返還する必要はないのニャ。でもあれは(さかニャ)が足りないのニャ。だからエイダンが作った補食も出すニャ」


 冒険者としてのミーニャさんは今回、結構活躍した。

 だから今は、ちょっとだけ要望に応えてやろう。


「わかりました。それじゃ、ほどほどに放出します」


 まずは冒険者ギルドが出した昼食を一回分。

 野菜とローストビーフをたっぷり挟んだバゲットサンドが6本に、飲み物としてドリンクヨーグルトが1リットル。


 そして補食の方は、刺身を各種、通常の4人前程度ずつ。

 小魚のフライと南蛮漬けを、それぞれ6匹ずつ程度。

 ウミタナゴの煮付けを1匹分と、ヒイラギの煮付け3匹分。


 刺身はドレッシングで食べれば、そこそこパンにも合うだろう。

 煮付けはまあ、無いとミーニャさんが出せと言いそうだから。


 これでいいだろうと思ったところで、ミーニャさんから請求が入る。


「あと、あの甘い干物と、おにぎり両方が欲しいニャ」


 はいはい、というところでアジの味醂干し2匹分と、おにぎり2種類2個ずつを出したところで。


「それではパーティなのニャ。皆さんお疲れ様ニャ。では、いただきますニャ」


 ミーニャさんが真っ先に食べ始めた。


「それで補食や装備の費用はどうしますか」


「補食は今ここに出ている分までを、市場価格に即して評価すればいいニャ。それは全部食べ終わったら私がするのニャ。あと今回、装備のうち計算が必要なのは、矢と釣りの仕掛けなのニャ。だからエイダン、その辺に用意した矢と使用した釣りの仕掛け一式、あと店で購入した材料の領収書を出しておくニャ。そうすれば食べ終わるまでに、そこのせっかちエルフが勝手に計算するのニャ」


 ミーニャさん、クリスタさんをせっかちエルフ呼ばわりしている。

 でもそう言えば、今回の依頼実施中はミーニャさん、クリスタさんを敬称なしで呼んでいた。

 そして本人がいない時はアレと呼んでいる。

 その辺に何か謎ルールがあるのだろうか。


「わかりました」


 その辺の気になった事は取り敢えず置いておいて、俺はミーニャさんに言われた通り、矢と、魚竜(フィッシュドラゴン)を釣り上げた道具一式を出す。


 ふと気がついたので、確認してみた。


「矢は使ったものも、再利用できるように修理してしまいましたけれど」


「大丈夫ニャ。普通の冒険者は矢の再生なんて出来ないから、ここは使った=消耗したとして計算するニャ。それに完全に修理してあっても、クリスタなら時間魔法で使用履歴を見る事が出来るニャ。だから問題無いニャ」


 どうやらミーニャさん、クリスタさんの能力や扱い方を熟知しているようだ。

 きっとそれなりの関係が2人にはあるのだろう。

 冒険者ギルドの上司と部下とか、一緒に依頼に行って酷い目に遭った相手という以外にも。

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