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今世はのんびり釣りをしたい ~元技術者で今は冒険者の、微妙にままならない日々~  作者: 於田縫紀
第4章 廃坑調査

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第62話 後始末の完了

「それでは水を抜きます」


 地底湖全体が一瞬光った後、水位が下がり始めた。

 光ったのは浄化魔法の発動によるものだ。

 汚染された魔素(マナ)の浄化だけでなく、鉱毒まで浄化するなんて、俺には理解できない魔法だけれど。


 水位が下がっているのは、水流魔法で水を強引に帯水層へ押し流しているからだ。

 水流魔法そのものは、低レベルから使える魔法だ。

 しかし、圧力が高いはずの帯水層へ水を押し戻すのは、相当な魔力が必要なはずだ。


 それをこの水量分やるなんて、どれだけの魔力が必要なのだろうか。

 神様のおかげでチート級の魔力をもっているはずの俺ですら、考えたくないくらいだ。


 長年生きたエルフは魔力が化物級なのだろうか。

 それとも水流魔法に酷似した別の魔法なのだろうか。


 1分程度で水が溜まっていた場所が、完全に干上がった。

 そして帯水層から水は流れ出てこない。


 どうやら帯水層と面する部分に、氷結魔法をかけたようだ。

 分厚い氷の層を作って、水がこちらに流れ出さないようにしている。


 さらに水底だった場所に乾燥魔法がかけられた。

 これで、ぬかるんで歩きにくいということはない。


「至れり尽くせりですね」


 俺には無理だなと思いつつ、そう感想を言わせてもらう。


「さっさと解決したいですから。魚竜(フィッシュドラゴン)がいなくなれば、これくらいは簡単です」


 長年生きたエルフなら、これくらいは普通にできるのだろうか。

 それともクリスタさんが特殊例なのか。

 この世界における事例を知らなすぎて、俺には判断不能だ。


 さて、そういった感想はともかくとして。

 明らかに妙な魔力というか、汚染された魔素(マナ)を感じる場所がある。

 この洞窟の、入ってきた場所と反対側の端の壁に。


「何か怪しい感じが向こうでするニャ。近づいても大丈夫かニャ?」


 ミーニャさんも気づいたようだ。


「ええ。あれがこの状態を生んだ元凶でしょう。今の状態なら近づいても問題ないと思われます。確認しましょう」


 クリスタさんの後を、隊列という感じではなく、ぞろぞろとついていく。

 よく見ると奥の壁の一部に岩がある。

 透視魔法で全体を確認したところ、一辺1mの綺麗な立方体形状だ。

 これは魔法で作り上げられたものだろう。


 そしてこの岩部分に、明らかに他とは違う魔力と魔素(マナ)の流れを感じる。

 なら調べよう。

 魚竜(フィッシュドラゴン)や、汚染された魔素(マナ)を高濃度で含んだ水は、もうなくなった。

 だから透視魔法で細部まで確認可能だ。


 そして俺は理解した。

 これは完全にアウトな物件だ。


「あの岩が原因ですね。中に人骨と、魔法陣が記載された銀板が埋め込まれています」


「そうですね。人骨が発する呪いを魔法陣で増幅して、周辺の魔素(マナ)を汚染する仕組みのようです。とりあえず壊してしまいましょう。浄化は私がやりますから、エイダンさんは岩を魔法で崩していただけますか? 私は本来、水と風の魔法使いですから、土は得意としていないのです」


 得意としていなくても、クリスタさんならできそうな気がする。

 でもまあ、それくらいは俺でもできるからかまわない。


「岩を崩すまででいいですね」


「ええ。浄化を含む魔法的措置は私がやります」


「わかりました」


 土砂改質魔法で、岩を砂へと変化させる。

 壁に埋め込まれていた岩がさらっと崩れ、中からどう見ても人骨という感じの頭蓋骨を含む骨と、銀色の板が現れる。


 その直後、俺は失敗に気づいた。


 岩の中に閉じ込められていた高濃度に汚染された魔素(マナ)が、一気に周囲に広がろうとしている。

 俺の魔法では止められない。


「やばいニャ!」


 ミーニャさんが身構えた次の瞬間。


「浄化と無効化をします」


 一瞬、風景が光った後、危険な気配が薄れた。

 クリスタさんの浄化魔法だ。

 汚染された魔素(マナ)、淀んだ魔力が一気に浄化される。


 バキッ! 音が響いた。

 頭蓋骨が半分に割れて、そして崩れていく。

 頭蓋骨だけではない、他の骨もだ。

 みるみる間に崩れて砂と同化して、そして消え去った。


 残ったのは銀色の板と砂だけ。


「処理完了です。これでカサクラ坑道については、すべて解決できたと判断します。詳細は後に、この坑道を再開するための調査隊が調査するでしょうが、今現在において坑道とその周辺に魔物も、それ以外の魔的問題点もなくなっています」


 何なんだ、今の浄化魔法は。

 俺が知っている浄化魔法と比べて、発動が早すぎ、出力も異常すぎる。


 ただ、ここでそのことを追及しても、まともな答えは返ってこない気がした。

 だから今は、とりあえず黙っておく。


 あとは今の浄化措置のおかげか、この空間からも遠視魔法で坑道や、さらに先が見えるようになった。

 ざっと見た限りでは、クリスタさんが言ったとおり、異常な魔力は感じない。


「それでは地上に戻りましょう」


 その言葉とともに景色が暗転し、軽い浮遊感。

 二秒もしないうちに周囲が強烈に明るくなった。

 この明るさは魔法的なものではない。

 暗い穴の中から外へ出たからだ。


 目が明るさに慣れるより早く、魔法を使って周囲を確認する。

 現在地は廃坑入口の扉の前だった。

 つまり今のは、クリスタさんが脱出魔法を起動した結果だろう。


「帰りがこれなのは楽でいいけれどニャ。何か問答無用という気がするのニャ」


 ミーニャさんの言いたいことはよくわかる。

 せめて事前に一言欲しい。


「穴の中は得意ではないのです。エルフなので」


 クリスタさんが、ミーニャさんみたいな言い訳をしている。

 でもまあ、俺も穴の中より野外の方がいい。


「さて、これで無事、ここカサクラ坑道で発生した魔物発生事案は解決しました。

 まだ1日早いですが、ドーソンに戻りましょう。依頼完了報告作業が待っ……!」


 クリスタさんが突如、凶暴な魔力を発動した。

 高速の水流が、俺から見て右側を襲う。


 魔力も気配も感じない。

 しかしそこに、確かに男が立っていた。

 黒髪に褐色の肌、細長い身体を黒色の長袖シャツと黒色のズボンに包んだ男が。


 顔や雰囲気から感じる年齢は、普通人なら五十歳前後。

 しかし特徴的な耳が、見た目で年齢を判断してはいけないと告げている。


 その特徴とは、耳の上端が細長く尖って伸びていること。


 そういう形に加工したのでなければ、この形の耳を持つ種族は多くない。

 エルフか、ダークエルフ。

 もしくはその強力版であるハイエルフだ。

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