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今生はのんびり釣りをしたい ~元技術者で今は冒険者の、微妙にままならない日々~  作者: 於田縫紀
第1章 最初の釣りに至るまで

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第6話 取りあえずは能力測定

 食べ終わって、台を拭いて、食器を流しに持って行って洗って仕舞う。

 本来なら出てすぐの階段を上って2階へ行くところを、そのまままっすぐギルド受付の方へ。


 もうじき夕7時の鐘だ。それなのに冒険者ギルドの受付は開いている。

 緊急や非常時に備えてだろうか。それとも他に理由があるのだろうか。


 室内に冒険者はいない。明るいうちに仕事を終えて窓口に来るのが一般的だからだろう。

 夜は暗い。月明りや星明り程度で街灯なんてものはない。


 仮にもドーソン、この地域の中心的な街のはずだ。だから街灯くらいはあるかと思ったのだけれど見当たらなかった。

 これはドーソンの街があるこの付近が田舎だからだろうか。

 それともこの世界が俺の過去の記憶にある世界に比べて遅れているからだろうか。


 俺のこの世界に関する知識は狭すぎる。

 なにせつい一昨日までキヌル村から出たことがなかったのだ。

 おまけに本を読むどころか文字を読むことすらできなかったのだから。

 そんな事を思いつつ受付へ。


 人がいるカウンターはひとつ。いるのは俺が昼に依頼受理した時の受付嬢だけ。

 この時間になぜ若い女性がいるのだろう。街の中だから治安がいいという事だろうか。それにしても……

 若干警戒しつつ、それでも他に人がいないためそのカウンターへ。


「失礼します。エイダンと申します。ポール教官に受付に行くよう言われたのですが、こちらで宜しいでしょうか」


「ええ。本日はベルクタ漁業・水面管理事務所からの清掃依頼、ありがとうございました」


 依頼達成の受理は別の受付嬢だった。しかし横の連絡はあるだろう。だから知っていてもおかしくはない。

 それでも微妙に疑問、そして不安を感じる。


「いえ、依頼通りにやっただけですから」


「魔法収納を使用してあれだけの量のゴミを収集する事は、普通の冒険者では出来ません。B級冒険者で魔法を得意とする者でも、収納容量は自分の体重の2倍程度までというのが普通です」


 えっ! 何故俺が魔法収納を使える事を知っているのだ!

 確かに昼の依頼で魔法収納を使った。しかし俺が持ち帰った依頼達成証にはそこまで細かい事は書いていなかったはずだ。


 しかもこの人、『あれだけの量のゴミを』と言った。ならば現場を見たという可能性がある。

 偶然目撃したのだろうか。それとも……


「今まで名乗らないで失礼しました。私はクリスタと申します。本来の所属はヘルミナ国冒険者ギルド本部で、調査担当を勤めております」

 ギルド本部の調査担当!? 何故そんな人が受付嬢の真似事なんてしているのだ。

 理由は幾つか考えられる。

 ただしここで俺に対してそう名乗るという事を考えると、理由はかなり絞られる。

「この時期、調査部を中心とした本部から、各地域の拠点となる街の冒険者ギルドに担当者が派遣されています。それら派遣者は初心者講習の教官なり受付なりに配置されています。何故そうするのか、おわかりになりますでしょうか?」


 初心者講習の教官、というのがヒントだろう。

 ただここは注意深く答えた方が良さそうだ。


「初心者講習生の選別のため、という事でしょうか?」


 選別にも色々ある。使える奴を選別するとか、逆にスパイや敵性人物を排除するとか。

 ただしその辺まではあえて答えない。何せ俺には知識が足りない。

 この国について知っている事は名前がヘルミナ国という事くらい。

 敵となる国があるのかなんて、基本的な事すら知らない状態だから。


「正解です。この場合の選別とは冒険者としての能力が高い者を早期に選抜するという意味となります。初心者講習を各地で行う理由は、有能な冒険者が足りないからです。このドーソンの冒険者ギルドに所属しているC級以上の冒険者はたった12名、うち現役の冒険者は7名、2パーティに過ぎません。ですので護衛依頼も魔物討伐依頼も滞っているというのが現状です」


 なるほど。理屈はわかる。

 確かに俺は魔法を使える。しかし基本的には神殿技術者として使用していた魔法が主だ。だから……


「確かに俺はある程度の魔法は使えます。ですが魔物や魔獣との戦闘はした事がありませんし、攻撃的な魔法も使った事はほとんどありません」


「ええ。ですのでどれくらいの魔法を使えるのか、戦力としてどれくらいになるのか。それをこれから確認させていただこうと思っています」


 彼女はそう言って、カウンター上に握りこぶしほどの水晶玉が付いた装置を出した。

 似たものを前世で作った覚えがあるからすぐわかる。魔力や体力等を数値化する能力測定装置だ。

 高機能なものは使用可能な魔法や技術等についても表示や印字が可能なはず。少なくとも俺の前世ではそうだった。


「こちらは能力判定装置となります。まずはこちらで能力を一通り確認させていただき、適性や今後必要な訓練等を判断しようと思っています」


 この手の装置については元神殿技術者だから知っている。

 それでもここは一応聞いておくべきだろう。この手の装置を知っていると思われないために。


「ならこの装置を初心者講習を受けた全員や、冒険者登録をした者全員にかければいいのではないでしょうか?」


「理想はそうです。ただ残念ながらこの装置は気軽に使えるものではないのです。3回使用したら神殿へ持っていって特殊祈祷を行う必要があります。ですので明らかに使用するべきだと判断した場合以外は使えないのです」


 俺の前世にあった装置と同じ欠点を持っているようだ。

 つまり神殿技術者や魔術機器のレベルは俺の記憶とそう大差ない、と判断していいだろう。


 もちろんもう一度神殿技術者をやる気はない。もっとのんびり仕事をして、そして釣りを楽しむのが今世の俺が望む生き方だから。

 しかしこの装置で神殿技術者としての適性が明らかになってしまったら……


 嫌な予感がする。

 ただしこの装置を誤魔化す手段は基本的に無い。かつて自分の手で設計し作った事がある俺だからこそ、断言できる。


「そんな貴重な装置を俺に使っていいのでしょうか」


「冒険者の中でも魔法使いは特に貴重です。ここドーソンのギルドに登録されているC級以上の冒険者12名のうち、実戦で使用可能な魔法を使える者は攻撃・支援・回復その他あわせても4名しかおりません。そしてエイダンさんは少なくとも即実戦で使用可能な収納魔法を持っているはずです。ですので他の能力次第では、今日中にD級に認定の上、講習ではなく実戦で冒険者としての業務を覚えてもらう事になると思います」


 いきなり実戦か。俺の望むのんびりとした生活が不可能になる可能性がある。

 ただし悪い可能性だけではない。D級でも昇格すれば生活水準は一気に向上するだろう。


 E級の依頼の報酬は半日で1,000円程度。しかしD級の依頼は1日で8,000円程度、半日で5,000円程度と一気に上がる。

 生活も大分ましになるだろう。

 現在は8人部屋で自分のスペースはベッドだけという生活。これが自分用に一室借りる事も出来るようになる。


 釣り道具入手にももっと金をかけられるようになるだろう。

 どうせこの装置をごまかす事は出来ない。ならいい方に考えよう。


「それでは能力を測定します。エイダンさん、この水晶球を利き手で握るように持って下さい。力はあまり入れなくて大丈夫です」


「わかりました」


 俺は水晶球に右手を置いて軽く握る。水晶玉のひんやりとした感触。

 水晶球が一瞬白い光を発した。動作も記憶にあるものと同じようだ。


 白い光ということは魔法属性がバランス良く備わっているという事を意味する。

 魔法属性は前世と同じなら火・土・水・風の4つ。

 火が優勢なら赤、土が優勢なら黄、水が優勢なら濃い藍、風が優勢なら水色になるはず。


 チッチッチッ。装置がそんな音を出して小さく振動し始める。

 どうやらこれは印字タイプの装置のようだ。紙に能力を一通り打ち出すという表示形式。

 前世では他に幻視方式といって、操作者の脳裏に能力を伝えるタイプのものがあった。

 その場合は操作者が専用のカードを用意して伝わった能力を書く事になる。


「もう水晶球から手を離して大丈夫です」


 クリスタさんの言葉で俺は手を離す。

 さて、結果はどうなった。印字の音はまだ続いている。結構長い。

 この世界の装置は印字が遅いのだろうか。それとも……


 俺は黙って結果を待つ。

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