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今世はのんびり釣りをしたい ~元技術者で今は冒険者の、微妙にままならない日々~  作者: 於田縫紀
第4章 廃坑調査

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第52話 最初の休憩

 ミーニャさんとジョンが戻ってくるまでの時間が空いた。

 この時間を使って、少しこの先を確認しておこう。


「魔力探査と透視魔法を使って、この先を確認してみます」


 一応、クリスタさんに告げておく。


「お願いします。もし必要なら、これにメモしてください。この略図は写しですから、書き込んでも問題ありません」


 クリスタさんから渡されたのは、以前にも見た三枚組の坑道の略図だ。

 これにメモを取っていいなら、大分楽でいい。


「ありがとうございます。使わせて貰います」


 魔法収納(アイテムボックス)に入れて、念のため複写魔法でさらにコピーを作っておく。

 こうしてコピーの方を使えば、必要に応じて何枚でも使えるから。


 さて、それでは確認だ。

 俺は床や壁、天井を含む坑道に対して、手前から透視魔法で確認を開始した。


 ◇◇◇


 略図の通り、ここの坑道はかなり規則的に造られている。

 この山の内部、ほぼ現在の高さの地層にある鉱脈を、この本坑と採掘坑で掘っていく形だ。


 本坑はほぼ標高が一定で高低差がなく、断面もほぼ一定。

 これは鉄鉱石を運搬する都合を考えてのことだろう。

 採掘坑は鉱脈の高さによって、多少上に行ったり下に行ったりする。なお長さはどれも大体60m程度。


 そして魔物は……大きいのはいないようだ。

 というか第1採掘坑との分岐から先、魔物や魔獣の魔力、そして姿を確認できない。

 第2採掘坑分岐付近までを確認したところで、ミーニャさんとジョンが戻ってくる。


「倒したのニャ。倒すより、死骸を集めて魔石が取れる部分だけにするのが大変だったニャ」


 そう言って、見覚えのある風呂敷風の袋から何かをどさっと床に出す。

 見るとコウモリの頭部だ。


「全部燃やして魔石を取るのと、袋の洗濯をお願いするのニャ」


「わかりました」


 クリスタさんが魔法を発動する。

 コウモリの頭部が消え、そして袋についていた汚れっぽい染みが消えた。


「魔石は回収しました。またゾンビバットは素材にならないので完全熱分解し、空気中に廃棄。運送袋は洗浄して乾燥させてあります」


「ありがとなのニャ」


 ミーニャさんは袋をささっと畳んで、ポーチにしまい込む。

 しかし、ちょっと待って欲しい。


「今の魔法、魔法をいくつ同時発動させたんですか?」


 ミーニャさんは今のクリスタさんの魔法に疑問を持っていないようだ。

 ジョンは魔法使いではないから、何も感じないだろう。

 しかし魔法使いである俺は知っている。

 同時に魔法を使うという行為が、どれだけ難しいかを。


 魔法を使うということは、その効果を強くイメージする必要がある。

 同時に別の結果を強くイメージするというのは、基本的に不可能だ。


 例外として並列思考を使えば、並列思考可能な数だけ同時に魔法を発動させることが可能だ。

 しかし今、クリスタさんが起動した魔法は最低五つ。

 熱分解魔法、解体魔法あるいは転送魔法、収納魔法、洗浄魔法、乾燥魔法。


 もちろん完全に同時に発動させているわけではない。

 コウモリの頭から魔石を取り出した後に収納魔法と熱分解魔法は発動しているし、洗浄魔法の後に乾燥魔法が発動している。


 ただ、今の処理は全部で一秒もかかっていない。

 その間にコウモリの頭から魔石を取り出すところから、袋を乾かすところまでの全てをやっている。

 並列思考を使っても、これはちょっと難しい。

 少なくとも俺なら、四~五秒はかかる。


「エイダンさんは気づきましたか。実は時間圧縮魔法を使って、魔法の発動から効果発現までの時間を圧縮しています。並列思考を使用して同時にやるより、原理的には簡単ですから」


 時間圧縮魔法!

 確か、時間操作可能な魔法はとんでもなく高難易度な魔法だ。

 同じ時間を扱う魔法でも、ただ過去の時間に起きたことを見聞きするだけの時間遡行魔法と比べて、ずっと難しい筈。


 でもよく考えれば、クリスタさんは時間凍結なんて魔法も使っていたのだった。

 エダグラの冒険者ギルドを封鎖した時に。


 決めた。取り敢えず気にしないことにしよう。

 どうせこの人の魔法が論外なのは、少なくともここにいる皆の共通認識なのだ。

 だからまあ、触らぬ神に祟りなしということで。

 言葉の意味が少し違うかもしれないけれど。


「とんでもない高度な魔法を使えるんですね」


「魔法使いを長年やっていますから」


 エルフにとっての長年とはどれくらいなのか、確かめておきたい気がする。

 でも今はとりあえずやめておこう。

 何か問題が発生したらまずい。


「一仕事したら、おなかが空いたのニャ。少し小休止してエネルギー補給をしておきたいのニャ」


 ミーニャさんの食意地が出てきた。

 ちょうどいいかもしれない、そう俺は思う。

 ゾンビバット討伐がどんな感じだったのか、出来ればここで聞いておきたい。

 俺はまだ、ミーニャさんがどれくらい強いのか知らないから。


「時間的には余裕があります。しかし食事は冒険者ギルドの標準規定に沿った量のみ準備してあります。ここで間食を取ると、昼食か夕食が少なくなりますが、よろしいですか」


 なるほど、冒険者ギルドが準備した食事は規定量というわけか。


「問題ないのニャ。ということでエイダン、お願いなのニャ」


 そしてミーニャさんは、俺が持ってきていることを疑っていない。

 その通り、十分なだけ持ってきているけれども。


「小魚の南蛮漬けと御飯でいいですか」


「勿論なのニャ。お願いするのニャ」


 なら仕方ない。

 食事用に、まずはテーブルと椅子を出す。


「テーブルまで持ってこられたのですか」


「椅子に座る方が楽なので」


 家にあるのを、そのまま持ってきただけだ。

 一昨日、三人で行った魔魚カンディルー討伐と同じで。


 そして現時点で反省事項がひとつ出来た。

 俺が持ってきた補食類、小休止でこういったスタイルで食事をするのは、少々面倒な気がするのだ。


 現在用意してあるのは、朝食や昼食、夕食に付け足して食べることを前提にした、追加のおかずと追加の御飯。

 こうやって小休止で食べるには、適していない気がする。


 小休止なら、もっと簡単に食べられる方がいい。


 よし、次の休憩までにはおにぎりを握っておこう。

 というか御飯は基本的に間食と補食用だから、全部おにぎりにしておいた方が楽そうだ。

 でも天丼や海鮮丼用に、ある程度は握らずに残した方がいいか。


 おにぎりの種は、焼いた干物をほぐしたものでいいだろう。

 味醂干しと普通の干物、両方とも使って。

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