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今世はのんびり釣りをしたい ~元技術者で今は冒険者の、微妙にままならない日々~  作者: 於田縫紀
第4章 廃坑調査

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第50話 坑道入口へ

「広いですね、この池は」


 形は概ね長方形で、短辺が500m、長辺が1km近くある。


「廃坑から出る毒水を他に漏らさず蒸散させるには、この広さが必要でした。もちろん魔法陣や魔術式で蒸散を補助していますけれど」


 魔法で蒸散させるか、それならば。


「毒の成分が一緒に蒸散して空気中に漂う、なんて事はないですか」


「水以外の成分の蒸散を抑える魔術式も書き加えられています。ですからここに百年単位で生活しない限り、問題は出ない筈です」


 なかなか高度な処理をしているようだ。

 さて、毒水とされているこの水、成分はどんな感じだろう。

 そしてこの沈殿池周辺の状態は……。


「水は透明で綺麗に見えるニャ。でも藻や草が生えていないという事は、かなりの汚染状況なのニャ」


 ミーニャさんの言う通り、水は透明で澄んでいる。

 そして水中及び岸辺に植物が生えていない。


 これだけならまあ、鉱山から出てきた水の沈殿池にありがちな事だ。

 しかし俺は、更に幾つかの事を感じ取っている。


「水が重金属に汚染されているんでしょう。ただそれだけじゃない感じがします。魔素が濃くて、なおかつ魔素そのものがかなり汚染されているように見えます」


「エイダンさんの言う通りです。確かに重金属に汚染されていますが、これは通常稼働中の鉱山と同程度で、処理担当がついて魔法的に管理すれば問題無く処理できるでしょう」


 そう、重金属汚染についてはその程度だ。

 つまり問題は魔素の方にある。


「この魔素は、どう汚染されているか、エイダンさんには見えますか」


 俺はそういった分析の専門家ではない。

 それでもここまで汚染されていて、なおかつ骨魚(スケルトンフィッシュ)が出てきたとなれば。

 わからない方がおかしい。


「アンデッド系の汚染ですね。汚染された魔素(マナ)が水とともに流れてきて、ここで溜まっていたようです。大部分の魔素(マナ)は水の蒸散と同時に浄化されたのでしょうが、一部が凝集して骨魚(スケルトンフィッシュ)になったのでしょう」


 そう、アンデッド系の魔素(マナ)汚染だ。

 場所によっては瘴気なんて呼び方もする。

 今はクリスタさんの魔法が効いているから問題無いが、本来なら人間に限らず、生物は近寄らない方がいいタイプの魔素(マナ)汚染だ。


「私もそう判断します。何故アンデッド系に汚染された魔素(マナ)が、坑道内に発生しているかはわかりませんけれど。アンデッドを生むような事故は、この鉱山では発生していない筈ですから」


 確かにこれは異常事態だろう。そう思った時だ。


「エイダン、悪いが説明して貰っていいか。アンデッドは適切に葬られていない死骸や死体から発生すると聞いてはいるけれどさ。なら毒水や魔物発生で、元々いた動物が死んで発生するなんて事はないのか」


 なるほど、ジョンの疑問はもっともだ。

 詳しくない人ならそう思っても不思議では無い。

 なら説明するとしよう。


「死骸や死体がアンデッド化するには、そこに呪いが必要となる。呪いには、強い未練や遺恨、怨念等の感情や、あるいは禁止されている魔術的・魔法的儀式が含まれる。つまり鉱山内で、ただ小動物が死んだ程度では、アンデッドが発生する事はない筈なんだ」


 何せ俺の前世は神殿技術者だ。

 こういった関係については、一般人以上に詳しいと自負している。


「それでもアンデッドがいるという事はニャ。誰かそういった儀式をしたり、呪いを振りまいたりした奴がいるのかニャ?」


「今はまだわかりません。ただその可能性は高いでしょう。そしてこの場所では、それ以上わかる事は無さそうです」


 アンデッドがいそうな事については、既にミーニャさんから聞いている。

 だからここまでは既知の情報に過ぎない。


「それでは行くかニャ。カサクラ廃坑の本坑道でいいかニャ」


「ええ、それでお願いします。ただ坑道入口前で一度止まって下さい」


「わかったニャ」


 ミーニャさんは堤防上を左側、村と山の接点方向へと歩き始める。

 俺はその後ろを歩きつつ、前方を警戒。

 しかし魔物や魔獣が出てこないまま、坑道入口に到着した。


 岩壁が煉瓦で補強してあり、そこに坑道への金属扉がついている。

 青銅製で頑丈かつ重そうだ。

 そして、その中から……

 俺は透視魔法を起動する。


「いますね、魔物が。それも大量に。ゴブリンゾンビ8匹に、ポイズンスライム、ゾンビバット、ポイズントードといったのが、わんさか」


 数えるのが無理、という位に大量だ。

 この扉を閉めきって、そこそこの期間が経ったせいだろう。

 その結果、出てくる事が出来ない魔物が溜まった状態だ。


「エイダンさん、この扉を開ければ、電撃で魔物を一掃できますか」


 可能だが、ちょっとばかり問題がある。


「扉が金属なので、開けた人が感電してしまいます。それさえ何とか出来れば、入って50mくらいまでの魔物は対処可能です」


 それくらいまでなら、この坑道はまっすぐだ。

 だから洞窟中央を意識して電撃魔法を飛ばせば、ほぼ洞窟全体の魔物を感電させる事が出来る。


 ただし電撃魔法は、射線近くに導電体があれば、そちらにも影響を及ぼしてしまう。

 そして魔物が出てくるのを防ぐためには、扉を開けた直後に電撃を飛ばす必要がある訳だ。

 つまり扉を開けた人も、扉を通じて電撃を受けてしまう。


 ただしクリスタさんは、面談室の扉やこの村の門扉を魔法で開けている。

 だからここの扉も問題ない筈だ。


「わかりました。扉は私が魔法で開けます。エイダンさん以外は、扉から10m程度離れて下さい」


 やはりクリスタさん、扉を魔法で開けられるようだ。


 クリスタさんの言葉を受け、ジョンとミーニャさんがそれぞれ俺の後ろ左右についた。

 万が一、魔物が俺を襲った場合の事を考えてだろう。


「それではエイダンさん、準備はいいでしょうか」


「はい」


 電撃魔法なら、いつでも意識した通りに飛ばす事が出来る。


「それでは扉を開けます」


 ガチャッ、ガチャガチャ。

 そんな音がした後、扉が一気に開かれた。


『電撃』


 俺は開いた扉の中央を通り、真っ直ぐ飛ぶ電撃を放つ。

 ドドドドドドドン!

 坑道内で轟音が響いた。

 電撃が周囲の壁や魔物を連続的に直撃した音だろう。

 みるみるうちに洞窟内の魔力反応が減っていく。


 そして魔物の反応は消え失せた。

 少なくとも電撃魔法が飛んだ50mちょっとの範囲には、もう魔物がいないと断言出来る。


「念のため、換気をしてから進みましょう」


 クリスタさんの言葉とともに、風が坑道内から吹いてきた。

 タンパク質が焦げた匂いに、一瞬むっとする。

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