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今生はのんびり釣りをしたい ~元技術者で今は冒険者の、微妙にままならない日々~  作者: 於田縫紀
第1章 最初の釣りに至るまで

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第5話 理由不明な呼び出し

 冒険者ギルドに到着。そこそこ混んでいたが、10分ちょっと待ったところで順番が来て無事受付へ。

 依頼達成証を出して確認して貰ったところ。


「エイダンさんには最高評価の追加報酬が出ています。なので今回の報酬は1,000円をプラスして2,000円となります。金額を確認したらこちらの領収書にサインをお願いします。文字が書けない場合はこちらで代筆しますけれど、大丈夫でしょうか」


「大丈夫です」


 2,000円を確認、備え付けのペンでサインをしつつ考える。

 お金が入ったのだ。釣りに使う糸を買いに行こう。あとは明日からの昼食用のパンも。


 しかし俺は昨日来たばかり。このドーソンの街の何処に何があるのか知らない。

 知らなければ聞いてみよう。という事でサイン済みの領収書を渡すついでに受付嬢さんに尋ねる。


「領収書はこれでいいでしょうか。あとこの後、パンと出来るだけ丈夫な糸を買いたいのですけれど、この近くでお勧めの店はあるでしょうか?」


「エイダンさんは文字が読めるのですね」


 領収書に自分で記名した事でわかったのだろう。

 そして周囲には顔見知りはいない。だからここで知られても問題はない。


「はい」


「ならこちらをどうぞ。ドーソンの街に初めて来た冒険者の方にお渡しする案内図です。学校の生徒さんは文字の読み書きが出来るようになってから渡されるのですが、エイダンさんはもう読めるでしょうから」


 A4くらいの紙に手書きで道や店が書いてあるものだ。

 結構デフォルメしてあるがなかなかわかりやすそうで助かる。


「ありがとうございます」


 俺はお金を魔法収納(アイテムボックス)に仕舞い、頭を下げてカウンターを辞す。

 そしてそのまま受付内にあるベンチに座って案内図を確認。


 この街には釣り道具店は無いようだ。少なくともこの案内図には載っていない。

 そういえばバラモさんも言っていた。この辺では釣りをする奴がほとんどいねえ、と。

 となると糸を売っていそうなのは服・布を扱っている店か、それとも冒険者用の道具を扱っている店あたりだろう。


 ソウギョ相手なら糸は葉の束の中に隠せる。だからそこそこ太い糸でいい。

 ただそれ以外の魚を釣るのなら、細くて強い糸が必要になるだろう。

 なら服や布を扱っている店が正解だろう。


 ソウギョの仕掛けは針と糸があればそれでいい。

 ただ釣った魚を美味しく食べるのは調味料が必要だ。

 塩だけでは味気ない。それに海が近いのだ。海水があれば塩は割と簡単に作れる。

 ただ塩を作る為に使う鍋とか、ソウギョを料理するのに使うまな板、包丁、鍋、皿なんてのも考えたら必要だ。


 なるほど。何も持っていない事に今更ながら気がついた。

 今の俺の持ち物は服と着替え、下着3組、家から持ってきた堅パンだけ。

 魔法があるから収納は問題無い。しかし調理や生活に最低限の道具は欲しい。

 少なくとも釣った魚を調理して食べるのに必要な道具は。


 ならば……俺は決めた。

 儲けたといっても俺は2,000円しか持っていない。だから糸とパンを買ったら、あとは釣り針と必要な生活道具を作りまくろうと。


 パンフレットには店の特長も書いてある。

 パン屋ならば安いとかちょい高いけれど味がいいとか、かなりお高めだけれどバターたっぷりこの世の至福とか。


 今回はパン屋は『味はともかく安いし大きい。腹はとりあえず壊さない』でいい。

 そして糸は『服はややお高め。布や糸は揃っていて値段はピンキリ』な店でいいだろう。


 ◇◇◇


 パン屋はいかにも安そうな感じ。ただしそれなりにきっちり清掃してあるところは好感が持てる。

 物も作り方はそう悪くないように見える。

 味はともかく、というのは安い材料を使っているせいだろう。ふすま成分多めの雑味の多い粉がメインで、脂もバター等ではなく豚脂や牛脂を使っているというあたり。


 それでも田舎の農家の粥や堅パンに比べたらずっとましな代物だ。

 ここでは四角くて堅パンよりは柔らかそうなパンを2斤購入。1斤400円だったので800円。


 そして糸。店が大きく売っている種類が多かったので結構迷った。

 ただ意見を聞いた店員さんがマニアックかつ親切だった。各種類の糸について説明してくれた後。


「釣りに使うなら水に強く、かつそこそこ太くて強度がある糸がいいでしょう。値段を考えると当店ではこの混紡糸、200m巻き辺りがいいかと思います」


 そう言って彼が選んだのが1,200円の糸。なんと俺の残金全額分だ。

 しかしここで金を惜しんで失敗すると、全部が無駄になる。買える金額ならお勧めを選んだ方が無難だ。

 という事でお勧めの糸をそのまま購入。


 これで一文無しになってしまった。でもまあ、明日も稼げばいいのだから問題無い。

 明日以降の為に他の店も見て回ろうかと思ったが、午後6時の鐘が鳴り始めた。

 だから俺は寄り道を諦め、冒険者ギルドへまっすぐ早足で向かう。


 急ぐのは夕食の時間が近いからだ。

 初心者講習の夕食は午後6時30分から7時30分の間。この間ならいつでも食べられるというのが原則だ。


 しかし実際は遅いと自分の分が残っていないという事が往々にしてあるらしい。

 村から冒険者ギルドへ歩いてくる途中、護衛をしてくれたクレイグさんが言っていた。

 だから急ぎ足でまっすぐ冒険者ギルド1階奥にある食堂へ。


 午後6時30分の鐘が鳴る前に到着。

 しかし既に食堂の扉の前はごった返していた。無秩序な混乱、という感じで。

 列を作るとか順番という習慣というか知識がまだ無いのだろう。そういった事を学ぶのもまた教育だ。

 そう考えると初心者講習って結構大変だなと思う。教える方が。


「よおエイダン、午後はどうだった。稼げたか?」


 人混みの外れからジョンが声をかけてきた。

 一緒にキヌル村から来た1人で、俺とは割と仲が良い。


「1,000円だけれどな。川岸を歩いてゴミ拾いだったけれど」


 追加報酬のことはあえて言わない。


「似たようなものか。こっちは街のゴミ収集でやっぱり1,000円だ。畑仕事と比べて楽なのはいいが臭いがなあ」


 うまく仕事にありついたようだ。

 ならジョンはあの掲示板前の混乱を乗り切ったわけだ。どうやったのだろう。気になる。


 ただ聞くと俺の話もしなければならなくなるかもしれない。

 そうすると実は文字が読めて魔法も使えるなんてのがバレてしまう。


 聞かない方が正解だ。そう思ったところで食堂の扉が開いた。

 中へなだれ込もうとする生徒。しかし。


「オラ! そんなんじゃ中へ入れないぞ。ちゃんと並べ! ここにいる分くらいは十分あるし盛るのはこっちだ。だからここでの順番の前後ろで量が変わることはねえぞ!」


 食堂の中から顔を出したのはポール教官だ。現役のB級冒険者で初心者講習では戦技全般を担当している。

 冒険者は上からABCDEと級で区別されている。B級となればその地区トップクラスの冒険者だ。


 ちなみにA級は国でも数人というレベル。C級が中堅でキヌル村の出張所辺りでも1人は常駐している程度。

 D級はパーティでならそこそこの魔物討伐も許可。E級は魔物討伐や護衛等、戦闘を行う業務には基本的に参加できない見習い、つまり今の俺達等だ。


 体格でも筋肉の迫力でも講習生が敵うような相手じゃない。あっさり混乱はおさまり列が出来る。

 なるほど、社会常識の類はこうやって教育する訳か。確かに効果的だ。教官は大変だろうけれど。

 なんて思ったらその教官がこっちを見る。目があった。

 少なくとも講習では俺は普通の生徒のふりをしていた。問題も起こさなかった。だから目をつけられる事はないはずだ。

 そう思ったところでポール教官が口を開く。


「それとエイダン。お前はこの後ちょっと話があるそうだ。食べ終わったら寮へ戻らないでギルド受付へ顔を出せ」


「わかりました」


 なんだなんだ何事だ! そう思っても何もわからない。だからとりあえず普通の調子でそう返答しておく。


 何だろう。わからないまま並んで夕食を受け取り、そして食べる。

 メニューそのものは野菜スープと大麦粥という貧乏食。しかしスープからは肉の風味がする。

 きっと骨とか軟骨等の食べられない部分を煮込んで出汁としているのだろう。

 その分キヌル村の家で食べていたものより美味しい。


 それにしても何で呼び出されたのだろう。

 ポール教官がいるので周囲は静かだ。

 おかげで他の講習生と話して情報交換をするなんて事も出来ない。

本日の更新はここまでです。

明日からは、1日1話、毎日7時更新の予定となっています。

(今月分は予約投稿を完了済みです)

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