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今世はのんびり釣りをしたい ~元技術者で今は冒険者の、微妙にままならない日々~  作者: 於田縫紀
第4章 廃坑調査

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第49話 まずは沈殿池へ

 川沿いの道の先に、魔物を防ぐ村壁が見えた。

 道の延長線上には村門らしきものも見える。

 しかし門は開いておらず、衛士もいない。


 クリスタさんの移動速度が落ちた。

 どうやらここで止まるようだ。

 俺も速度を落とし、そして門の前で止まる。


「誰もいないようですね」


 人間ならば魔法を使えなくても、ある程度固有の魔力反応を感じ取れる。

 たとえ村壁や村門の向こう側にいたとしても、俺ならその魔力反応を捉えられる筈だ。

 しかし周辺には、俺とクリスタさん以外の魔力反応はない。

 つまり、この門や村壁の向こう側は無人だ。


「ええ。カサクラの村は鉱山とともに閉鎖されました。廃坑となった場所から魔物が出てくるおそれがありましたから。ここから全員で行きましょう」


「わかりました」


 ミーニャさんとジョンを魔法収納(アイテムボックス)から出す。


「もうついたのかニャ」


「みたいですね」


 周囲を見回すミーニャさんとジョンに、クリスタさんが告げる。


「ここはカサクラの村の村門です。廃坑から魔物が出てくるおそれがあった為、村人を移住させた後、門と壁を封鎖しました」


「なら扉の向こうは……魔物や魔獣の気配はしないのニャ」


 ミーニャさんもわかるようだ。

 そう、人間だけでなく、魔物や魔獣の魔力反応もない。


「その通りです。ただ、この門の中に入ると、廃坑や沈殿池はすぐです。ですから、ここから隊列を組んでいきましょう」


「了解ニャ」


「わかりました。それじゃエイダン、すまないが俺の槍と弓、矢筒を頼む。矢はとりあえず20本で」


 ここで装備するようだ。

 一応、どれも鎧の肩や背中に装着できるよう作ってあるから、問題はない筈だけれど。


「わかった」


 20本入りの矢筒、弓、槍の順に出して渡してやる。

 ついでに俺も黒色の鱗鎧を着装する。


 ちなみに俺の鎧は一瞬で着装することが可能だ。

 着装した状態をしっかり認識した上で魔法収納(アイテムボックス)に入れると、着装状態になるように出すことが出来るようになる。


 この方法を使えば、一瞬で着替えなんてのも可能だ。

 何に使うかはまあ、置いておこう。

 この世界では礼装と作業衣を一瞬で着替える必要は、多分ないから。


「それでは行きましょう。先頭はミーニャさんで、その次にエイダンさんがついて、適宜遠視魔法で前方を索敵して下さい。私が三番目で、ジョンさんが殿をお願いします」


「わかったニャ」

「わかった」

「わかりました」


「それでは門を開けます」


 クリスタさんが門扉に手を当てる。

 何か魔力が動いた後、扉がゆっくり手前に動き始めた。


 ◇◇◇


「まずは沈殿池へ向かいます。毒水が廃坑から出ていると報告にはありますが、今も毒水が出ているのか、毒の種類に変化が無いか、調査した方がいいでしょうから」


 クリスタさんがそう指示したので、建造物が並ぶ中を通って、北側の沈殿池に向かう。


 建物はどれも煤けた感じだ。

 よく見ると、所々壊れた場所もある。

 ただ、これくらいの壊れ具合なら、俺程度の魔法使いがいれば修復可能。

 つまり、ある程度手を入れれば、この建造物群はまだまだ復活可能だ。


「50mの範囲に人、魔物、魔獣の反応は無し。危険そうな場所も無し」


「了解ニャ。次の交差点を右に行くニャ」


 俺達の会話と足音の他は、風が立てる音だけ。

 静か過ぎて、少々不気味だ。


 そして歩いて行くと、高さ2m位の堤防のようなものが見えてきた。

 沈殿池だ。

 この向こう側に、明らかな魔力反応と、濃い魔素(マナ)の気配。


 透視魔法を使用して正体を確認する。

 見えた、これだな。


「堤防の向こう側、沈殿池に濁った魔力を感じます。対象は骨魚(スケルトンフィッシュ)です。確認出来るのは3匹」


 骨魚(スケルトンフィッシュ)は、その名の通り、魚の骨とヒレだけという形状をしたアンデッド系の魔物。

 不浄な魔素(マナ)が溜まった水場に発生し、水面に近づく人間を襲う。

 教本には、そう書いてあった。


「了解ニャ。クリスタ、どうするニャ?」


「倒してから、水質や魔素(マナ)の調査をしましょう。倒すのはミーニャさん、お願いしていいですか」


「了解ニャ」


「それでは堤防直近まで皆で行きましょう。そこから先は、まずミーニャさんに骨魚(スケルトンフィッシュ)討伐をお願いします。なお、毒水に触れても大丈夫なよう、今のうちに対毒魔法をかけておきます」


 クリスタさんの魔力が広がって、ミーニャさんだけでなく、俺達全員をさっと包む。

 これは俺が知らないタイプの魔法だ。


 毒の種類にかかわらず、何にでも使えるような対毒魔法なんてのは、普通は存在しない。

 毒を分析して、どうすれば無力化出来るかを知った上で、その毒を中和可能な種類の対毒魔法を使用するのが一般的だ。


 しかし、今の対毒魔法は、魔力の感触からして、そういった特定の毒を無効化するタイプでは無さそうだ。

 ミーニャさんにかかった魔法が、毒水の近くでどう反応するか、注意して見てみよう。


 ミーニャさんは軽くジャンプして、堤防の最上部へ。

 堤防の向こう側、沈殿池の中を遊泳している魔力が、ミーニャさんに気づいて動き始める。


「敵は3匹、いずれも骨魚(スケルトンフィッシュ)です」


「了解ニャ」


 ミーニャさんは、ごく普通に自然体で立っているように見える。

 ここから見ると、後ろ姿だけれど。


 骨魚(スケルトンフィッシュ)が、ミーニャさんに近づいてきた。

 そして、一気に水面からジャンプして、ミーニャさんを襲う。


「ニャニャニャ、っと」


 ミーニャさんは軽いステップで左に動くと同時に、右手をささっと高速で振った。

 俺の目でも、魔法を使わないと捉えられない位の速さだ。


 襲いかかった骨魚(スケルトンフィッシュ)は、3匹ともミーニャさんの右手に跳ね飛ばされた。

 堤防を越え、俺達の斜め右前方5mくらいのところへと落ちる。


 見ると3匹とも、魚ならエラがある部分で前後に切り離されていた。

 どれも少しだけバタバタ動いたが、すぐに動きを止める。


 なるほど、確かにミーニャさん、強い。

 骨魚(スケルトンフィッシュ)だって、1匹2~3kgはあるだろう。

 それが飛びかかってきたのを、片手の振りだけで仕留めて、なおかつ安全な場所に飛ばしたのだ。

 どう考えても、これは普通では出来ないと思う。


「終わりニャ。エイダン、他に何かありそうかニャ」


 ミーニャさんは、いつも通りの感じでそう言うと、俺の方を見た。

 俺は池をもう一度確認。

 魔力反応は無く、透視魔法で池全面を見てみても、動くものは無い。


「動きがあるものは何もないです。魔力反応もありません」


「エイダンさん、骨魚(スケルトンフィッシュ)を回収しておいて下さい。私達も水面近くまで行きましょう。池の水を調べる必要がありますから」


「わかりました」


 骨魚(スケルトンフィッシュ)魔法収納(アイテムボックス)に収納し、そして堤防を上って、沈殿池へ。

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