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今世はのんびり釣りをしたい ~元技術者で今は冒険者の、微妙にままならない日々~  作者: 於田縫紀
第3章 次の犠牲者

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第46話 明日早朝にやるべきこと

 常備菜として取っておくつもりだったフライと甘露煮を、かなり消費してしまった。

 もちろんミーニャさんの『おかわり、ないかニャ』攻撃のせいだ。

 6割は残ったので、まあ許容範囲内ということにしておこう。


 さらにジョンに、クリスタさんについての説明をしておいた。


「あの人はエルフの、それもかなり老練な魔法使いのようだからさ。しれっととんでもない魔法を使っても、気にしないほうがいい。多分、魔法の常識が間違っている」


 あと、ついでにこういった参考事項も付け加えておこう。


「ミーニャさんが名前を呼ばないのも、魔法的にそれなりの理由がある。名前を呼ばれると感知する、という魔法が存在するからさ。だから、そのクラスの魔法使いの話題を出す時は、あえて名前を呼ばないで指示代名詞で誤魔化す事が多いんだ」


「そんな魔法があるのか。エイダン、よく知っているな」


「C級試験を受けるために、全部の教本を最後まで読破したからさ。結構大変だった」


 速読魔法なんて事は、とりあえず言わないでおく。

 そしてそれ以外に、ミーニャさんからこんなお願いも出た。


「もしエイダンの魔法収納(アイテムボックス)に余裕があれば、私の追加武器を持っていって欲しいのニャけれど、いいかニャ」


 そのくらいは、全く問題ない。


「大丈夫です」


 そして、ダブって購入しないよう付け加えておく。


「矢については明日、追加を買ってくるつもりです。ある程度は自作もしようとは思っていますけれど」


 100本程度買ってきて、長さや重量バランス、使い勝手を確認した後、自分でも作ってみるつもりだ。


「お願いするのは、私の個人武器ニャのニャ。幾つか持って行けたら、場所と相手によって持ち替える事が出来て便利ニャのニャ」


 なるほど。

 確かにジョン用にという事で、色々な武器を持ってきていたし、クリスタさんも言っていた。


『剣も槍も、人並み以上に使います』


 それなら、状況に合わせた武器なんてのを持っていても不思議ではない。

 ジョン用に持ってきたり、ここで改造したりしたものの他にも。


「それでは持ってくるのニャ。まだ食べるから、食事はそのままにしておいて欲しいニャ」


 昨日と同様、さっと姿を消す。

 やっぱり塀を跳び越える最短ルートを使った気配。

 そしてしばらくした後、やっぱり夜逃げスタイルで戻って来た。


「使う可能性があるものを、ひととおり持ってきたのニャ。獣人用だから、ちょっとだけ重い武器が多いのニャ。だから、無理はしないでいいのニャ」


 確かに、持ってきた武器はどれもごつい。

 長さ1.8m位の金棒とか、2m位の柄がついている戦闘斧とか。

 全長1m位の一見普通の斧に見えるものは、同じ物が2つあるから、きっと片手用という事だろう。

 普通の人は両手で使うのだろうけれど。


 鉄の大楯もある。何というか、いかにも重そうだ。

 この前ジョン用に持ってきて、ジョンが選ばなかった短い槍、長弓も持ってきている。


「……よく持ってこれましたね。こんなに重そうな物ばかり」


「重い方がダメージは大きいニャ。重量は正義なのニャ」


 なるほど。確かに間違ってはいない。

 重い武器を使える腕力があれば、だけれど。

 やはり獣人は、普通人と腕力の常識が異なるらしい。


「これくらいなら問題ないです。持っていけます」


「あと今回は、重野営セットを持っていくと思うのニャ。あれは5人用で500kgあるのニャ。それと食料その他で、おそらく600kg位は運ぶことにニャるけれど、大丈夫かニャ」


 それくらいは余裕だ。

 しかし、知らない単語が出てきたので聞いてみる。


「重野営セットって、何ですか?」


「魔物・魔獣除け結界柱4本と、組み立て式の小屋のセットニャ。これの中なら、魔物や魔獣に襲われることはないし、外からの攻撃魔法も無効化されるのニャ」


「便利ですね。それなら夜間の見張りも必要ないですから。最近の上級冒険者は、そういうのを使うのが普通なんですか?」


 ジョンの言葉に、ミーニャさんは首を横に振る。


「重くて、普通のパーティは持ち運べないのニャ。通常は新規のダンジョンが出来た時の避難所用に使うのニャ。2頭立ての馬車で運ぶ必要があるので、冒険者ギルドや国の出先機関が持って行って設置するのニャ」


「つまり、エイダンの魔法収納(アイテムボックス)は、それだけ大容量って事ですか」


「B級で、それなりに万能な魔法使いでも、魔法収納(アイテムボックス)の容量は体重の2倍がいいとこなのニャ。カテリナがそう言っていたから、多分間違いニャいニャ」


 そう言えば、クリスタさんもそんな事を言っていたような気がする。

 でも鍛えれば、1,000kgまでは拡張出来ると俺は思うのだ。

 毎日16時間以上、フルに出し入れを繰り返していれば。

 あくまで前世での経験でだけれども。


「それに普通の魔法収納(アイテムボックス)は、生きたものを収納出来ないニャ。人間を生きたまま収納可能なんて魔法収納(アイテムボックス)は、聞いた事がニャいのニャ」


 これはまあ、神様に与えられた釣り用のチートだ。

 だから仕方ない。

 あ、でも聞いておきたい事が出来た。


「その重野営セットは、幾らくらいするんですか。これからの冒険者生活で使えそうなら、欲しいと思うのですけれど」


「市販はされていないのニャ。重くて、通常の冒険者パーティでは使えニャいから仕方ニャいニャ。

 ただ、構造はそう難しくニャいのニャ。組み立て式の頑丈(ニャ)小屋と、純銀の結界柱だけニャのニャ。だから、エイダンなら作れると思うニャ」


 よし、いいことを聞いた。

 これを手に入れれば、夜間に釣りに行った際、宿営するのが楽になる。

 二泊三日の間に構造を覚えて、自作出来るようにしておこう。

 銀を入手するのに、お金がかかりそうだけれど。


「食料とかは、ギルドの方で用意すると言っていましたよね」


「あ、そうニャのニャ。もちろんギルドの方でも、足りなくはニャい程度に用意するのニャ。でも、初心者講習よりは質が上ニャけれど、量はいまいちの可能性が高いニャ。エルフは食べなくても、周囲の魔力を吸収して生きていけるニャから、食に気を使わニャいのニャ」


 危ない危ない。これは聞いておいて良かった。


「わかりました。なら、パンや副菜をある程度用意しておきます」


(さかニャ)がいいのニャ!」


「はいはい」


 明日、釣ってこよう。


「それじゃそろそろ、ごちそうさまなのニャ。エイダンが来てから、食生活が向上したのニャ。それでは明後日から、よろしくなのニャ」


「わかりました。それではまた」


「お休みなのニャ」


 ミーニャさんが、塀を跳び越えるルートで消えていく。

 そして残ったのは、空の皿が大量。


「洗うのを手伝おうか」


「いや、これは魔法で出来るから大丈夫だ」


 収納して魔法収納(アイテムボックス)内で洗った方が楽だし、汚れない。


「あと、補食、相当多めに用意した方がいいな」


「ああ」


 ジョンの言う通りだ。

 今日もミーニャさん1人で、俺とジョンを合わせた倍くらいは食べきった。

 このくらい食べる事を前提に、相当量を用意しておく必要があるだろう。


「何なら、俺も金を出すから買ってくるか?」


「いや、後で大丈夫だ」


 明日の早朝は、舌平目拾いではなく、釣り歩きをすることにしよう。

 朝まずめは、間違いなく釣れる時間だ。

 砂浜より、港近くの深さがある場所の方がいいかもしれない。

 魔魚カンディルー相手ではなく、アジあたり狙いの投げサビキとか、カゴ釣りとかで。

 何なら、同時に投げ釣りの竿をセットするのもいいかな。


 よし、ならばそれにふさわしい仕掛けを作るとしよう。

 明日早朝に備えて。

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