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今世はのんびり釣りをしたい ~元技術者で今は冒険者の、微妙にままならない日々~  作者: 於田縫紀
第3章 次の犠牲者

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第45話 まずは夕食

 今日もミーニャさんとジョンの3人で、市場で買い物をしつつ俺の家へ向かう。

 ただし俺は、ただ歩いているだけではない。

 歩きつつも、魔法収納(アイテムボックス)内で料理中だ。


 これこそ正しい並列思考と、魔法収納(アイテムボックス)の使い方だろう。

 現場に急行しながら魔法収納(アイテムボックス)内の仕様書を読んで、足りない部品を魔法収納(アイテムボックス)内で作る、なんてのではなく。


 実はある程度の調理は、既に釣りをしながらやっている。

 下処理も済んでいて、魔魚カンディルーの大きいものも、頭を落として内臓を抜き、身についた血をさっと洗った状態だ。


 ここからナマズ丼、つまり蒲焼用は背開きにして、腹骨を魔法ですく。

 焼いてタレをつけて、また焼いてを繰り返してやれば蒲焼だ。


 さて、ヤプドフーの方は一回蒸す。

 蒸した後、バラバラにして骨を取り、フレーク状のナマズ肉にする。


 このフレーク状の肉を、本当は一日干して生乾き状態にするのだが、そこは乾燥魔法でささっと仕上げて。

 これを油で揚げて、ふんわりカリカリにすればナマズ側の調理は完成。


 ヤプドフーのソースは、青唐辛子とニンニク、ナンプラーと砂糖、ライム汁を合わせたもの。

 一応店で食べたことがあるから、味はなんとなくわかる。

 甘酸っぱ辛いいい感じに出来たので、多分これで正解だろう。


 キャベツの千切り、青マンゴーの細切り、タマネギも細切り。

 キャベツを敷いて、揚げたナマズフレークをのせ、上に青マンゴーとタマネギをのせてソースをかければ完成だ。

 このカリカリ感をなくしたくないので、ソースをかけるのは食べる直前にするけれど。


 もちろん、ごく普通のフライも作る。

 ついでにテンプラ風のフライも作っておこう。

 これは塩か天つゆでいただくつもりだ。


 甘露煮風は蒲焼があるから、今日は出さなくていいだろう。

 でも明日以降用の常備菜として作っておくのは悪くない。

 フライも大量に作って、常備菜としておこう。

 魔法収納(アイテムボックス)内に入れておけば、揚げたてサクサクのままだし。


 並列思考スキルをフルに使って、魔法収納(アイテムボックス)内での調理を続ける。


 これらのメイン料理の他、御飯を炊いたり、コラーゲンたっぷりなナマズスープ、いや魔魚カンディルースープを作ったりなんてのも。


 タルタルソース、天つゆ、蒲焼きタレも勿論必要だ。

 しかしこの辺は、実は以前料理を作った時の在庫がまだある。

 だから今日は、それを使うとして。


 家に帰った頃には、料理は完成していた。


「それじゃ食べながら、明後日のことについて話し合いましょうか」


「って、これから夕食を作るんじゃニャいのかニャ?」


「歩きながら魔法収納(アイテムボックス)内で作りました」


 えっ!? という顔で見るジョンとミーニャさん。

 いや、このくらいは問題ないだろうと思うのだけれど。

 クリスタさんあたりなら、絶対出来るだろうし。


 取り敢えず、並べた料理を説明しておこう。


「メインはこれ、御飯の上に魔魚カンディルーを甘辛く焼いたものをのせ、甘辛のつゆをかけたものです。あとこちらは天ぷら。こちらは大きいものの身を使ったもので、こっちは小さいのを寄せて揚げたもの、こっちは野菜各種です。これはこっちのつゆか、もしくはこの岩塩で。

 このカリカリふわふわは、魔魚カンディルーの身をほぐして揚げたものです。このタレをかけて、野菜と一緒に食べて下さい。こちらはお馴染み、魔魚カンディルーのフライ。これは魔魚カンディルーと野菜のスープです」


 分量は充分な筈だ。

 揚げ物が多くなってしまったのは、まあ、ちょっと反省はしているけれど。


「何か悪いな」


「材料のほとんどは、今回釣った魔魚カンディルーだからさ。野菜や米や調味料はミーニャさん提供だし」


 野菜や米がミーニャさん提供なのは、正しいと思う。

 1人で俺の3倍以上食べるから。

 そして、そのミーニャさんは……


「いただくのニャ!」


 思い切りよく蒲焼きにかぶりつく。

 うん、あのがっつき具合なら、味付けに問題はないだろう。


 それでは俺は、ヤプドフーをいただこう。

 天かすとか揚げ玉みたいなものを小皿に取り、上にナッツ、青パパイヤ、タマネギ、キャベツをのせて、ソースをかける。


 うん、カリカリだけれど、身がある部分はふわふわ。

 そして野菜とソースを合わせて、いい感じの味になっている。

 これはこれで、白飯に合う気がする。

 蒲焼き丼以外に白飯を用意しなかったのは、失敗だったかもしれない。


 そう思いつつ、今度は蒲焼きへ。

 鰻に比べると脂が弱く、その分魚っぽい味。

 これに甘辛ねっとり目のタレと御飯、合わない筈がない。


 そんな感じで、ある程度食べて一段落してから、ミーニャさんに聞いてみる。


「ところで今回の依頼で、ギルドで説明はなかったけれど、説明しておいた方がいいことって、何かありますか?」


「今回の依頼場所は廃坑ニャ。そして坑道は基本的に、高さ最低2m、幅も最低2mとなっているのニャ。資料でもそうなっているし、坑道の大きさは鉱山組合の共通規格だから、まず間違いないのニャ」


 なるほど、そんな規格がある訳か。


「そして、水に含まれている毒の分析結果があるニャ。それによると、いわゆる鉱毒の他、アンデッド系の魔素が確認されたのニャ。つまり、アンデッド系の魔物がいることが確実なのニャ」


 魔物について、俺は教本を一読した程度の知識しかない。

 だからミーニャさんに、疑問点を聞いてみる。


「アンデッドだと、光系統か聖系統の魔法が有効で、接近戦で効果的な攻撃は打撃になりますね」


「大量に出た場合は、エイダンの雷魔法にお任せなのニャ。ただ今のところ、入口から50メートルくらいの部分しかわかっていないのニャ。そしてその部分は、廃坑当時の情報だと、コウモリ(バット)カエル(トード)しかいないらしいのニャ」


「どうしてそれくらいしか、調べられていないんですか?」


 ジョンの質問に、ミーニャさんは頷く。


「冒険者不足のせいなのニャ。西部に常駐するB級パーティのうち、アクラ拠点のB級パーティ『赤い海岸』は、魔法担当が閉所恐怖症なのニャ。ドーソン拠点のB級パーティ『レニベスタ・アナイテ』は、魔法使いがいないので、こういった依頼には不適なのニャ。そして、不安材料が多くて、C級パーティには任せられないのニャ」


「って、俺はやっとD級ですし、ミーニャさんもエイダンもC級ですよね」


 確かに、ジョンの言う通りだ。

 しかし俺は、半ば答えがわかっている。


 ミーニャさんは、ため息をひとつついた。


「あれが一緒に行く限りは、まず生命の心配はないのニャ。あれは即死だろうと、時間が経っていなければ復活させられる位の魔法使いにゃ。ついでに言うと、脱出魔法も持っているニャから。何が出てこようと、逃げられないということはないのニャ」


「あれって、クリスタさんのことですか?」


「その名前は禁句ニャ」


 ミーニャさん、ジョンともに、お約束のやりとりをする。

 ところで、魔法のおかげで安全なら、こういう場合はどうだろう。


「魔法禁止措置が厳重に張ってあるとか、そんな迷宮(ダンジョン)なら、危険なんじゃないですか」


「魔法陣や術式で禁止措置を解除しながら進むだけなのニャ。実際、そういう例は過去にあったのニャ。それでカテリナが閉所恐怖症になったのニャ」


 知らない名前が出たので、一応聞いておこう。


「カテリナさんって、誰ですか?」


「さっき言った『赤い海岸』の魔法担当ニャ。攻撃から治療まで幅広い魔法を使える、優秀な魔法使いなのニャ。ただ、C級昇任試験の依頼として受けたカリギア遺跡の洞窟で、魔法禁止を解除した結果、閉じ込められていた魔ムカデ1,000匹以上が壁を破って、目の前に出てきてしまったのニャ」


 魔ムカデとは、長さ1m、胴の太さ直径10cmという大型ムカデ魔獣だ。

 魔法を使って土中に穴を掘り、獲物を倒すという性質がある。

 確かに、そんなのに襲われると……


「うわっ」


 ジョンは想像してしまったらしい。

 俺は何とか考えないようにして回避したけれど。

 ただ、参考までに聞いておこう。


「どうやって逃げたんですか」


「あれが強制冷却魔法をかけて動きを鈍らせて、あとは私がひたすら潰したり、切り刻んだりしたのニャ。油っぽい体液で、ぐちゃぐちゃになったのニャ」


 ちょっと待て!


「ミーニャさんも、いたんですか」


「アレと私と、カテリナの3人で行ったのニャ。取り敢えず、遺跡そのものの調査は完了したのニャが、それ以来、カテリナは穴とか建物の地下とか、そういった場所は一切NGになったのニャ」


「ミーニャさんは、大丈夫だったんですか?」


「魔ムカデは大きいけれど、動きは大したことがないのニャ。頭を潰せば、噛まれることもないのニャ。強制冷却魔法がかかっていれば、楽勝ニャ。ヌメヌメの体液に足を取られなければ、問題はないのニャ」


 とんでもないのは、クリスタさんだけではない。

 何となく、そんな気がしてきた。

 ミーニャさんも、かなり……


「それで、そろそろ(さかニャ)がなくなりそうなのニャ。フライでも焼き物でもいいから、おかわりが欲しいのニャ」

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