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今世はのんびり釣りをしたい ~元技術者で今は冒険者の、微妙にままならない日々~  作者: 於田縫紀
第3章 次の犠牲者

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第43話 今日の討伐の終わりに

 そして、午後4時過ぎ。本日7か所目の釣り場。

 トリック仕掛け&投げサビキでも釣れなくなってきた。


「そろそろここも(さかニャ)は終わりかニャ」


 ミーニャさんがそう言うと、


「そんな感じです」


 ジョンもそう返す。そんな状態だ。


 全くいないという事はない。

 まだ底の方にいくつか反応はある。

 しかし餌を底に垂らしても寄ってこない。ならばだ。


「それじゃ最後に、少し効率は悪いですけれど、動く獲物を追いかける習性がある魚用の仕掛けを試してみます」


 そう、ルアーだ。

 今日は1匹でも多く討伐する事を目的にしていたから、使う暇がなかった。

 しかし他の方法で釣れなくなっているし、時間的にももう最後。

 だからやってみてもいいだろう。


「どんな仕掛けなんだ?」


「これだ」


 作ったルアーの中で、一番小魚に近いタイプを出す。

 8㎝くらいの銀色と黒のシンキングミノーだ。


「魚を模した餌か?」


「ああ。これを水中で動かして、動く獲物に反応する魚を狙う」


 魔力反応で居場所はわかっている。

 だからその前を通りそうなルートを考え、風魔法を併用して目的の場所まで軽く投入。


 あとは底ぎりぎりを泳ぐような速度でだだ巻き(リトリーブ)

 透視魔法が使えるから、障害物をぎりぎり避けて泳がせるなんてのも簡単。

 いくつかある魔力反応の前を通して……


 よし、追いかけてきた。

 透視魔法でタイミングを伺いつつ、少しだけ巻く速度を落とす。

 食いついた瞬間、竿を引いて針をかけ(フッキングさせ)る。


 よし!


「ヒット!」


 手応えはかなり重く感じる。

 岩や流木などの障害物に引っかかったかと思うくらいだ。


 しかし透視魔法で魚がかかっているのが見えている。

 魔力反応があるので、魔魚に間違いないとも。


 それに昨日お試しで釣ったスズキよりは引きが弱い。

 だから強気で引っ張らせてもらう。


 竿を上げて魚を寄せ、下げつつ一気に巻いて、竿を上げて……を繰り返し手前へ。

 水面上に出た瞬間に冷却魔法を放って、動きを止める。


 全長40cmくらい。今日、他の場所でウキ釣りで釣ったものより大きい。

 魔魚カンディルーとしては最大級ではないだろうか。


「面白そうなのニャ。やってみていいかニャ」


 透視魔法と転送魔法があれば、障害物にルアーが引っかかっても問題はない。

 だからここで2人にも試してもらうとしよう。


「それじゃまずはミーニャさん、どうぞ」


 竿ごと仕掛けを渡す。


「ありがとニャ。(ニャ)げ方はさっきのウキ付きとおなじニャから……」


 ◇◇◇


 3人、交代で合計30投してみた。

 ミーニャさんもジョンもなかなか上手い。

2人ともキャストミスは10回中3回ずつだけ。


 そして餌で釣れない大型カンディルー、ルアーには弱かった。

 結果、ミーニャさんが1匹、ジョンも1匹、そして俺は3匹釣り上げる事に成功した。


 俺は透視魔法で、魔魚の居場所や水中の状況が見える。

 風魔法や水流魔法で投げる場所を調整する事も可能だ。


 その俺が3匹で、それら魔法を一切使っていないミーニャさんやジョンが1匹ずつ釣れている。

 これは結構すごい事ではないだろうか。


「こっちの方が面白いのニャ。ただ討伐として考えると効率は悪いのニャ」


「確かに小さいのも大きいのも同じ報酬ですからね。それじゃそろそろ終わりにして、帰りましょうか」


「そうなのニャ。あと今晩も当然、(さかニャ)パーティなのニャ」


「はいはい。ジョンも来るだろ、夕食。この大きいのはまた別の料理が試せそうだからさ」


「いいのか」


「3人で釣った魚だからさ、問題無いだろ」


 魔魚カンディルーの大きいのはナマズっぽい形だった。

 なら前世にあったナマズ丼を作れるかもしれない。

 捌いた身を蒲焼きにして白御飯の上にのせ、つゆをかけた料理だ。


 作り方はだいたい覚えているし、透視魔法と転送魔法を使えばさばくのも簡単だ。

 そして蒲焼きサイズの大型カンディルーも、ウキ釣りとルアーで9匹は確保している。


 いや、全部蒲焼きというのも面白くないか。

 骨を取った後にたっぷりの油で揚げて、青マンゴーとソースで食べるヤプドフーもいいかもしれない。

 帰りに青マンゴーとライム、適当なナッツを買って帰ろう。


「それならさっさと帰って、料理なのニャ!」


「その前に冒険者ギルドに寄りますけれどね」


「それは仕方ないのニャ」


 いや、仕方ないというのとはちょっと違う気がする。

 一応これは討伐依頼なのだし。


「それじゃドーソンの南門まで収納しますよ」


「楽でいいのニャ」


 何だかな、そう思いつつミーニャさんとジョンを魔法収納(アイテムボックス)して、そして俺は走り始める。


 ◇◇◇


 冒険者ギルドに入って、そのまま受付をスルーして面談室へ。


「それでは冒険者証を預かるのニャ。討伐証明は(さかニャ)そのままで出しても、魔石でもいいけれどどうするニャ」


 まずは冒険者証を出す。


「討伐証明は魔石でお願いします。ただごくごく小さいものもありますから、これで」


 即席だが魔法収納(アイテムボックス)内で鉄製の箱を作っておいた。

 何せメダカサイズの魔魚カンディルーの魔石は直径2mm程度と小さい。

 それでも1匹750円以上だから、無くさないように。


 本当はもっと軽い素材で作りたかった。

 しかし魔法収納(アイテムボックス)内にある素材では鉄が一番手っ取り早かった。

 木材だと隙間に小さい魔石が入ってしまうし、この程度のものに木炭由来魔法加工物質(カーボン)を使うのも何だし。


「ありがとニャ。それでは計算してくるニャ」


 ミーニャさんはそう言うと、事務室方向へと消える。


「そういえばあれ、何匹分あったんだ?」


「1,000匹ちょっとだ。一応数えてはいたんだが、途中でいくつか数え忘れた気がする」


 魔法収納(アイテムボックス)魔法も万能ではない。

 同じようでいて大きさが違うものがあると、別のものとして整理されてしまうのだ。


 同じ場所に入れて、魔法で数を数えてみても、


  〇 直径2mm~2.5mmの魔魚カンディルーの魔石 497個

  〇 直径2.5mm~3mmの魔魚カンディルーの魔石 354個

  〇 直径……


という感じで分けられてしまう。


 だから正確な数を知るには、それらを足し算しなければならない。

 流石に足し算がいくつもあると暗算では面倒だ。

 かといって紙とペンを出して計算するのも……。


 という事で『だいたいこれくらい』しか把握していなかったりする。

 それでも相手がミーニャさんやクリスタさんなら、数を誤魔化すことはない。

 だからきっと問題ない。


「あと今日の昼食や装備でかかった金額は、ちゃんと請求して三人で分けてくれよな。その辺はなあなあにしたくないからさ。エイダンが自作で作ったものは、材料費に手間賃を加えた金額で」


 うーむ、それはちょっと難しい。


「今日の昼食は魚の他は、以前ミーニャさんが持ってきた野菜や米や調味料を使っているからさ。金額がよくわからないんだ。俺としてはミーニャさんからの貰い物だし、ミーニャさん自身が一番食べるから、これでいいかと思うんだが」


「……確かにそれは難しいな。それじゃ取り敢えず、食事代についてはそれでいいか。それじゃ装備、竿とかあの仕掛けとかはどうなんだ」


 これもまた難しい。


「あれは俺の趣味の道具を兼ねている。ついでに言うと材料費は例によってかかっていない。その辺の流木や砂から作っているから。ついでに言うと、少なくともドーソンでは同じような道具を売っていない。だから参考価格も出せない。強いて言えば糸だけは買ったな。200mで1,200円のを」


 ジョン、渋い顔になる。


「何というか、会計的には無茶苦茶微妙かつ難しいな。本当は全て均等にして人数割りか、パーティ共有費から出すべきなんだが」


「今回はこんな感じだから、まあいいんじゃないか。実際俺自身は金を使っている訳じゃないから」


「まあ、そうするか。実は此処へ来る前に親父に言われていたんだ。パーティ内の金銭管理は、これでもかという位わかりやすくきっちりとしておけってさ。特にD級とかE級あたりのパーティだと、金銭関係で問題が起きて解散するなんてのが多いらしいから」


 なるほど。


「そういう事もある訳か」


「C級以上だと割とお金を持っているし、気にならないのかもしれないけれどさ」


 ジョンはそう言って、一拍おいて続けた。


「あともう一つ気になっている事があるんだ。今日の討伐、俺がD級としてふさわしいかどうかの試験も兼ねていたはずだよな。でもそんな試験っぽい事、全然していない気がするんだけれど」


 あっ! それは……。

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