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今世はのんびり釣りをしたい ~元技術者で今は冒険者の、微妙にままならない日々~  作者: 於田縫紀
第3章 次の犠牲者

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第41話 三度目のダグアル

 結局この後、3時間くらいかけて装備を作る事になってしまった。

 作った装備はこんな感じだ。

  〇 鎧

   ・ ミーニャさん用軽量タイプ

   ・ ジョン用鎖鎧(チェーンメイル)

   ・ 俺用鱗鎧(スケイルアーマー)

  〇 籠手(ミーニャさん用・鋼爪着脱可能)

  〇 短弓(ジョン用)

  〇 杖(俺用。鋼製で全長2m。重い)


 鎧がそれぞれ違うのは、

  〇 ミーニャさん用は近接格闘戦を念頭に、軽量で動きやすいことを最優先し、敵の爪や剣を防ぐことを目的とした

  〇 ジョン用は槍または弓を使う近〜中距離戦を想定し、刺突にも斬撃にもそこそこ強い鎖鎧(チェーンメイル)にした

  〇 俺は基本的に後衛なので、接近戦よりも弓や魔法を防ぎやすく、動きやすい鎧とした

という違いだ。

 これはC級冒険者ミーニャさんのアドバイスによるもの。


 そしてミーニャさんは鎧を全着装した状態で、動きを確かめている。


「これだけ軽いと理想の動きが出来るのニャ。明日は一日中着けて動きを覚えるのニャ」


 こういうところはミーニャさん、やっぱり冒険者だ。

 食意地の張った猫、といういつもの感じとかなり異なる。


 なお、これら武器や防具の価格については少しだけもめた。


「実際に買うとかなり高価だろう。本当にただでいいのか」


「そうなのニャ。少なくとも鋼の鎧よりはずっと高価な筈なのニャ」


 確かに手間と特殊な魔法は必要だ。

 しかし材料費は0だし、俺は武器や防具の製作で食っていくつもりはない。

 だから希望はこういう形だ。


「ただでお願いします。そのかわり、この装備の出所については一切口外しないで下さい。修理や改良も店に預けず、俺のところへ持ってきて下さい。それだけで充分です」


 これが俺にとっての絶対条件だ。

 前世と同じような生活になってはたまらないから。


 ある程度話し合った後、最後には2人とも折れてくれた。


「わかったのニャ。誰にも言わないし、(いミャ)はこのまま受け取らせていただくのニャ」


「ああ。いつか別の形で返す……と言いたいところだが、返せるあてがないな。今の状況じゃ。ただこれ以降は、かかった金はきっちり計算して請求してくれ。矢を購入するとか、食事の予備を買うとかした場合は。そういった費用はパーティ内で負担すべきだから」


 とまあ、こんな感じで。

 さて、装備を作って試したおかげで、夜遅い時間になってしまった。


「明日の朝はそれぞれ早いでしょうし、今日はこれで解散しましょうか」


 討伐に行くからではない。

 毎朝の舌平目拾いをやるから朝早いのだ。

 という本音はあえて言わない。


「そうニャ。それニャ明日はよろしくニャ」


「こちらこそよろしくお願いします」


 そんな感じで解散して……


 ◇◇◇


 そして翌朝。

 冒険者ギルドに集合して、南門まで歩いて、そこで2人を収納して現地まで高速移動。

 前回、ジョンと回らなかった釣り場で2人を出す。


「一瞬で違う場所ニャ」


「やっぱり変な感じがするよな、これって」


 南門まで行く間に説明したし、ジョンはこれで3回目。

 それでもやっぱり違和感は拭えないようだ。


 なおジョンもミーニャさんも、昨日作った鎧を着装している。


「今日の依頼ではずっと装着して慣れるのニャ。それにずっと着けていれば、具合が悪い場所も早めに気づくニャ」


「わかりました。俺もそうします」


 2人は一日中着装するようだ。

 ただ俺は着装しない。


「俺はしゃがんだり色々動くので、今日は鎧の装着はしないでおきます」


「エイダンは後衛だから、そこまでしなくてもいいのニャ。でも前衛は少しでも慣れておいた方がいいのニャ。場合によっては、その辺が生死を分けたりもするのニャ」


 ミーニャさん、こういうところは真っ当な冒険者だ。

 さて、それはそれとして。

 俺は魔法収納(アイテムボックス)から撒き餌のバケツと竿かけを取り出し、使えるようにセットする。


「とりあえずジョンは前回と同じ方法で釣ってくれ。それで釣れなくなったら、次のやり方を説明する」


 ジョンには、リールがついていない延べ竿を渡す。

 竿についている仕掛けは前回と同じ。

 まずはこれで、釣れるだけ釣ってしまおうという作戦だ。


「わかった」


 ジョンは早速餌を撒いて釣り始めた。


「ミーニャさんは、とりあえずはジョンと同じ方法で釣ってください。ここのカゴに餌を入れて、竿を持つ。針がついているところを水面下に入れて、魚がついたら俺に渡す。それだけです」


「釣れたぞ」


 ジョンが仕掛けを上げる。魔魚カンディルーが2匹ついていた。

 俺は冷却魔法をかけた後、竿と仕掛けごと魔魚カンディルーを収納して、竿と仕掛けだけ再び取り出しジョンに渡す。


「長いのを操って針がついているところを、(さかニャ)のいるところへ下ろす。魚が引っかかったら上げてエイダンに渡す。それでいいかニャ」


 ミーニャさん、やり方を理解したようだ。


「その通りです。それではお願いします」


 此処はジョンとは来ていない場所だ。

 だから一週間以上間を置いている。

 なので普通のサビキ仕掛けでもそこそこ釣れるだろう。


 さて、俺は俺で別の仕掛けを試すとしよう。

 そう思って竿と仕掛けを出そうとしたところで……


「かかったニャ」


「こっちも」


 立て続けに2人が竿を上げる。

 魔法を掛け、竿ごと全部収納して、魔魚以外を出す。


 ミーニャさんの方をやったら次はジョン。

 そうしたらまたすぐに。


「また来たニャ」


 俺が自分の釣りをする余裕が無い。

 でもまあ、前回ジョンと来た時は100匹ちょっと釣るとペースが落ちた。

 だから今回もそこまでは待つとしよう。


 ◇◇◇


 案の定、30分位で釣れるペースが落ちてきた。

 ならそろそろ、次の作戦だ。


「それじゃ、少しやり方を変えます」


 魔法収納(アイテムボックス)からつけ餌用のバケツ、餌つけ器を取り出す。


「疑似餌で釣れにくくなったので、今度は針に餌をくっつけて釣ります。餌のつけ方は、まず餌つけ器(ここ)に新しく出した餌を入れて、こうやって針のついた仕掛け全体を下から上に向かって通すだけです」


 つまり今度はトリックサビキ方式だ。


「あとジョンの方は仕掛けを少し変えます。こちらは小さいのが釣れるよう、仕掛け全体が細く小さくなっています。引っかかったり絡んだりしやすいので注意して下さい」


「此処を通して餌をつけるのが、今までとの違いニャ?」


「そうです。それだけです」


 そして俺は、いよいよ自分用の仕掛けを準備する。

 まずはウキ釣りの仕掛けから。


 魚の場合、大物は餌を撒いているすぐ近くではなく、少し離れた場所に陣取ることが多い。

 そういった大物を別に狙うための作戦第一弾が、このウキ釣り仕掛け。


 ウキの位置を調整して、針が川底近くになるよう調節する。

 餌は針が見えないようにつけてと。


「釣れたのニャ」


「こっちもだ」


 ミーニャさんやジョンが釣った魔魚を取り込みつつ準備して、2人が餌付けをしている合間に投げて投入。

 場所は餌を撒いているところから3m程離れた深み。

 魔魚らしい反応があるのが見えている。


 さて、この仕掛けで大物がかかるかどうか。


「釣れたニャ」


 トリックサビキの方は順調だ。

 釣りを始めた頃ほどの勢いはないけれど、それでも2分に1回くらいは上がってくる。


 そして……離れた所にあったウキがさっと沈み、竿先が大きく引かれた。

 咄嗟に俺は竿を揚げる。

 針掛かりした感触。


「フィッシュ、オン!」


 重い。無茶苦茶引いている。

 しかも動く。草の茂みに隠れようとする。


 本来なら魚との勝負を楽しむところだが、今日は討伐。

 という事で、少し邪道だが魔法を使おう。


 糸の仕掛けに近い部分、かみ切られないよう木炭魔法加工物質(カーボン)細密(ナノ)(チューブ)にした部分に魔法で雷撃をかけてやる。

 電圧も電荷もそこまで大きくはない。

 人間だとビリッと感じる程度。


 一瞬、明らかに引きが弱まった。

 その隙を狙って一気に引き上げる。


 水上に出た。全長30cm程度のナマズ的な魚体。

 魔力の反応から見てこれも魔魚カンディルーだ。

 冷却魔法一発で無事仮死状態になったので収納する。


「大きいな、それ」


「これも魔魚カンディルーだ。大きくても1匹の報酬は同じだけれどさ。討伐だから捕れる分は捕っておかないと」


「あ、こっちも釣れたニャ」


 忙しい釣りはまだ続く。

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