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今世はのんびり釣りをしたい ~元技術者で今は冒険者の、微妙にままならない日々~  作者: 於田縫紀
第3章 次の犠牲者

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第39話 明日への顔合わせ

 とりあえずルアーの操作については、ある程度コツを掴めたように思う。

 ついでに、そこそこ程度の黒鯛を2匹と、まあまあ程度のスズキを2匹、釣り上げる事に成功した。


 この付近で釣りをする人がいない為、魚がスレていないのだろう。

 そうでもなければ、2時間で4匹も釣れるとは思わない。

 初心者の俺が、自作のいい加減なルアーを使っているのに。


 釣り具と釣果を魔法収納(アイテムボックス)に仕舞って、家に帰って服を着替えた後、冒険者ギルドへと向かう。


 時間の5分くらい前に到着。

 魔力を探ると、既にいつもの面談室にいるようだ。

 なのでそのまま奥へ。


 今回は面談室の中でも大きめの7号室だ。

 既に中にはクリスタさん、ミーニャさん、そしてジョンの反応がある。

 ノックしようとしたところで、中から声が聞こえた。


「エイダンさんですね。どうぞ」


 クリスタさんの声。俺の魔力を感知したのだろう。

 なので遠慮なく扉を開ける。


「すみません。遅くなりました」


「いえ、早く集まりましたので少し先に始めていました。どうぞおかけになって下さい」


 7号室は6人、詰めれば8人くらいは入りそうな長椅子&テーブルという席。

 ジョンの横、ミーニャさんの前という場所に座る。


「エイダンさんは既にミーニャさんもジョンさんもご存じですね」


「はい」


「それでは紹介無しで、今回の案件の説明をしましょう。まずは依頼の背景からお話しします……」


 クリスタさんの説明は、以前教本で調べた話と、バラモさんから貰った資料に載っていた話、そしてここでジョンと聞いた話が合わさったような内容だ。


 いつ頃カンディルーが発生して定着したのか、カンディルーの性質はどんなのか、どんな影響があるのか。

 そして俺やジョンによる討伐結果、予想される残数、増加を抑えるのに必要な討伐数、他でやっている討伐……


 クリスタさんはひととおり話した後、


「以上が本件の背景となります。そして討伐報酬は昨日話した通り、1人2万円プラス討伐数による報酬となります。ここまでの説明には疑問点はないでしょうか?」


 俺、ジョン、そしてミーニャさんは頷く。


「それでは次、実施要領です。まずは移動手段から。現地であるダグアル付近まで45kmある事から、行き来はエイダンさんの、人間を収納可能な魔法収納(アイテムボックス)と、高速移動魔法の組み合わせを使用します。ドーソン南門からなら20分程度を見込めば充分でしょう」


「人間が収納可能な魔法収納(アイテムボックス)というのは初めて聞くニャ」


 ここではミーニャさん、語尾がそのままなんだな。

 そう思ったところでクリスタさんが口を開く。


「ええ。人間が収納可能な魔法収納(アイテムボックス)魔法というのは珍しい魔法です。ですが既に一度、依頼で使用しているのを確認しています。それにおそらく、昨日の討伐でジョンさんが実際に体験しているのではないでしょうか?」


「はい。運ばれる側は全く時間経過を感じませんでした。南門を出て、収納すると言われた直後に目的地についていた。そんな感覚です」


「わかったニャ。ならお願いするニャ」


「それでは明日、8時にこの冒険者ギルド前で待ち合わせて、揃い次第出発でいいでしょうか……」


 集合時間、必要な装備、その辺を簡単に話しあった後。


「それではこれで、明日はよろしくお願いします」


 クリスタさんがそう締めたところで。


「なら3人で明日の昼食の買い物をしながら少し相談なのニャ。ニャんなら相談しながら一緒に夕食でもどうなのニャ。私はこれで今日の業務は終わりの筈だから、問題無いのニャ」


 確かにクリスタさんがいない方が話しやすい事が幾つかある。

 次の次の依頼に関する話とか。


「わかりました。俺は大丈夫です」


 とりあえず先にそう返答しておく。


「俺も行きます」


 よし、ジョンも問題無いと。


「わかりました。ミーニャの業務終了も了解です。それでは私は失礼します」


 あっさりクリスタさん、席を立った。

 こちらの思惑に気づいているのか、それとも何か別の仕事に手をつけたいのかは不明だ。


「それでは行くのニャ」


 俺達もミーニャさん先導で部屋を出て、そして冒険者ギルドの外へ。


「それでは市場に寄って、そしてエイダンの家に行くニャ」


 えっ!?

 それじゃ一緒に夕食という意味は、ひょっとして……


「エイダンから(さかニャ)の匂いがするニャ。舌平目とは違う魚ニャ。匂いの強さから、おそらくは今日の午後に捕ったものなのニャ」


「そこまでわかるんですか」


「この距離なら問題ないのニャ」


 うーむ、おそるべし、猫獣人の嗅覚。


「それで明日の分を含めて、買い出すのはコメとオリーブ油、小麦粉の他に何が必要ニャ。いつも世話になっているから、今日の買い物くらいは私が出すニャ」


「オリーブ油は何に使うつもりですか?」


「明日の昼はあのフライなのニャ。ニャら小麦粉とオリーブ油は必要ニャ。そしておかずがそれならパンより御飯の方がいいニャ」


 ミーニャさん、一度作った料理は覚えているし、材料も把握しているようだ。


「わかりました。調味料はあるので、あとは一緒に揚げて食べる野菜も買っておきましょう」


「今夜は何にするのニャ」


 黒鯛とスズキだと……

 明日が揚げ物なら、今日はこんな感じではどうだろうか。


「カルパッチョとバター焼き、アクアパッツァでいいですか」


 魚料理ばかりだ。

 けれどミーニャさんにとっては、その方がいいだろう。

 明日の昼が魔魚カンディルーのフライだから、それ以外で。


「お魚天国なのニャ!」


 やっぱり。

 そう思ったところでジョンがいぶかしげな顔をする。


「失礼ですがミーニャさんとエイダンは、どんな関係なんですか。そうとう仲がいいようですけれど」


「2日に1回はお邪魔しているのニャ」


 あ、これは誤解されるかもしれない。

 ここはしっかり言っておこう。


「家を借りるときに担当して貰ったんだ。ミーニャさんはついこの前まで商業ギルドで研修をしていたから」


「結果、お隣さんになったのニャ。そして夕食になると美味しそうな匂いをさせるので、ついつい寄ってしまうのニャ」


「ひょっとして、俺が行くとお邪魔にならないか」


 おっとまずい。ジョンに誤解されている。

ここは何としても誤解を解かなくては。


「単なるお隣さんだ。ただ俺の趣味が魚釣りでさ……」

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