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今世はのんびり釣りをしたい ~元技術者で今は冒険者の、微妙にままならない日々~  作者: 於田縫紀
第3章 次の犠牲者

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第33話 とある提案

 当たり前かもしれないが、俺がいた時と部屋の様子は変わらない。

 俺のベッドだった部分から布団が無くなっているだけだ。


「ここは空いたままか」


 ジョンが頷いた。


「多分このままだろ。講習から抜けることはあっても、途中から新たに入ってくる事は無いから」


 俺は布団が無くなった二段ベッドの下段に座る。

 この部屋にあるのは二段ベッド4つだけ。だから元俺のベッド以外に部外者が座れそうな場所がない。


「しかし驚いたな。エイダンがまさかC級冒険者になっていたなんて。此処を出てからまだ2週間だろ。どうやったんだ」


 どう説明しようかと考えて、ある程度は正直に言う事にした。

 ジョンは信用してもいい奴だ。

 なおかつ頭がそれなりに切れる。

 下手に誤魔化さないほうがいいだろう。


「此処へ来た翌日に文字の読み書きや魔法が使えるようになった。神の恩寵と言う奴らしい。なので初心者講習は必要ないと言われていきなりD級になった。依頼を幾つかうけて、あと教科書を一通り読んで、今朝C級試験を受けた。何とか受かって、ついさっきC級になったところだ」


「神の恩寵か。話には聞いた事があるけれどさ、まさかエイダンに起こるとはな。羨ましい限りだ。こっちはやっと文字を何とか読めるかって程度なのに」


 あっさり納得してくれてほっとする。

 前世を思い出したとか、その前世は異世界だったとかまでについては、上手く短時間で説明出来るとは思えないから。


 そしてジョンは現在、文字を何とか読める程度か。

 大陸標準語は表音文字だから読み書きは難しくない。

 でも1週間でそこまで出来るというのは、それなりに努力をしないと無理だろう。

 俺も過去を思い出せなかったら1週間でそこまで出来ただろうか。


 そこまで思って、ふと言葉と直接は関係ないことに気づいた。

 ついでだからあわせて質問してみよう。


「そこまで文字を覚えた上、定期的に通える職場を確保したんだろ。講習生の中では順調な方じゃないのか?」


「まあそうなんだけれどさ。C級冒険者に言われるとちょっとな」

 

 やはり順調な方らしい。

 確かにジョンは真面目な上、頭の回転も早く、そこそこ要領がいい方でもある。

 こういう場所だと一番伸びやすいタイプだろう。


 さて、ついでだから更なる質問をしてみよう。


「それでどんな職場なんだ?」


「前と同じ、ゴミの回収さ。人力荷車を牽いて決められた場所のゴミを回収する仕事だ。ただ報酬は前より良くなった。午後2時から6時までで3千円だ」


 3千円か。


「ここの掲示板に出ている額よりも大分高いな」


「此処に依頼を出して、問題無さそうなのを見繕って採用しているようだ。だからダッシュで掲示板を探して安い依頼を受ける、なんて必要は無くなったけれどさ」


 確かにここの掲示板にあるE級依頼は、半日千円くらいが相場。だから3千円は高めだ。

 俺の今の収入を考えると安いけれど。


 そう思って、そしてふと思いついた。

 ジョンでも多分可能で、もっと稼げて、かつ楽しい事を。


「ところでジョン、今日はこのあと時間があるか?」

 

「ああ。今日はゴミ回収は休みだからさ。何かあるか?」


「実はそこそこ稼げる討伐がある。そうちょくちょくは行けないけれどさ」


 この前やったカンディルー討伐だ。

 相当な数を捕ったけれども、完全に捕りきったわけではない。


 一週間経った今なら、それなりに以前の状態に近づいているだろう。

 だから行けばそれなりに釣れる筈だ。


 1匹500円だから6匹釣り上げればジョンの一日分の稼ぎになる。

 実際はもっと釣れる筈だ。


「いいのか。ありがたいけれど、俺はまだ剣技も初歩だし魔法も使えないぞ」


「それは問題無い。討伐と言っても今回の相手は魚だ。カンディルーという魔魚になる。水の中に入らなければ問題はない。ジョンなら注意すれば、そう難しくない筈だ」


 他の魚の為にも将来的な河川交通の為にも、カンディルーの数は減らしておきたい。

 ならジョンに協力して貰おう。

 2人なら2倍とまではいかないが、それなりに釣りの効率も良くなる筈だ。


「水の中に入らなくても討伐が出来るのか」


「ああ。ちょうどいい道具を持っている。2人でやれば効率がいい筈だ。勿論危ない事もない」


「なら頼んでいいか。やっぱり冒険者だし討伐はやってみたかったんだ」


「ああ。なら行くか」


 餌はまだまだ魔法収納(アイテムボックス)内にたっぷりと残っている。

 仕掛けも予備があるし、竿は延べ竿の他、一昨日遠投用に作った4m25cmのものも使える。


「場所はどの辺なんだ? 遠そうな事を言っていたけれど」


「ダグアル村だ。ドーソンから南に45km行った場所にある」


「って、それじゃ今日戻ってこれないだろ」


 そういえばその説明も必要だなと気づく。


「使えるようになった魔法に高速移動があってさ。この程度の距離なら20分かからない。門の外に出てからの時間だけれど」


「そんな魔法が使えるのかよ。なら俺もその魔法で高速移動出来るのか」


「いや、そこは収納魔法(アイテムボックス)を使う。普通の収納魔法(アイテムボックス)は生物は入れられない。しかし俺の収納魔法(アイテムボックス)は人間だろうとOKだ。実際に試したから問題無い」


 エダグラで捕縛した2人に試している。


「そんな魔法まで使えるのか」


「ああ。しかも収納中は時間経過がない。だから実際には一瞬後に移動先って感じだな」


「わかった。準備するものはあるか?」


 どうやらやる気になってくれたようだ。

 そして準備するような事は何もない。


「全部魔法収納(アイテムボックス)に入っている。問題は無い。それじゃ門まで急ごう。南門が一番近い」


 俺達は部屋を出て、急ぎ足で歩き出した。


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