表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今生はのんびり釣りをしたい ~元技術者で今は冒険者の、微妙にままならない日々~  作者: 於田縫紀
第2章 猫の餌付け? あるいは比較的平和な釣りと採取の日々

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/33

第26話 そして現場へ

 更に現地の川について知っていそうな人という事で、ベルクタ漁業・水面管理事務所へ。

 予想通りバラモさんがいた。

 なので魔魚カンディルーについて聞いてみる。


「おお、あの魔魚か。ここにも調査報告の写しが回ってきていたな。ちょっと待ってくれ」


 バラモさんは壁の棚に置かれているファイルの一冊を取り出し、パラパラとめくる。


「ああ、あった。これが調査報告だ。まずはこれが魔魚カンディルーについての報告書本文。そしてこれが当時の魔魚カンディルーの分布や生息場所、生息数の資料だ。もう10年近く前の図だから様子は大分変わっているかもしれんがな」


 これは大分助かる。

 どこにどれだけいるか、少なくとも10年前にはこうだったという資料が手に入ったのだ。

 十分釣り場の参考になるだろう。


複写魔法(コピー)を取っていいですか」


「もちろんだ。複写用紙が必要なら、そこにあるのを使ってくれ」


「ありがとうございます」


 複写用紙とは、熱を加えた部分が黒くなる紙だ。

 ① 元の紙を複写用紙の上に置いて

 ② 紙の黒い部分に熱を加えると

 ③ 下に敷いた複写用紙に黒い部分が転写される

という仕組み。

 実際には②は複写魔法を使うので、いちいち紙の黒い部分を意識する事はしないけれど。


「それで、どうやる気だ」


「四手網方式で餌を撒いて、集まったものをすくいます。それでも捕れないものは、サビキ釣りの要領で釣り上げようと思っています」


「なるほどな。ただあの魔魚、ちっこいから細かい網でないと無理だぞ。あと普通の糸は噛み切るから、鉄ワイヤーくらい強力な糸でないとな」


 それは想定の範囲内だ。


「網は鉄ワイヤーで作った特製のものを用意しました。これである程度はすくえると思います。釣り用の糸も特製を用意しました。こちらは詳細は言えませんけれど、鉄ワイヤー以上に頑丈かつ細い糸です」


「なら心配いらねえな。普通はそんな装備を持ち運んだり出来ねえが、エイダンだったら問題ねえだろ。でもそれなら撒き餌が必要だろう。何なら農業組合の屠殺場に紹介状を書いてやるが、どうだ」


 おっと、それはありがたい。


「そうしていただけると大変助かります。お願いしていいですか」


「あたぼうよ。魔魚がいなくなったら、また川が賑やかになる。魚種だって大分増えるはずだ。今は回遊魚の半分近くが、あの魔魚にやられちまっているからな」


 バラモさんはささっと白紙を取り、書状をしたためる。


「おいよ。これを屠殺場のカムラ辺りに渡せば、食肉や素材にならない内臓肉とか脂肪部分、血液なんてのを分けてくれるはずだ。これは乾燥させた後、肥料にするんだが、少しぐらい分けても問題はねえ。だから屠殺場でもあっさり分けてくれるはずだ。バケツ単位になるけれど、エイダンは魔法収納(アイテムボックス)を使えるから問題はねえだろ」


「カムラさんですね。ありがとうございます」


「カムラがいなくても大丈夫だ。漁業組合のバラモからと言って渡せば。あそこの職員の半分以上は知り合いだからな」


 本当に助かる。

 これなら撒き餌も無料で大量に手に入る。本当にありがたい。


「それじゃ魔魚は頼んだ。あと、もし大量に捕れたら少し分けてくれ。魔石を取った後でいい。魔魚とはいえ、ちっこいのは二度揚げにすると美味いらしいんだ」


 魔魚、食べられるのか。


「揚げれば食べられるんですか」


「ああ。調査に行った奴が食べた話を聞いた。5匹釣った時点で仕掛けが食われちまって、それ以上釣れなかったらしいけどな。身そのものは白身で美味しいそうだ。ただ魚が小さいから、魔石だけ取って揚げちまった方がいいらしい。あと頭は取った方がいい。歯と顎の骨がとんでもないからな」


 いい事を聞いた。


「わかりました。その時は釣りで捕ったんですね」


「ああ。普通のウキ釣りの仕掛けだったらしい。それもその資料に載っている」


「ありがとうございます。捕れたら魔石を抜いて持ってきます」


「ああ。無理はしなくていいぞ」


 紹介状をもらって事務所を出る。


 ◇◇◇


 その後、家畜の屠殺場で内臓や血、骨や脂肪など食べられない部分を90リットルのバケツ3つ分いただいた。

 血まみれの中に赤い黒い臓物や黄色い脂肪が混じっていて、なかなか凶悪な見た目と匂い。

 ただし魔法収納(アイテムボックス)に入れておけば臭いはしないから問題ない。


 これをミンチにして撒けば、魔魚カンディルーは寄ってくるだろう。

 という事で屠殺場から近い東門から出て、ダグアル村を目指して高速移動魔法で突っ走る。

 基本的に川沿いの平坦な道で、距離はおおよそ45km。

 この程度なら大した事はない。


 予想通り20分しないでダグアル村に到着。

 早速川岸に出て、水に落ちないよう注意しながら川岸をゆっくり歩く。

 網を仕掛ける部分は、川岸がしっかりしていて水深があり、出来れば流れが緩やかな部分が望ましい。

 そしてもちろん、魔魚カンディルーがいる事が条件だ。


 バラモさんからもらった資料を確認しながら歩く。

 どうやら魔魚カンディルーは普段は底近くにいるようだ。

 だから川に直接電撃を叩き込んでも効果はそれほどないと。

 実際に電撃魔法による討伐を試したが、効果はあまりなかったと報告書に書いてある。


 ならやはり餌でおびき寄せて、網か釣りで捉えるのが最適だろう。

 そして魔魚カンディルーがいて、なおかつ網を仕掛けられるしっかりした岸があって、出来れば深さがそこそこあるところ。


 ちょうど良さそうな場所があった。

 川が少し向こう側へ向けてカーブしている地点だ。

 水深がそこそこ深く、岸が岩混じりでしっかりしている。

 流れも今は緩やかだ。


 ならば早速、魔魚カンディルーがいるか確認してみよう。

 俺は今回の釣り道具を取り出す。

 長さ5.4mの延べ竿の先に長さ3mの糸、更にその先に1m程の仕掛け、そして最下部に重り。


 仕掛けは長さ20cm毎にエダスが5本ついている。

 エダスとは糸の先に針がついているもので、今回は長さおおよそ5cmの糸の先に舌平目の皮がついた釣り針がついているという状態。

 つまり針全てに魚がかかれば5匹釣れるという訳だ。

 そんな事はまず無いけれど。


 その針の一つ一つに、あえて餌をつける。

 針には疑似餌として既に舌平目の皮がついている。しかし生の餌の方が食いつきがいいだろうから、追加してみた訳だ。


 今回は豚の皮と脂肪の境目の硬い部分をつけた。

 これなら肉っぽい匂いをまいてくれる上、外れにくそうだから。


 さて、ターゲットの魔魚カンディルーが釣れるかどうか。

 収納しているうち血液部分を水面に撒き、仕掛けを落とす。

 これで近くにいれば食ってくる可能性が高いのだが……


 おっと、明らかに魚が寄ってきた。

 これが魔魚カンディルーかは分からないけれど。

 そしてすぐ、釣り竿の先が水中に引っ張られる。

 非常に分かりやすい引きだ。


 竿を上げるとビクビクッという手応え。

 全長10cm程度の小さい魚が針3つにかかっている。


 冷却魔法で殺した後、魔法収納(アイテムボックス)へ入れて観察する。

 普通の魚とドジョウを足して2で割ったような形。全体的には白色で背中がやや青黒い。

 そして腹部分に小さい魔石を確認。


 これが魔魚カンディルーだろう。

 ならこの場所で決定だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ