表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今生はのんびり釣りをしたい ~元技術者で今は冒険者の、微妙にままならない日々~  作者: 於田縫紀
第2章 猫の餌付け? あるいは比較的平和な釣りと採取の日々

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/31

第23話 呼び出しの内容

 受付嬢に扮した怖いお姉さんか。

 間違いなくあの人の事だろう。


「クリスタさんの事ですか」


 ミーニャさんはびくっと身体を震わせる。


「その名を出してはいけないのニャ。禁句なのニャ」


 ミーニャさんの様子、冗談事という感じでは無い。


「何かあったんですか」


「6年前に酷い目にあったのニャ。初心者講習受けなくてもD級冒険者になれるからと言われて、依頼を受けたら実質的に2泊3日の猛特訓だったニャ。あの後3日間マジで動けなくなったニャ。その名前を知っているという事は、エイダンも被害者なのかニャ」


 なるほど。状況は大体理解した。

 つまりミーニャさんも初心者講習で即戦力と認められて、そのままD級冒険者になった訳か。

 ただし違いは結構あるようだ。


「俺の場合は特訓とまでは行かなかったですね。運送依頼を1回受けてやっただけです」


 守秘義務があるからこれ以上細かい事は言わないでおく。


「それってまともな依頼だったかニャ? ゴブリンジェネラルを含むゴブリン78匹からなる集落を全滅させろとか、魔狼45匹の群れを全滅させろとか、無茶な依頼じゃニャかったか?」


 まともな依頼だったかどうかは微妙だ。守秘義務に関わるから言えないけれど。

 それよりミーニャさんが言った依頼の方が気になる。

 何だその依頼、本当に大丈夫なのか。


「そんな無茶な依頼を受けたんですか?」


「魔狼は私がD級になって最初に受けさせられた依頼で、ゴブリンがC級の実力確認でやらされた依頼ニャ。あの頃はまだ私も若かったニャ」


 ミーニャさん、遠い目をする。


「よくそんな依頼、達成できましたね」


「ヤバそうになると、あれが回復なり治療なりの魔法を飛ばしてくれるニャ。本当に死にそうな攻撃を受けそうになると、防御魔法を展開してくれるニャ。だから死ぬ事はないニャ。でもそれは、達成するまで死ぬ事も休む事も許されないという事なのニャ」


 確かにそれならいつかは全滅させる事が可能だろう。こっちの攻撃力が相手に通用するならばの話だけれど。

 ただそんな事をさせられたら……

 洒落にならない。


「まさか明日の呼び出しって、そういう依頼じゃないですよね」


「そこまでは聞いていないのニャ。まもなく商業ギルドでの講習も終わりニャので連絡に行ったら頼まれたのニャ。あれでもギルドの偉い人なので逆らえないニャ」


 そう言えば前世にもそういった上司はいた。部下は生かさず殺さず使い潰せといった感じの。

 そしてクリスタさんからは、確かにそういった片鱗を感じている。


 ならいっそ……


「今の話を聞かなかったことにして逃げる、というのはまずいですかね」


「あの激ヤバエルフから逃げられると思うなら試してみるといいニャ。成功例は聞いた事がニャいけれど、失敗例は幾つか知っているニャ。ニャかにはアレに捕まった時に対して『人の心は無いのか』と問うた剛の者もいるのニャ。『すみません。エルフだからよくわからないのです』。そう返されて終わりだニャ」


 それはきっと、わからないのではない。確信犯だ。

 いや、実際に人の心がわからないからこそ、そう言えるのか。

 とりあえず今後の為と個人的興味で、顛末について聞いておこう。


「その質問をした冒険者はまだ生きていますか」


「元気にB級冒険者をやっているニャ。去年の秋にはドーソン冒険者ギルドの初心者講習の教官もやっていたニャ」


 どうやら無事らしい。他人事ながらほっとした。


「まあ、そこまで不安にならなくても大丈夫ニャ。あれ関係で冒険者が死んだり廃業したりという事は今までないのニャ。トラウマが残る事はままあるニャが、そうやってこの国の治安が回っているのも確かなのニャ」


 そうは言っても気が重くなるのは確かだ。

 この世界にはのんびり釣りをするために転生してきた筈なのに。

 また過労死の世界へ逆戻りするのだろうか。


 でも今の話を聞いたミーニャさんが過労死しているわけではない。

 先程聞いた逃げるのに失敗した冒険者も、ちゃんと生きて現役の冒険者をしている。

 ならきっと、前世よりはましな筈だ。

 そう信じたい……


 ◇◇◇


 翌朝。

 早朝に海岸を歩いて舌平目を2匹確保した後、朝食を食べ、朝8時20分過ぎに冒険者ギルドへ。


 受付の部屋に入ると、すぐに奥からクリスタさんが出てきた。

 今回はエルフではない方の姿だ。


「来ていただきありがとうございます。それでは面談室の方で話を致しましょう」


 この前と同様、テーブルとソファーだけの部屋へ。

 さて、どんな話だろう。無茶な依頼ではないよな。

 そう思いつつ、まずはクリスタさんの出方を伺う。


「まずはご報告からです。先日ご協力いただいた件について、エダグラ冒険者ギルドから3名、エダグラ鉱山組合から5名、それ以外から7名を詐欺容疑で逮捕しました。また、これらの者により同種事案がこの20年の間に27件発生している事も確認しました」


 もうそこまで捜査は進んだようだ。そしてクリスタさんのところにも情報が入っていると。


「20年とは長いですね」


「ドワーフは、10年単位で同じ仕事をしているのが普通ですから」


 確かに前世でもそんな感じだった。

 俺はドワーフに友人はいなかったけれど、よく一緒に仕事をしたベテランが言っていた。

『鍛冶組合連合事務所の法務担当が、私が就職した時と同じ名前で同じ顔だった。まさかと思ってきいてみたら同一人物だ。20年も経つのにだぞ』と。


「どちらのギルドもギルド全体の組織ぐるみでは無く、一部の者による犯行でした。ただし両ギルドの責任者は、責任をとって交代する予定となっています」


 つまり問題は解決されたという事か。

 少しばかり興味本位で質問してみる。


「だいたいどれくらいの罪に問われるのでしょうか?」


「今回の主犯である鉱山組合主任のイルゼ、エイダンさんに質の劣る鉄インゴット15tを渡そうとしたドワーフの女性については50年の懲役鉱山労働、それ以外の者については人間は概ね5年、ドワーフは概ね15年程度の懲役となる見込みです」


「50年とは随分長いですね」


 人間だと殺人とか強盗数回というレベルだ。


「ドワーフの犯罪については、ドワーフ長老会によって処罰を決定します。この場合、懲役の期間が普通人の3倍程度となるのが普通です。普通人と寿命と時間感覚が異なるからでしょう」


 確かドワーフの寿命はおよそ600年ちょっと。勿論前世での知識だけれども。

 時間感覚の違いも、前世でよーく知っている。


「またドワーフは、金属精錬及び採掘関連における犯罪を重く罰する傾向があります。これらはドワーフが普通人に対して優位を保っている分野です。そこで信頼を損ねる事は、ドワーフ全体に対する損害と見做されているようですから」


 なるほど。確かにドワーフというとこれらの分野というイメージがある。

 実際そういったギルドの要職はドワーフでしめられたりもするし。


「わかりました。ありがとうございます」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ