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今世はのんびり釣りをしたい ~元技術者で今は冒険者の、微妙にままならない日々~  作者: 於田縫紀
第1章 最初の釣りに至るまで

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第17話 準備作業の時間

 商業ギルドで契約を済ませた後、買い物をして、俺の家となった物件へ帰宅。

 午後3時の鐘が鳴る中、遅い昼食としてパンをかじりながら、やるべきことを考える。


 最低限必要なもののうち、俺が作れない、あるいは作るのが面倒なものは購入してきた。

 例えばベッドのシーツ、掛布団、枕、着替えの服といった布製品。

 これらは俺が作れないものだ。


 厳密に言えば布だって作れないことはない。

 特殊木炭魔法加工物質(カーボン)細密(ナノ)チューブや金属を細く延ばしたワイヤーなどで、糸を作ることは可能だ。


 しかし特殊木炭魔法加工物質(カーボン)細密(ナノ)チューブは極細。

 神力導線として使う極細チューブを百本以上撚ったものでも、糸として見れば極細だ。

 そんな糸を布に織れるまで作るとなると、魔力を無茶苦茶消費する。


 金属ワイヤーで糸や織物を作るのは、そこまで難しくはない。

 しかしそんな糸で織った布だと、間違いなく着心地や触り心地が悪いだろう。

 だったら買った方がよっぽどましだ。


 逆に言うと、布もの以外は大体作ることが可能だ。

 食器類は、大出力神力用絶縁碍子を作るのと同じ方法で土から作れるし、鍋釜類は鉄を使えば簡単だ。


 本当はさっさと釣りに行きたい。

 しかしどうせなら、リールも作って万全の体制にしてから望みたい。


 それに満月は明日だ。つまり大潮も明日。

 だから明日じっくり釣り場を確認した後、夕方からソウギョと戦おうと思う。


 今日のこれからと明日の日中は、生活基盤と釣り道具の充実にあてよう。

 そう言えば、C級に向けての勉強も必要だ。

 やるべきことは山ほどある。


 食器とカトラリーと鍋釜作りから始めよう。

 そのためには材料が必要だ。


 鉄と粘土はある程度在庫がある。

 しかしどうせなら、ここでしっかり確保しておこう。


 この家には庭があるから土の採取は可能だ。

 しかし大量に採取するなら、広い場所がいいだろう。

 なら海辺に出てみよう。

 砂浜なら採取しやすいだろうから。


 昼飯のパンを食べ終わった俺は、家の外へ出る。

 家の裏側はすぐに防砂林だ。塀があるけれど、魔法で筋力強化して飛び越えれば問題ない。


 いや、どうせ今後は毎日海へ行くだろう。

 ならばショートカットルートを作ってしまおう。


 材料は魔法収納(アイテムボックス)内にある流木と鉄。

 魔法収納(アイテムボックス)内で切って組み合わせれば、塀のこちら側用と向こう側用、計2台の梯子が完成。


『釣り場になる防波堤等には、往々にして誰かが持ち込んだ手製の梯子がかかっていたりする』※


 前世の釣りの本にはそんなことが書いてあった。

 もちろん厳密には違法だろう。

 勝手にそんな物を置くのも、そんな場所に立ち入るのも。


 しかし、そんな釣り人の「他の人も含めて釣りに便利なように」といった互助精神が面白いと思ったのだ。

 この梯子はそんなイメージで作ったもの。


 塀の上で向こう側用の梯子を設置する。

 そのまま降りて、外側の梯子は魔法収納(アイテムボックス)に収納。


 防砂林の松林を抜けると砂浜、太陽が眩しい。

 今はそこそこ潮が引いていて、波が来る場所まで50mくらいある。


 魔法で海面下の様子を確認。ほぼ砂浜で、キスとかメゴチがいそうな感じだ。

 リールで狙えば、いい感じに釣れるだろう。


 なら今日か明日にでも、リールを作らないとな。

 そう思いつつ砂の採取を開始する。


 ふむふむ、ここの砂、なかなかいい。砂鉄や硅砂、長石をいい感じで含んでいる。

 つまりは鉄を作るにも、磁器を作るにも最適ということだ。

 魔法で分離できることが前提だけれども。


 製鉄も磁器作成もある程度は粘土が必要だ。

 しかし粘土は、冒険者ギルドの庭で採取したものが残っている。

 なのでさっさと家に戻って、作業を開始。


 ここからは基本的に魔法収納(アイテムボックス)内での作業になる。

 とりあえず海の砂から鉄を含む成分を分離。

 これに木炭と少量の粘土を使って、製鉄及び銑鉄。

 この辺の作業は冒険者ギルドでもやったし、簡単だ。


 そして鉄分を除いた硅砂、長石、そして粘土を粉々にして水を加えて成型。

 これを脱水して高熱で焼き固めれば、碍子ではなく食器が完成。


 出来たのは白くて透明感がある、磁器の皿各種とコップ。

 本当に高価なものとは形状が異なるし、絵付けなんてこともしていないけれど、実用には充分だろう。


 鍋は鉄があれば作るのは簡単。高熱にして成型してやるだけだから。

 もちろん魔法収納(アイテムボックス)内で、全て魔法を使って作ればの話だけれど。


 あとはスプーン、フォーク、ナイフ、包丁ももちろん作成。

 包丁は出刃、小出刃、刺身包丁の三種類作った。


 本当は包丁はなくても問題ない。

 魔法収納(アイテムボックス)内なら、魚をさばくのだって魔法で自由自在だから。


 しかし、自分の手でさばく楽しみというものも、釣りのうちだろう。

 だからあえて揃えた。


 さて、それでは本当に作りたいものの作成作業に入るとしよう。

 リール、それもスピニングリールの作成だ。


 本当はリールは鉄でなく、軽金属か木炭魔法加工物質(カーボン)で作りたい。

 鉄だと重くなるし錆びるから。


 ただ軽金属は魔法でも分離と精製が難しい。

 木炭魔法加工物質(カーボン)は加工が難しく、修正が効かない。


 だからまず、材料が手に入りやすくて加工が容易な鉄で作る。

 上手く出来たら、それを見本に木炭魔法加工物質(カーボン)で作る。

 そんな二段構えで挑むつもりだ。


 イメージは、前世のシマノオ社製ステッラの3000番台。

 釣りに行くときのために購入して分解したこともあるので、内部構成は大体覚えている。

 死ぬまで釣りに行く暇がなかったので、実際に使用したことはないけれど。


 それでも念のため、買い物で購入してきた紙と鉛筆を使って概念図を描く。

 確か、ここの軸の保持は……


 ◇◇◇


 やはり精密機械は作るのが大変だ。

 気がつくと夕6時の鐘、それでもまだ完成していない。

 一応スピニングリールとしては動作する。

 しかし動きが今ひとつスムーズさに欠けるのだ。


 もう一度分解し直して、歯車を確認する。

 分析魔法を使って、歯車のどこにどのくらい負荷がかかったかを読み取る。


 もう少し歯車形状の最適化が必要な感じだ。

 やはり、いきなり前世のシマノオと同等というのは難しい。


 それでも、もう少しはスムーズに動かせるはずだ。

 市販品には投入不可能な、圧縮空気魔法による無接点軸受けなんてのまで使っているし。


 ここで思い通り動くものが出来たら、同じ形で木炭魔法加工物質(カーボン)製のものを作れる。

 何せ木炭魔法加工物質(カーボン)で作ると後の修正がほぼ不可能。

 だから重いの覚悟で、まず鉄で作っているわけだ。


 もう少し詰めて、それからパンでも食べて寝るとしよう。

 細かい作業をして疲れたから、夕食を作るのが面倒だ。


 もし出来上がったら、明日このリールに糸をきっちり巻いて、針もつけてセットしよう。

 そうしたら、明日の夕方からソウギョに挑戦だ。


 ※ 防波堤の梯子

 日本でも割と事実だったりします。ただしSOLAS条約の改正で港湾管理が厳重になったので、以前よりは少なくなりました。

 実際「ここで何人も死んでいる」なんて防波堤の入口にも手製らしい梯子がついていたり、囲ってある金網に人ひとり入れるような穴が開いていたりして……

 危ないので無理な立ち入りはやめましょう。本当に。

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