✧ 第3章:過去の影 ✧
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暖かな陽光が小さな家の窓から差し込み、木の食卓を照らしていた。
ロイドは両親の間に座っている。
湯気を立てるスープの香りが、母がオーブンから取り出した焼きたてのパンの匂いと混ざり合う。
父の豪快な笑い声が響き渡り、鉄を打つ槌が折れて客が怒った話をしながらも、その時に飛び散った火花はかつてないほど美しかったと語っていた。
母は首を振って笑い、優しく肉をテーブルに置きながら言った。
――「慌てなくてもいいのよ、坊や。食べ物は逃げたりしないわ。」
ロイドは無邪気な笑顔で父の笑いを真似しようとし、すぐにやめて口いっぱいに食べ物を頬張った。
それは完璧なひとときだった。
愛と安らぎに満ちた、生き生きとした一枚の絵。
だが……
激しいノックの音がその温もりを切り裂いた。
遠くから悲鳴が響き、窓の隙間から煙の匂いが忍び込んでくる。
窓が炎に包まれて爆ぜ、頭上の空はまるで溶岩のようにひっくり返った。
壁が揺れ、地獄の唸り声のような異様な音が耳を突き破る。
父は剣を掴み玄関へ駆け、母は叫びながらロイドを突き飛ばした。
――「走ってロイド! 後ろを振り返らないで!」
叫びたかった。しがみつきたかった。だが、周囲の空気そのものが炎に変わったようで、全てを呑み込んでいった。
ほんの少し前までパンと肉で満たされていた食卓は、いまや黒い灰となって風に舞っていた。
煙の中に赤い目が浮かぶ……魔族の目だ。
そして母の声――それが最後に聞こえたものだった――炎の混乱に溶けて消えた。
夜を切り裂くような絶叫。
ロイドはベッドの上で飛び起きた。長い溺水から這い出たかのように、息は荒く、全身は汗で濡れ、手は激しく震えていた。
母の悲鳴の残響がまだ耳にこびりつき、煙の匂いが喉を焼いていた。
扉が開き、小さな灯りを持ったカインが入ってきた。
黒い瞳でしばしロイドを見つめ、岩のように静かな声で言った。
――「また悪夢か……?」
ロイドは答えず、顔を両手で覆い、涙を隠そうとした。
カインはそっと近づき、ベッドの端に腰を下ろした。
深みのある声が夜の沈黙を切り裂く。
――「過去は容赦しない。だが忘却では誰も救われない。救うのは……力だ。」
ロイドはゆっくりと顔を上げ、涙に濡れた瞳でカインを見つめた。
その瞬間、彼の中でカインはただの救い主ではなく、狂気に落ちそうな自分を支える壁のように映った。
夜明けの第一の光が差し込む頃、カインはロイドを小屋の裏の広場へ連れ出した。
土の地面は高い木々に囲まれ、いくつかの丸太が的のように立てられていた。
中央には軽い鉄の剣が一本置かれていた。単純な造りだが、ロイドには山のように重く見えた。
カインはロイドを見つめながら言った。
――「今日がお前の最初の一歩だ。剣はただの鉄ではない……それを握る手と導く心の写し鏡だ。」
ロイドはゆっくりと近づき、剣に手を伸ばした。
持ち上げると、その重さは彼の全身にのしかかり、落としそうになった。
それはただの剣に過ぎないのに。
カインは短く笑った。
――「今は弱い、それが当然だ。だが安心しろ……力は作られるものだ、生まれつきのものではない。」
そして、さらに真剣な声で言葉を続けた。
――「さて坊や、“気”が何か覚えているか?」
ロイドは戸惑いながら答える。
――「えっと……感覚を研ぎ澄ませて、一つに集中するんじゃなくて全部を使う……だよね? あってる?」
カインは歩み寄り、うなずいた。
――「その通りだ。気は力でも技でもない。己の肉体と感覚を完全に制御することだ。それを理解すれば、他の者が見えぬものを見、聞けぬものを聞く。真の戦士とただの剣持ちの違いはそこにある。」
そう言ってカインは目を閉じた。
静寂――次の瞬間、落ちてきた一枚の葉を地に触れる前に指で掴み取った。
穏やかな笑みを浮かべて言う。
――「これが“気”だ。」
ロイドの目が驚きに見開かれ、胸に新たな感情が芽生えた。恐怖と希望の混ざり合う感覚。
――「さあロイド、目を閉じて試してみろ。」
ロイドは言われた通りに目を閉じ、周囲を感じ取ろうとした。
風が木々を揺らし、鳥が遠くで鳴いている。だが内側は混乱そのものだった。
頭は叫び、心臓は早鐘を打ち、身体は静けさを知らない。
長い沈黙の後、ロイドは不安げに言った。
――「ダメだ……何も感じない。」
カインは大声で笑い、からかうように言った。
――「坊や……本当に愚かで間抜けだな!」
ロイドは怒りに目を見開き、木剣を握り締めて叫ぶ。
――「なんだと!?」
カインはゆっくりと近づき、真剣な声で指を突きつけた。
――「よく聞け、ヒントをやろう。
海を見たことがあるか? 静かなとき、船は簡単に渡れる。
だが荒れ狂えば、すべてを沈める。」
そして冷たい笑みを浮かべて言い放った。
――「お前の頭の中のクルミを使ってみろ。」
ロイドは怒りの目でにらみ返し、皮肉っぽく答えた。
――「どうやって理解しろってんだよ、じじい!」
再び目を閉じ、今度は深く考え始める。
――「もしあれがヒントなら……海は体、船は“気”。心が澄み静かであるほど、耐える力が増す……そういうことか。」
唇に小さな笑みが浮かんだ。
だがその時、空気を裂く何かを感じた。
目を開けると、小石が彼に向かって飛んできていた。
位置は感じ取れた。しかし体はあまりにも遅かった。
小石は額に命中し、ロイドは地面に倒れ込む。
――「いってぇぇぇ!」と叫びながら頭を押さえるロイド。
カインは大笑いした。
――「ははははは! その転び方、最高だな!」
恨めしそうにロイドが睨む中、カインは笑いを収めながら言った。
――「少なくとも……理解はできたようだ。ならばもう、自分の“気”を鍛え始められる。覚えておけ坊や……これはまだ始まりにすぎない。強くなるまでの道は果てしなく続く。」
ロイドは傍らの剣を見つめ、それからカインを見た。
痛みも、嘲笑もあった。
だがその瞳に宿るものはただ一つ――
決意。
✧ 第3章 終 ✧
一緒にトップを目指し、この作品がアニメ化してメジャーアニメと競い合えるよう




