第十八章 :砕かれる前に立つ者
楽しい読書
第十九章:砕かれる前に立つ者
(Chapter Nineteen: The One Who Stands Before Breaking)
門は、ゆっくりと開いていった。
それは単なる構造物の動作ではなかった。
古い封印が、長い沈黙を終え、再び世界と接触する瞬間だった。
金属が擦れ合う音は鋭く、だが短絡的ではない。
重く、圧縮された音が空間を切り裂き、骨の奥にまで響く。
音は前へ進むというより、押し寄せてくる。
逃げ場のない事実のように。
ロイドは門の前に立っていた。
動かない。
構えない。
だが、退かない。
門の隙間から漏れ出す光が、彼の影を引き延ばす。
その影は歪み、彼自身の形を保てていなかった。
まるで、彼がまだ「完成した存在」ではないと示すかのように。
門の向こう側に、影があった。
それは敬意を示さなかった。
威嚇もしなかった。
ロイドを敵とも、試験対象とも見ていない。
――評価すら、まだ始まっていなかった。
次の瞬間、雷が迸った。
空からではない。
門の奥、空間の内部からだ。
白い稲妻が爆発的に広がり、視界を焼き尽くす。
一瞬、世界が消えた。
再び視界が戻ったとき、そこに立っていたのは――
人型の存在。
だが、人間ではなかった。
皮膚は灰色で、焼かれた岩のように硬化し、無数の細い亀裂が走っている。
その内側には、まだ冷えきらない熱が閉じ込められていた。
呼吸すらしていないのに、周囲の空気が揺れる。
目は細く裂け、炎のような光を宿している。
瞬きはない。
感情の兆候もない。
ただ、確定した意志だけがそこにあった。
その存在は、低く、はっきりと告げた。
「通りたければ……私を殺せ」
命令ではない。
脅しでもない。
世界のルールを提示する声だった。
ロイドは、すぐに答えなかった。
胸に圧がかかる。
それは恐怖ではない。
避けられない選択を突きつけられた者だけが感じる、重さ。
やがて彼は口を開いた。
「決める前に、理解したい」
声は低いが、揺れていない。
「なぜ、こんな回りくどい試練を続ける?
なぜ最初から終わらせない?」
存在は、短く笑った。
乾いた笑い。
そこには楽しさも、侮蔑もない。
「ロイド……無の子よ。第四の遺産を担う者」
名を呼ばれた瞬間、空気が変わる。
「我らは未来の可能性を殺さない。
殺せば終わるからだ」
一歩、踏み出す。
地面が沈んだ。
「我らは壊す。
あるいは鍛える。
壊す方が……遥かに容易だ」
ロイドは剣を握り締めた。
心臓が激しく打つ。
だが、足は動かない。
「お前は何者だ」
雷が裂ける。
「我らは遺産の守護者。
光が生まれる前、名が定義される前より存在する者」
さらに一歩。
「ここに辿り着いた時点で、お前は生存者ではない。
――脅威だ」
ロイドの頭に、鋭い痛みが走る。
逃げたいという感情はない。
ただ、重い。
――試されている。
剣を構える。
刃が低く唸り、淡い緑光を帯びる。
「命令で殺しはしない」
「血を流すなら……正当性としてだ」
守護者は笑わなかった。
微かに、口角を上げた。
「ようやくだ」
雷が集束する。
「十秒立っていられれば、祖の血は本物だ」
ロイドは息を吸う。
「退く方が、怖い」
次の瞬間――
§ KRAAAAK §
白光が爆発し、世界が歪む。
空気が粘性を持ち、重くなる。
地面が軋み、砂塵が波のように舞い上がる。
守護者は――動かない。
雷を背に、影が異様に引き延ばされる。
次の瞬間、消えた。
音もない。
空気の揺らぎすらない。
ロイドの思考が加速する。
――どこだ。
§ TAK §
右肩に衝撃。
鋭く、短い。
血が流れ、視界が揺れる。
振り向いた瞬間、背後一歩。
近すぎる。
「防御が甘い」
§ BOOOM §
腹部への蹴り。
空気が肺から叩き出され、身体が浮く。
地面に叩きつけられ、砂塵が爆ぜる。
息ができない。
猶予はない。
胸を掴まれ、軽々と持ち上げられる。
§ THOK §
§ THOK §
§ THOK §
正確で、無駄のない打撃。
意識が削られる。
「壊すだけだ。殺しはしない」
§ SMASH §
顔面への一撃。
ロイドは吹き飛び、岩に叩きつけられる。
岩が割れる。
守護者は一歩だけ進む。
その一歩で、地面が沈む。
「くだらない。なぜ興味を持たれたのか理解できん」
拳を上げる。
空気が収縮する。
――その瞬間。
ロイドが動いた。
§ SHF §
横滑り。
拳が掠め、背後の地面が粉砕される。
§ KRAAAAK §
守護者の目が、ほんの一瞬だけ見開かれる。
「……同類か」
ロイドが踏み込む。
§ SHNG §
腹部への突き。
刃が止まる。
緑の火花。
§ THOK §
反撃。
世界が回転する。
だが――倒れない。
膝をつき、地を掴み、立つ。
呼吸は重い。
血が流れる。
守護者は急がない。
時間が味方だと知っている。
ロイドも知っている。
――立っていること自体が、勝利だ。
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